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第二十一話
しおりを挟むダンジョンに潜る様になって10日経つ。
「オーク4!来ます!」
「分かった!『ウォークライ』『エアリアルラッシュ』」
俺がスキルを使い2匹を倒し、こちらに引きつける。
「ッシッ!」
リミが弓で後方のオークを倒す。
「『ウィンドカッター』」
アイラの魔法でもう1匹にトドメだ。
「アイラは魔力温存してていいぞ?」
「んーん、やる」
「そっか」
あれくらいなら一人でも十分対処できるな。
ドロップ品のオークの皮と肉、魔石を拾い、先に進む。
今は15階層まで潜っている。
この10日である程度ダンジョンも慣れてきたので少しづつ下に潜る。
今の所モンスターもそこまで強くないので苦戦はしていないが、このパーティーのリーダーは俺らしいので、やはり気を使ってみんなの歩幅を合わせる。
いまは20階層を目指している。
「そろそろ下の階に続く階段があってもいいのに」
「見つけるしかない」
「それは分かってるけど」
と言うリミは意気消沈だな。
「まぁ、休憩しようか?あんまり急ぐのもな」
「分かった」
「うーん、分かったよ」
「そろそろご飯ですしね!」
ネイルは相変わらず元気だな。
「大丈夫か?」
「え?あぁ、大丈夫よ。ただ同じ階にずっといるからさ」
「だな。早めに階段が見つかるといいんだがな」
まぁリミが言いたいことも分かる。
もう2日も15階層にいるんだからな。
同じ様な石造りのダンジョンの中を彷徨っていると気が滅入るが、ちゃんとマップを作成しながらだから必ず階段があるはずだ。
収納から肉がサンドされたハンバーガーの様なものを取り出し渡していく。
「まぁ、これでも食って気を紛らわせろよ」
「ん、うん!まぁ、しょうがないしね!」
とリミは笑顔を見せるが痩せ我慢っぽいな。
「マッピングはしているから大丈夫」
アイラがマッピングをしてくれている。
「そうですよ。すぐ見つかりますって」
「だな、もうオークにも飽きたしな」
だいぶ溜まってきたオークの素材もあるので早く下に行きたいのはみんな同じだ。
ここから上の階に戻ってもまたやり直しになるだけだし、食料はあるからもう少し粘る事にする。
食べ終わるとようやく動く気になって、また15階層を進む。
「お、やっとか」
「ハァァァ、やっとあった!もう迷子の気分だったよ」
「リミは大袈裟、これは普通」
「しょうがないじゃない!やっぱりマップがあった10階層までとは別物なんだもん」
リミの言う通り、ちょっとナメてたな…
「これからもマッピングしながら行こう。まだ20階層までは気を抜けないからな」
「そうね、任せて」
笑うアイラは相変わらず口数が少ないが表情が豊かになったな。
「よし、16層は何が出てくるのかしら?」
「気をつけて進みましょう!私の後を着いてきて下さいね」
「了解!」
とやはり新しい階層に入って気分が変わった様だな。俺も切り替えていくか。
「敵2、来ます!」
ネイルが言う通り二体のデカいカナブンの様なモンスターだ。
「俺がまず行くよ!『パリィ』」
“ガインッ”と硬いものに当たった感触だ。
「硬いな!」
「私が!『サンダーストライク』」
アイラの魔法が炸裂するとオオカナブンは焼けて消滅した。
「ふぅ、あれがここのモンスターか…なんとか倒せる様にならないとな」
「私がいる」
「いや、アイラはマッピングもしてるし、魔法でしか倒せない奴のために魔力は取っておいて欲しい」
「分かった、でも危ない時は使う」
「うん、それはお願いする」
ダンジョンを進んで行くと今度は早めに階段が見つかった。
「よし!これであと3階層ですね!」
「そうだな!リミは大丈夫か?」
「もち!大丈夫よ!早く行きましょ!」
リミも元気が出てきたみたいだな。
寝る時は2人ずつ交代で寝る。
ダンジョンの10メートル四方の部屋の様な場所を見つけておいて、そこにテントを張る。
モンスター避けのクリスタルの様な置き物を出入り口に置いておくのでモンスターは来ないらしいが、それでも逃げ道は確保しておく。
「今日はネイルと一緒か」
「え?!私じゃダメでした?」
「あはは、そんな事はないよ。ちゃんとパーティーメンバーとして扱ってるだろ?」
前は仮の様なことを言ってたが、今じゃ斥候としてなくてはならない存在だからな。
「はぁ、良かったですよ」
「もっと自信を持っていいぞ?」
「はい!あ!また見てもらったりできますか?」
ん?スキルツリーのことか?
「なんでだ?」
「いや、本当は斥候がマッピングなんかもしないといけないんですが、私ってなんか苦手なんですよね…」
そうなのか?それじゃあだいぶ斥候に負担がかかるが。
「一応見てやる。でも出来ることは少ないと思うぞ?」
「それでもお願いします」
ネイルのシーフのスキルツリーは順調に伸びていてその先にはマッピングなんて無いな。
「見てみたがマッピングの能力は必要ないぞ」
「そ、そうですか、皆の力になれると思ったんですけど」
「なんでだ?今でも頼りにしてるぞ?」
ネイルは悲しい顔をしているので聞いてみる。
「…私は探し物があるんです。その為に冒険者になりました」
真剣な表情でそう言うネイルの手は強く握られていた。
「買えるものじゃないみたいだが、何を探している?」
「『星晶石』と言う物です」
『星晶石』と言う名は古い書物で読んだ記憶がルシェールの中にある。
確か願いを叶えるなんて冗談のような眉唾物だったはずだが?
「何故それが必要なんだ?かなり怪しいが?」
「私の母親と呼べる人の病気を治したいんです」
潤んだ瞳から涙が零れ落ちる。
「ハイポーションでもダメなのか?」
完全とはいかないが、大抵の病ならハイポーションで治癒可能なところまで回復すると思うが…
「無理でした…『蟹星病』と言うのは知ってますか?」
「…あぁ、胸にできる痣か…死病だな」
こちらでは手の施しようのない死病…地球で言うところの乳癌だな。
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お久しぶりです。
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