上 下
57 / 95

第五十四話

しおりを挟む

 公爵の屋敷を出た俺たちは平民街まで戻ってきた。
「ねぇ、ラビオン達のとこに行く?」
「そうだな、合流するか!道わかるか?」
「分かる」
「昨日聞いてます!」
「よし、なら合流しよう」
 『SOD』のクランハウスに向かう。
 大通りは相変わらずの人混みだが、住宅街に入って行く。
 大きな三階建の建物が『SOD』のクランハウスらしい。

 中の様子を伺うと人の気配がする。
「いるみたいだな。入るぞ」
 扉を開けると、真ん中にデカいテーブルがあり、左手に階段があるだけの殺風景な部屋だ。
 そこにラビオンの姿があった。
「お!ルシエが来たな!リミ達も一緒か、早くこっちに来な」
 中に入るとアイズ、ヴァン、ダイスにマリンがいる。あとはラビオン達だな。

「久しいとは感じないが、色々あったようだな」
「そうだな。色々とあった」
 随分としおらしい態度だな。もっと自信があった気がするが、
「まぁ、それもあっての今だ」
 ラビオンの言う通りだ。

「その事で聞きたい事がある」
「なんだ?」
「何故公認を外された?問題でもあったのか?」
 唇を噛み、悔しそうな顔のアイズ。横からマリンが口を挟む。
「公認が外されたのはメンバーの減少が原因と言われました。ですが、王は不在のまま公認を外すと言われたんです!」
「それは誰に?」
「この国の宰相や他の貴族も賛成してました」
 一概に何かの間違いだったとは言えないな。

「で?そっちはどうだったんだ?」
 ラビオンが話を振って来るので、
「こちらはギルマスもやはり毒だったよ。解毒ポーションを飲ませたから大丈夫だ」
「それは流行り病ではないと言うことか、ならマスクは要らないな!これ息苦しくてさ!」
 とマスクを外す。
「しかし病気じゃなかったのか、毒とはまたえげつないな」
 ラビオンの言う通り、殺しにかかっているからな。
 
「後は公爵が動けるようになったら登城してくる」
「マジか!そういえば王様も病に罹ってるんだよな」
 ラビオンがサラッと口に出す。
「どう言うことだ?王は病なのか?」
 アイズが聞いてくる。口止めするの忘れてた俺が悪いな。
「はぁ、そうだ。だがこれは極秘だぞ?」
「分かっている!それにしても流行り病か」
「それもまだ分からないからな。どこまでが本当か精査しないと」
 かなり毒の可能性が高いと思う。

「その登城についていけないか?」
 アイズが言うが、
「マリンは来て欲しいな、解毒魔法は使えるんだよな?」
「はい!でしたらアイズだけでも」
「仕方ない、アイズとマリンが同行だな」
 これで登城メンバーは決まったな。
「登城するメンバーは俺とアイズ、マリンだ。他は待機してくれ」
 ヴァンが文句を言いたそうだがダイスが止めている。流石に大人数はいけないからな。

 『SOD』には登城が決まったら連絡することにして、俺たちは外に出る。

「にしても大事おおごとになってきたな!」
「いや、最初から大事だからな?貴族か罹る流行り病なんておかしな話だ」
「そうだな。それよりももう自由行動でいいか?」
 はぁ、あとでラビオンは反省させないとな。
「あぁ、あとは登城してどうなるかだからな」
「よし!買い物行くわよ!」
 まだ昼を回ったくらいだから、まぁいいか。
「やった!案内するよアビー!」
「よっし!行くわよリミ!」
「買い物!」
「やりましたね!私も王都で行きたいお店見つけたんです!」
 と女性4人は一緒に出かけて行った。

「俺らはどうする?」
「俺はナイフをみたい!」
 ウリンが新しいナイフをみたいらしいので男4人で武器屋に向かう。

 その日は午後から買い物をしていく。
 食糧もここまででかなり使ったから補充して、最後にギルドに顔を出す。
「お、来たな。朝はありがとう」
「ギルドマスター?寝てないとダメじゃないか」
「いや、解毒ポーションが効いたからな。滞ってた仕事もある。寝てるわけにはいかないんだよ」
 ブラックの匂いがするけど自主的に出て来てるんだからしょうがないのか?

「それよりも解毒ポーションを売ってくれないか?」
「まだそんな人がいるのか?」
「いや、予備として持っておきたいんだよ」
「分かった。そういえば最近登城した事はあるか?」
 ギルマスに聞いてみる。
「あぁ、『SOD』のことで登城はしたが」
「何か食べたか?」
「ん?…いや、食べてはいないな」
「そうか、何か変わったことはなかったか?」
「んー…そういえば宰相から握手を求められたな」
「おかしなことか?」
「まぁな、ギルドはあまりよく思ってない宰相だから、あの時は気持ち悪いと思ったな」
 『SOD』のこともあるし気にはかけておこう。
 あとは食事からの感染じゃないとすると飛沫感染か?毒だから違うよな。

 持っていた解毒ポーションをギルマスに売ってから宿に戻る。
 手紙が来ていて明日登城らしい。
 
 朝イチで馬車が迎えにくるらしいので、アイズ達に連絡しておく。
「これで王宮で何が起こってるのか分かるかな」
「そうね、あまり無茶はしないでね?」
「わかってる。アイズ達もいるから大丈夫だ」

 さて、原因がわかればいいのだが…。


 次の日は朝から外で待つ。
 馬車が迎えに来たのでアイズ、マリンと乗り込む。
「ルシエ様、今日はまた違うメンバーですか?」
 中に座っていたメイベルが聞いてくる。
「あぁ、知り合いで解毒魔法が使えるんだよ」
「そうですか!それなら安心ですね」
 メイベルは嬉しそうに喋る。もう貴族じゃないのにこうやってちゃんと話をしてくれる。
 小さな頃からの付き合いだったからな。

 公爵家に着くと、案内されるが、
「なんでお前がここにいるんだ?」
 レビンだ。前のような刺々しい言い方じゃなくなっている。
「公爵に用事だ。回復してなにより」
「あぁ、世話になった。ではな」
 レビンは背を向け歩いて行く。
 少し対応が柔らかくなったな。次期公爵としての自覚もあるのだろう。

“コンコンコン”
 応接室の扉をノックする。
『入れ』
「失礼します」
 入っていきソファーの前で立つと、
「まぁ、座れ」
「はい、ありがとうございます」
 対面のソファーに俺とアイズが座る。

「『SOD』のアイズ君だね?」
「はい、初めまして、アイズと申します」
「まぁ、堅くならなくていい、冒険者として振る舞ってくれ」
「わかりました」
 アイズは少し緊張がほぐれたようだ。

「今日は登城したら王の寝所に行くが、誰を連れて行く?」
「はい、俺とマリンですね。俺が『鑑定』してマリンが聖女なので『解毒魔法』が使えます」
「そうか、ならばアイズ殿は扉の外で警戒してもらえるか?」
「はい!分かりました!」

「では、早速行くとしよう」
「はい」
 外に出て公爵家の馬車に乗りこむ。

 王城までの馬車の中は緊張からか誰も喋らなかった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...