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第六十話

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 王都を出発すると西に道が続き、そこから西南の方へと道なりに進んでいく。大きく回って帰る道のりだ。
 道なりに進み街が見えてきたので今日はここまでにする。

「結構おおきな街ね!」
「そうだな。なんか集まってるな」
 門から中に入り大通りを真っ直ぐいくと広場があって、そこに人集りが出来ていた。

「『暁の獅子』達よ!今こそ立ち上がり帝国に鉄槌を!!」
 なんだ?プロパガンダか?
「みんな!いまメンバーを募っている!賛成してくれる者は一緒について来てくれ!!」
 ゾロゾロと後をついていく冒険者や民衆たち。
 まぁ、最初から聞いてなかったからあれだけど、なかなか迫力があったな。
 それにしても王都の目と鼻の先で帝国への攻撃を仄めかす行動なんてしていいのか?

「ありゃ一体なんだ?」
「あら、アンタら旅の人かい?あれは『暁の獅子』って言って、ここいらじゃ有名だよ?」
「へぇ、そんなにかい?」
「リーダーのライドさんがまたイケメンでね!」
 そんなことは聞いてないのだが。

「今帝都はこっちに攻撃してくる準備をしているみたいでね。それを迎え撃つらしいんだよ!」
「へぇ、そりゃご立派なこって」
 ラビオンは興味ないようだな。
 まぁ自主的なものみたいだよな。それなら王都で兵士でもやればいいのに。

 まぁ、いい見せ物だったと思い、宿に向かう。
 下の食堂に集まると、
「やぁ!!君たちは冒険者だよね?『暁の獅子』に入らないか?」

 そこにいたのはライド?とか言ったな。金髪のライオンヘアーの若い男だ。実直そうな目をしているが、少し怖いな。
「俺たちは目的があるんでな。入らないよ」
「そうか!それは残念!でも、そのうち戦争が起きる!その時一番活躍するのは『暁の獅子』だよ?」
「凄い自信だな」
「そりゃね!自信がないとやらないさ!」
「そう言うもんかねぇ、あっ!おばちゃん!エールね!」
 ラビオン達は興味がないようでもう注文をしている。
「まぁいいさ!これも何かの縁だからこれを渡しておくよ!」
 と渡されたのは名刺のようなもので獅子が象られている。
「それを見せれば敵じゃないってことだから!じゃー!」
 颯爽と帰っていくライドに溜息を付く。

「ルシエと違うタイプのイケメンだったね」
「そうね。ワイルドと言うか自信満々だったわね」
 アビーとリミは評論会をしている。
「ルシエが一番」
「あはは、ありがとう」
 
 それにしても戦争が起こるとは聞いていたが身近になって来たんだな。
 今すぐどうこうってわけじゃないだろうけど、冒険者も召集されるのか?

「なぁ、冒険者も戦争になったら集められるのか?」
「いや、自主参加だ。だが、みんな戦争に負けたら困るから出るのが普通だな」
「あー、それもそうか」
「国外逃亡って手もあるが、国境が厳重になるから出られるかどうかだな」

 結局は王国を拠点にしている間は戦争は回避不可能なのか。
 カルア伯爵も戦争のことを言っていたしな。
 出来れば回避したいのだがそうも言ってられないのか…
 ならライドのように仲間を集め帝国に対抗するのもありなのかもな。

 夜は久しぶりに練金釜を使い、忍具を作る。
 煙玉や爆発玉などの小道具だが、意外と必要な物だ。
「とりあえずこれで忍者の経験値にもなるだろうな」
 『錬金術』『忍者』のスキルツリーが伸びるはずだ。
 出来れば鉤爪などもガイツに作って欲しいが頼むと凝りそうだからな。売っている物を買う必要があるな。

 
 次の日は、ゆっくりと朝を過ごし、街を散策する。
 至る所に『暁の獅子』のマークがある。
 昨日のライドのクラン?になるわけだよな?
 この街は『暁の獅子』が守ることになるのか?されど街は大きいぞ?それだけ大きなクランってところなのか。

 街を散策し武器屋を見つけたので入ってみると鉤爪付きの手甲があったので買っておく。
 
「あ、また会ったね!どうだい?考えてみてくれた?」
 団体でライドが先頭を歩いてくる。
「ライドか。いや、考えは変わらないが、『暁の獅子』はクランなのか?」
「そうだね。もう200人くらいにはなるよ!」
 200人?凄いな。それでまだ増やそうとしてるんだからな。

「分かった、気が向いたら入ってよ?ここを拠点にしてるからさ!」
 と言って何人かこっちを見ながら帰って行った。
 200人か…大変だなぁ。

「入るなよ?」
「ん?入らないよ?」
「あれはクランって言うより傭兵団だな。戦争で功績を上げて叙勲してもらうのが目的の奴らが集まってる。そんな奴らに仲間意識は薄いだろうな」
 そうか、そう言うものなのかもな。
 
 次の日は朝早くに出発だ。
 これ以上ここにいてライドに勧誘されるのも鬱陶しいからな。
 
 山林を走っていると、
「グラスウルフが来てます!」
「よし!俺がいくよ!」
 とアイラと御者を代わり後ろに行く。
「何すんだ?」
「まぁ、みてろよ」
 と『煙玉』地面に投げつける。

 上手いこと目眩しになり、逃げ切れたのでやはり忍具もある程度持っておくのがいいな!

「へぇ、でもグラスウルフなら倒した方が良くないか?」
「試しにだよ。あいつら臭いに強いからな。追いかけてくるかと思ったが、意外にも効いたみたいだな」
 嗅覚が敏感なグラスウルフにも効果があるならこれは使えるな。
 やはり使える物は用意しておこう。
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