28 / 95
第二十七話
しおりを挟むメインで使っていた武器が壊れてしまった。
「ガイツに作ってもらった奴は?」
「あぁ、これは刀と言って癖があるんだよ」
刀と剣では扱い方が違う。
「それはスキルでなんとかならないの?」
「なんとかするしかないか…」
剣聖を進めたいのだけど、しょうがないか。
武士のスキルツリーから『すり足』『抜刀術』『刀技Lv1』を取得しておく。
『刀技』はLv10まであるのでそこまで取るかはまだわからない。
剣聖スキルは少し休みだな。
まぁ初期スキルなのでポイントが少なくて済むのはいいな。
「んじゃ、ダンジョンにでも潜るか!」
「そう来なくっちゃ!」
「うん」
「行きましょう!」
とりあえずいつもの様に支度をして外に出る。
「さっむ!」
「寒いな、ダンジョンに入ればなんとかなるが」
「買いに行く」
「そうですね!これじゃ待ってる間が辛いです」
寒い季節になってきたので流石に鎧の上から羽織る物を買いに出かけることになった。
やはり出回っているのは毛皮や革製品なので、それなりの値段だが買わないわけにもいかない。
「よし!これで決まり!」
リミは明るい色合いの毛皮のロングコートだ。
「あったかい」
アイラは黒のダウン。
「これはいいですね!」
ネイルは焦茶の革のロングジャケットだ。
「俺はまぁ、これで」
俺が買ったのは黒の革のジャケット。
ジャケットの中にレザーアーマーで刀を腰に付けてると何故か近未来感が出るのはしょうがない。
みんな似た様なもんだし浮かないからヨシとしよう。
ダンジョンに並ぶこと1時間くらいでようやく中に入れた。
中は気温が関係ないので上着を預かり収納する。
今日は1階層から順に回って行く。
刀技も試してみたいし、確かめながらダンジョンを探っていく。
と言うのも『マッピング』と地図との誤差なのか、知らない道があるのでそこを探ってみることにした。
「ここがそうですか?壁ですけど?」
「だが、俺の『マッピング』にはこの先に道があるはずなんだが」
やはりその場所は壁になっていて通れない様だ。
「ん?この壁少し変ですね?」
「あ?」
「色が違う」
アイラが言う様に少しの差だが他と違う色をしている。
「ネイル、探ってくれ」
「任せて下さい!」
ネイルに任せて後ろを警戒する。
“ゴゴゴゴゴゴ…”
と言う音が聞こえて振り返ると壁が開いて道ができていた。
「やりました!やりましたよ!」
「ほぇぇ、凄い」
「隠し通路」
「だな、それじゃあ気をつけて行ってみようか!」
やはり道はあったようで『マッピング』は間違ってなかった様だ。
少し肌寒い通路を抜けるとそこには扉が出てきた。
「ここって5階層だよね?なんで?」
「まぁ、十中八九ボス部屋だろうな」
少し行くのに躊躇うが、まだ5階層だ。
「よし、行くぞ!」
「はい!」
扉を開けると、そこには巨大なスライムがいた。
「うげ!中にいるのは人間?!」
スライムの体の中には何十人もの人間が苦しんでいる表情で揺らめいている。
鑑定すると『グラトニースライム』らしく、食べた物の力を得る様だ。
「避けろ!!」
“ズガァァァン”
触手が壁を粉砕する。
「あれ倒せる?」
「やるしかないだろ!」
“ズガン”
“ズガン”
“ズガン”
と触手が壁を穿つ。
「来て!『サラマンダー!』」
『よっしゃ!やってやるぜ!』
「ライトニング!」
「シーフスラッシュ」
「抜刀・五月雨」
皆で攻撃するが、デカいスライムにはあまり効果がない様だ。
俺は鑑定をもう一度かける。
食べた物の力を得るなら奪えないか?
中の人間のポイントをありったけ集め自分のものにする。
『グシャぁぁぁぁぁ…』
ボタ…ボタ…ボタボタボタ。
ポイントを取った人間を排出し始めたグラトニースライムは小さくなっていく。
ついでにグラトニースライムのポイントを見るがこいつ自体は持っていなかった。
こいつはやはり人間を糧にして育っていた様だな。
「いまよ!」
『任せろ!フレアーボール!』
サラマンダーが高熱の炎の玉を放つ。
グラトニースライムに触れると沸騰してグツグツと泡をたてている。
「アイラ!」
「アイシクルランス」
氷の槍がグラトニースライムに刺さっていく。
沸騰した物を急激に冷やせば!
“パキパキ…パキッ”
カシャーンとグラトニースライムは砕けて消滅してしまった。
「良かった…流石にあんな化け物は」
「そ、そうね、懲り懲りだわ」
「ふぅ」
「無傷でほんとよかったです…」
人のこないはずの場所だ。どこかの罠が繋がっていたのだろう。
残されていたのは人間の死体と真っ赤な宝石だった。
「あっ!宝箱!」
「これは…多分ですけど解除できます」
「やってくれ」
「はい!」
失敗は怖いが、やれると言っているんだから信用しないとな。
皆が息を殺し見守る中、ようやく解除できたのかネイルの肩が下がる。
「できました。開けます」
中にはエメラルドグリーンの宝石のついた杖とバッグが一つあった。
「よし!」
「よくやったな!杖はアイラだ。バッグはリミだな」
杖は雷鳴の杖らしくアイラしか使わないし、マジックバッグはポーチタイプでリミの矢を持ち運ぶのにいいからな。
「やったぁ!マジックバッグだ!」
「新しい杖」
2人とも嬉しそうだし、ネイルも自分ばかりが貰っていたのでホッとしている様だ。
にしてもこの宝石は、鑑定してみると『暴食の命石』と言うのもらしいが使い道がよくわからないな。
とりあえず収納に入れておこう。
死体から取ったポイントは俺の糧となってもらう。その代わりと言ってはなんだが死体は収納してギルドに持ち帰ることにする。
ギルドなら誰なのか分かるだろうし、手厚く葬ってくれるだろう。
死体を収納するとボス部屋は広いだけで石碑もない、ただの部屋の様だ。
「さて、10階層に行って帰ろう」
「「「はい」」」
俺たちは来た道を戻って10階層までいくとポイントを登録して外に出る。
563
お気に入りに追加
1,233
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる