上 下
67 / 95

第六十四話

しおりを挟む
 あにです。聖剣から魔剣に変えたのでよろしくお願いします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 少年にポーションを使うとクリーンで綺麗にしてやる。そして近くで野営の準備をして少年が起きるのを待った。

 やはり貧民街の子供の様で小学生くらいだろう。ボロを着ており、装備と言えるものはなに一つ着けていない。せめて革鎧くらいは装備しておかないと、30階層では荷物持ちでさえ危ないだろう。
 
「助けたはいいがどうするんだ?」
「それは俺が面倒みるさ」
 ラビオンは少年を見ながらそう話す。
「分かったよ。で?」
「とりあえずポーター荷物持ちくらいはまともにできる様にするかな」
「それがいいだろうな」
 この少年にどれだけできるかだが、
「起きてから聞いてみるさ」
 
 なかなか起きない少年を心配しながら飯の用意をする。
「ん…え?」
 飯の匂いで起きたみたいだな。
「お!少年が起きたぞ?」
「…!?」
 少年は怯えているようで壁を背に逃げようとしている。
「まずは逃げるな!お前は男達に殴られてたよな?」
「…あ、う、うん」
 ラビオンはゆっくりと言い聞かせるように話す。
「よし、んで、俺たちが助けた。ここまではいいか?」
「あ…りがとう」
「そうだ、お礼を言えるのは偉いぞ!よし、飯をご馳走してやるからこっちに来い」
「い、いいの?」
「あぁ、これを食え」
 ラビオンがお椀に入った汁物を指差す。
「うん!」
 少年は寄ってくるとお椀を持って食べ始める。
「よし!よく噛んで食えよ?」
「ウグッ、ウ、うん」

 腹がいっぱいになると眠くなったようだが、話をしないと先に進まない。

 名前はラムザで11歳らしいが、栄養不足だったのか背が低く幼い。親はおらず兄弟もいない。
 男達にポーターを頼まれてついてきたが見たことのない場所に連れてこられ、帰して欲しいと頼むと殴られたということだ。
 それだけ聞くと限界だった様で寝かせてやる。

「親兄弟はおらずよくここまで生き延びたな」
「それだけラムザが頑張ったからだな」
 俺とラビオンはまた夜番で共に過ごす。
 話題はラムザだ、幼いあの子をここで放り出すことはできないだろう。

「悪ぃな、俺のことは置いていってくれ」
「はぁ、それじゃあいつらと一緒だろ?拾ったんだから俺らも等しく面倒見るさ」
「そうか、本当にすまねぇな」

 夜番中はダンジョンクロウラーと言う這い回るワームのようなモンスターが襲ってきたくらいだ。

「おう、おはよう!よく眠れたか?」
「うん、おはよう」
 ラムザは目を擦りながら起きてラビオンの隣に座る。
「おら、皆んなにも挨拶だ」
「おはよう」
「「「おはよう」」」
「よく寝てたね」
「お腹すいた?」
 まぁ、なんにせよまずは朝飯だな。
 パンとベーコンで簡単に済ませると、ラビオンは木剣を取り出して素振りの指導をする。
 今のうちにラムザのスキルツリーを見てみる。
 『ポーター荷物持ち』はもちろん『戦士』に少しスキルツリーが伸びている。と言っても『体力+10』なのでたかが知れている。
 ポイントは少ないが、溜まってるのでこのまま稽古を続ければスキルが取れるだろう。

「よし、これを毎日やるからな?」
「うん!…ありがとう」
「気にするな、ルシエ!『クリーン』かけてくれないか?」
「『クリーン』」
 『簡易魔法』の『クリーン』は身体を洗浄してくれるのでかなり便利だが、やはりちゃんとシャワーを浴びて清潔にするほうがスッキリする。なので、
「30階層から戻って、宿に帰ろう」
「「「「はい」」」」
 とりあえず転移陣で外に出る。
「か、帰れた」
「当たり前だろ?ちゃんと覚えとけよ?」
「うん」
 そして宿に戻る前にギルドに顔を出して今回のことを報告するが、ポーター自体をギルドは認めていないらしく今回のことは自己責任らしい。
 仕方ないので30階層迄のドロップを買取に回すと金貨50枚になった。
 値段はそれなりだが、やはり8人で割ると十分とは言えないな。

 その後は服屋で服を買い宿に戻る。
宿ではラビオン、ワルツ、ウリンの部屋にラムザが加わり、面倒を見る。

 2日経ってラムザのスキルツリーを見ると今度は剣士のスキルツリーが伸びていて、『力+10』『体力+25』が取れていた。
「ラムザ、ダンジョンに行くぞ!」
「うん!」
 と1階層でスライム相手に奮闘しているらしい。

 その間に俺たちは魔剣の情報を探してみる。
 するとすぐに情報は入った。

『 ある男の物語、

 男の名はユニオン、とある大樹の麓に慎ましやかに暮らしていた。
 ある日、男はモンスターから女を助ける。
 名前をバルゴ。
 その日から女は男の家で暮らす様になる。
 恋仲になるのに時間はかからなかった。

 だがバルゴはその国の姫だった。
 王は姫を攫った悪漢とし、兵に連れ返す様に命令する。
 大樹の麓に兵が押し寄せ、男はなす術なく捕まり牢屋に入れられる。
 
 王は姫を婚約させると男の処刑を急いだ。

 姫は男を助けようと剣を持ち牢を破り、男と逃げようとするが男を庇い姫は命を落とす。

 一命を取り留めた男は怒り狂い、神がかった力で一本の剣で城を落とすと姫の亡骸を抱いて大樹の麓へと帰る。

 男は墓標にその剣を使い深い悲しみと消えない怒りを持って、
 
 今もなお、守り続ける  』

「悲しいね」
「この剣が魔剣ってことか?」
「そうみたいね」
「で、その剣は貰っていいの?」
 普通に考えてもう墓守は居ないだろうが、

「ダメだろ?」
「「「だよねー!」」」
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...