29 / 95
第二十八話
しおりを挟む「あー、なんとかなって良かったー」
外に出たらリミが力の抜けた声で言う。
「そうだな、流石にあれはヤバかった」
ポイントを奪っていなかったら勝てなかっただろうな。
街に戻るとまだ夕暮れ時なのでギルドに向かう。
「あ、『リベル』のみなさん。お帰りなさい」
「ただいまぁ、サーシャさん聞いてよぉー」
とカウンターに滑り込むリミを捕まえる。
「リミ?まずは受付に言うことがあるからな?」
サーシャは可愛らしいショートカットの受付嬢でゴテアラ達の時も俺らの味方でいてくれた子だ。
「う、そうだった」
改めて受付嬢のサーシャに向かうと、
「ギルマスを呼んでくれないか?多分秘密にしたいことだと思う」
「は、はい。ではこちらにどうぞ!」
サーシャは別の人に後を頼むと二階に案内してくれる。
「こちらでお待ち下さい」
応接室に通されるとソファーに座って待つ。
“コンコン”
「待たせたね。で?何の用だい?」
と金髪を後ろで束ねた若い紳士が聞いてくる。ここのギルマスのポートだ、ちなみにリミが言うにはエルフらしい。
「ダンジョン5階層に知らない道があった」
「なに!?それは本当か?」
俺は地図を出すとその場所を指し示し、
「ここだ。壁で隠された通路を中に入るとボス部屋があった」
「そ、それで?」
「グラトニースライムと言うモンスターがいた」
息を呑み落ち着いてから喋り出すポート。
「無事と言うことは倒したんだね?暴食の魔獣を」
「なんだ?有名なのか?」
グラトニースライムなんか有名なのか?
「古い書物に載っているのを見たことがある。七体の魔獣が地上に出ると、世界は終わると」
あれが七体も居るのか?
「その一つが暴食の魔獣、グラトニースライムだ」
「そうか、なんとか倒すことができた」
「もっと詳しく教えてくれないか?」
「スキルの事もあるからこれだけしか言えないな」
スキルツリーなんて言えるわけないしな。
「そうか、討伐した証は何かあるか?」
「死体を収納してきた。グラトニースライムに捕食されていた人間だ」
「…ふぅ、それを見てみよう。着いてきてくれ」
俺たちは部屋を出て、地下にある安置所に来た。
「ここに出してくれ」
「分かった。全部で28人の遺体だ」
並べて寝かせて行く。
「!!?…そうか…紛れもなくブランドーにいた冒険者達だ」
と悔しそうに言うポート。
「そうか」
「どうやって倒したのかは知らないが、皆んなに変わって礼を言う。…ありがとう」
ポートは頭を下げ礼を言う。
その後は少しやり取りをして、後日また話をする事になった。
「ようやく帰れるね」
「そうだな。宿に戻ろう」
宿に戻り、シャワーを浴びてから下で落ち合うと、まだラビオン達は帰って来てない様だ。
「ラビオン達は深く潜ってるみたいね?」
「そうだな、まぁ、4人が無事帰ってくればいいが」
「大丈夫」
「そうですよ!皆んな強い人ですしね!」
まぁ、俺らが心配するのもなんだしな。
「あーぁ、このバッグをウリンに自慢したかったなぁ」
「私も」
と2人は今日の戦利品を持ってきていた。
「あはは、なら帰ってきたら自慢すればいい」
「ですです!今日のはほんとヤバかったですしね」
と喋っていると注文した品が揃う。
「では『リベル』の初ダンジョンに乾杯!」
「「「乾杯!」」」
まぁ、『リベル』と言うパーティーになってからは初のダンジョンだからな。
飲み過ぎない様にして自分なりに今日の反省をする。
やはり深追いはしないでおかないと何があるかわからないからな。もし普通のスキルだったら負けて当然だった。
部屋に帰るとポイントの確認をする。
膨大な量のポイントが入っているので死体はそれなりの冒険者だったのだろう。
全てのポイントを注ぎ込めば剣聖がマスター出来るくらいはあるな。
“コンコンコン”
アイラかリミだろう。
「どうした?ん?ネイル?」
「こんばんはです。お邪魔しても?」
いつもと違う匂いのネイルにクラクラする。
「あ、あぁ」
「お邪魔します。何をなさってたんですか?」
「ん?あぁ、スキルを少しな」
「あ、また見て下さい」
と言ってベッドに座るネイル、前に椅子を置いて座ると膝に乗ってくるネイル。
「こうすればもっと良くわかりますか?」
顔を赤くしてはにかむネイルの可愛さにクラクラすると、唇を奪われる。
「ムチュッ…ハァ、私じゃダメですか?」
「そんな事はない」
とそのままベッドに寝かせると2人でキツく抱き合う。
俺は3人ともちゃんと責任を取らないといけなくなったな。
翌朝は起きるとコーヒーを淹れてくれていたので、ふたりで飲みながら朝日を見る。
「私、幸せです」
と言われてどう返せばいいのか分からなかったが、ただ頷き肩を抱き寄せた。
下に降りるとリミとアイラがネイルに何か言っているが、笑顔なので問題はなさそうだ。
…まぁ、俺が一番問題なのだがな。
今日も寒い日になりそうだ。
ジャケットを羽織ってギルドに向かう。
サーシャからギルマスが会いたいと言っているとのことだったので応接室に向かう。
「待たせたね。昨日の今日で悪いが、契約書を持ってきた。良ければ私に話してもらえないか?」
ポートは真剣な眼差しでこちらに契約書を差し出した。
591
お気に入りに追加
1,243
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる