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第五十四話
しおりを挟む公爵の屋敷を出た俺たちは平民街まで戻ってきた。
「ねぇ、ラビオン達のとこに行く?」
「そうだな、合流するか!道わかるか?」
「分かる」
「昨日聞いてます!」
「よし、なら合流しよう」
『SOD』のクランハウスに向かう。
大通りは相変わらずの人混みだが、住宅街に入って行く。
大きな三階建の建物が『SOD』のクランハウスらしい。
中の様子を伺うと人の気配がする。
「いるみたいだな。入るぞ」
扉を開けると、真ん中にデカいテーブルがあり、左手に階段があるだけの殺風景な部屋だ。
そこにラビオンの姿があった。
「お!ルシエが来たな!リミ達も一緒か、早くこっちに来な」
中に入るとアイズ、ヴァン、ダイスにマリンがいる。あとはラビオン達だな。
「久しいとは感じないが、色々あったようだな」
「そうだな。色々とあった」
随分としおらしい態度だな。もっと自信があった気がするが、
「まぁ、それもあっての今だ」
ラビオンの言う通りだ。
「その事で聞きたい事がある」
「なんだ?」
「何故公認を外された?問題でもあったのか?」
唇を噛み、悔しそうな顔のアイズ。横からマリンが口を挟む。
「公認が外されたのはメンバーの減少が原因と言われました。ですが、王は不在のまま公認を外すと言われたんです!」
「それは誰に?」
「この国の宰相や他の貴族も賛成してました」
一概に何かの間違いだったとは言えないな。
「で?そっちはどうだったんだ?」
ラビオンが話を振って来るので、
「こちらはギルマスもやはり毒だったよ。解毒ポーションを飲ませたから大丈夫だ」
「それは流行り病ではないと言うことか、ならマスクは要らないな!これ息苦しくてさ!」
とマスクを外す。
「しかし病気じゃなかったのか、毒とはまたえげつないな」
ラビオンの言う通り、殺しにかかっているからな。
「後は公爵が動けるようになったら登城してくる」
「マジか!そういえば王様も病に罹ってるんだよな」
ラビオンがサラッと口に出す。
「どう言うことだ?王は病なのか?」
アイズが聞いてくる。口止めするの忘れてた俺が悪いな。
「はぁ、そうだ。だがこれは極秘だぞ?」
「分かっている!それにしても流行り病か」
「それもまだ分からないからな。どこまでが本当か精査しないと」
かなり毒の可能性が高いと思う。
「その登城についていけないか?」
アイズが言うが、
「マリンは来て欲しいな、解毒魔法は使えるんだよな?」
「はい!でしたらアイズだけでも」
「仕方ない、アイズとマリンが同行だな」
これで登城メンバーは決まったな。
「登城するメンバーは俺とアイズ、マリンだ。他は待機してくれ」
ヴァンが文句を言いたそうだがダイスが止めている。流石に大人数はいけないからな。
『SOD』には登城が決まったら連絡することにして、俺たちは外に出る。
「にしても大事になってきたな!」
「いや、最初から大事だからな?貴族か罹る流行り病なんておかしな話だ」
「そうだな。それよりももう自由行動でいいか?」
はぁ、あとでラビオンは反省させないとな。
「あぁ、あとは登城してどうなるかだからな」
「よし!買い物行くわよ!」
まだ昼を回ったくらいだから、まぁいいか。
「やった!案内するよアビー!」
「よっし!行くわよリミ!」
「買い物!」
「やりましたね!私も王都で行きたいお店見つけたんです!」
と女性4人は一緒に出かけて行った。
「俺らはどうする?」
「俺はナイフをみたい!」
ウリンが新しいナイフをみたいらしいので男4人で武器屋に向かう。
その日は午後から買い物をしていく。
食糧もここまででかなり使ったから補充して、最後にギルドに顔を出す。
「お、来たな。朝はありがとう」
「ギルドマスター?寝てないとダメじゃないか」
「いや、解毒ポーションが効いたからな。滞ってた仕事もある。寝てるわけにはいかないんだよ」
ブラックの匂いがするけど自主的に出て来てるんだからしょうがないのか?
「それよりも解毒ポーションを売ってくれないか?」
「まだそんな人がいるのか?」
「いや、予備として持っておきたいんだよ」
「分かった。そういえば最近登城した事はあるか?」
ギルマスに聞いてみる。
「あぁ、『SOD』のことで登城はしたが」
「何か食べたか?」
「ん?…いや、食べてはいないな」
「そうか、何か変わったことはなかったか?」
「んー…そういえば宰相から握手を求められたな」
「おかしなことか?」
「まぁな、ギルドはあまりよく思ってない宰相だから、あの時は気持ち悪いと思ったな」
『SOD』のこともあるし気にはかけておこう。
あとは食事からの感染じゃないとすると飛沫感染か?毒だから違うよな。
持っていた解毒ポーションをギルマスに売ってから宿に戻る。
手紙が来ていて明日登城らしい。
朝イチで馬車が迎えにくるらしいので、アイズ達に連絡しておく。
「これで王宮で何が起こってるのか分かるかな」
「そうね、あまり無茶はしないでね?」
「わかってる。アイズ達もいるから大丈夫だ」
さて、原因がわかればいいのだが…。
次の日は朝から外で待つ。
馬車が迎えに来たのでアイズ、マリンと乗り込む。
「ルシエ様、今日はまた違うメンバーですか?」
中に座っていたメイベルが聞いてくる。
「あぁ、知り合いで解毒魔法が使えるんだよ」
「そうですか!それなら安心ですね」
メイベルは嬉しそうに喋る。もう貴族じゃないのにこうやってちゃんと話をしてくれる。
小さな頃からの付き合いだったからな。
公爵家に着くと、案内されるが、
「なんでお前がここにいるんだ?」
レビンだ。前のような刺々しい言い方じゃなくなっている。
「公爵に用事だ。回復してなにより」
「あぁ、世話になった。ではな」
レビンは背を向け歩いて行く。
少し対応が柔らかくなったな。次期公爵としての自覚もあるのだろう。
“コンコンコン”
応接室の扉をノックする。
『入れ』
「失礼します」
入っていきソファーの前で立つと、
「まぁ、座れ」
「はい、ありがとうございます」
対面のソファーに俺とアイズが座る。
「『SOD』のアイズ君だね?」
「はい、初めまして、アイズと申します」
「まぁ、堅くならなくていい、冒険者として振る舞ってくれ」
「わかりました」
アイズは少し緊張がほぐれたようだ。
「今日は登城したら王の寝所に行くが、誰を連れて行く?」
「はい、俺とマリンですね。俺が『鑑定』してマリンが聖女なので『解毒魔法』が使えます」
「そうか、ならばアイズ殿は扉の外で警戒してもらえるか?」
「はい!分かりました!」
「では、早速行くとしよう」
「はい」
外に出て公爵家の馬車に乗りこむ。
王城までの馬車の中は緊張からか誰も喋らなかった。
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