外れスキルと言われたスキルツリーは地球の知識ではチートでした

あに

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第十五話

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「待ってください!私も連れて行って下さい!」
 と言うのはネイルだ。
「だめよ!もう女は定員オーバーよ?」
「そんなんじゃないです!私は冒険者になりたいんです!」
「もう冒険者」
 アイラの言う通りネイルは冒険者だ。
「そうよ?ギルドに登録したらもう冒険者なのよ!だから私達について来る必要はなし!」
「パーティーに入れて下さい!私は斥候なんです!どうですか?必要じゃないですか?」
 それでも食い下がってくるネイル。
「くっ!斥候は欲しいとこだけど…」
 俺の方を見るリミとアイラ。
「まぁ、いいんじゃないかな?お試しで?」

「あ、ありがとうございます!」
「仮よ!仮!…また女が増えた」
「はぁ」
 二人はあまり嬉しくないようだが、斥候はダンジョンに入るなら必要だからな。
 それに何か事情がありそうだ。
 
 ネイルは茶色のロングヘアを靡かせて、少しキツめの顔だが美人だ。革鎧にロングブーツ、ショートパンツ姿でナイフを腰に着けている。斥候と言われなくてもわかる格好だな。

 今は伯爵領を出て街道を南に走っている馬車の中、アイラに御者を任せてネイルのスキルツリーを見せてもらっている。
「何をしてるんですか?」
「いいから見てなさいよ」
 綺麗にシーフのスキルツリーがお手本のように伸びているが、ポイントが余っている。

『会心の一撃』をポイントを消化して取ってやると、勝手に二、三個スキルを覚えたようだな。

「な、なにかしましたか?」
「まぁな、これで少しは役立つだろ?」
「えー、なんですかそれ!そんな言い方しないでくださいよー!」
「いいの!それよりどうなの?」
 リミがネイルに聞くと、
「え、なんだか体が軽くなりました」
「そんだけ?」
「な、何を期待してるんですか?」
「別に、ならいいわよ!」
「なんなんですかぁー!」
 二人を置いて俺はアイラの横に座る。

「またやった?」
「まぁな、斥候としてはいい働きをするはずだよ」
「そう、良かった」
 少しアイラとも繋がりができてると思う。
 手を出さなくてもこう言う繋がりが見えるのはとても嬉しいな。
「ん?」
「どうした?」
「ルシエの機嫌がいいから」
「そうか?そうかもな」
 仲間も増えたし、この調子でダンジョン街まで行ければいいな!

 遠くの空に黒い雲が見えるがまぁ、雨が降るくらいだろうな。

 と思っていたが、次の村で足止めを食らうことになった。
「はぁ、嵐になるなんてね」
「この時期はしょうがないですよ」
「宿があるだけマシ」
「アイラの言う通りだな。馬小屋も頑丈そうだったし、ブラハムも何とか大丈夫だろう」
 何とか入った村の宿屋で一人部屋と四人部屋を借りて今は四人部屋の方に話をしに来ている。

 風と雨の音が激しく、雷まで鳴っている。
 避雷針なんてないのだから落ちたらひとたまりもないだろう。

 俺は自分の部屋に戻り、スキルツリーを見る。中途半端に剣聖と忍者が伸びている。
 だが、この前は忍者のスキルで事なきを得たのだから文句はない。

「やっぱり剣を伸ばすのが一番かな」
 俺は剣聖へと近づく方にスキルツリーを伸ばして行く。
 ボブから奪ったポイントも大きいが、やはり死線をくぐった後はポイントが増えているな。
 しかし今回は本当に危なかったな。
 もうあんな目には会いたくない…だから強くなるしかないな。

 雨戸を閉めているから外は見えないが、雨が打ちつけている。

 まぁ、こんな日は急いでも仕方ないので収納の整理でもして過ごすことにしよう。

 久しぶりに昔の剣を取り出してメンテをしていたり、父からの手紙を取り出して読んでみたりとセンチになっているのかもしれないな。

 まぁ、この雨のせいにしてこうして昔のことを思い出すのも悪くない。

 レビンはちゃんとやっているだろうか?
 王弟の息子としての重圧は体験して初めてわかるものだ。
 もしかしたら俺は逃げたのかもしれない。
 
 そんなことを思っていると“コンコン”とノックされたのでドアを開けるとそこにはアイラが立っていた。

「どうぞ」
 中に招くとコーヒーを淹れる。
「ありがとう」
「いや、この雨だ。少し参ってたのかもしれないから来てくれてちょうど良かったよ」
「フフッ」
 と笑うとコーヒーに口をつける。

「私はあまり喋るのが得意じゃない」
「だな。でも言いたい事は伝わるぞ?」
「そう?嬉しい」
 アイラは抱きついてくる。

 そのままキスをすると、
「私は綺麗じゃないけど、貴方に抱かれたい」
「アイラは綺麗だよ?誰が何と言おうとね」
「もっとはやく出会いたかった」
「そうか…」

 ベッドに押し倒して唇を貪るようにキスをする。
「はぁ、お願い、ルシエでこの身体を上書きして」
「もう君は俺のものだ」
 胸を揉み、下腹部に手を伸ばす。
「あ、あぁ、嬉しい」
 雨の音が二人の声をかき消していくが、俺とアイラの吐息は熱く、果てるまで交わり溶けていく。

「もっと貴方を知りたい」
「あぁ、まだ嵐は過ぎないからゆっくり話をしよう」
 ベッドの中で二人は夢のような話をしていた。

 次の日、起きるともうアイラは居なくなっていた。
 嵐も過ぎ去ったようで、窓を開けると朝日が眩しく地面から昇ってくる雨の匂いが空へと溶けてゆく。

「おはよう」
「アイラ、おはよう」
 はにかんだ笑顔を見せるアイラはもう昔のアイラと違い俺のものだ。
「ふーん、でもアイラなら私も許してるからね」
 リミがにっこり笑って馬車に乗り込む。
「んー…まぁいいですね」
 意味深な言葉を残してネイルが乗り込む。
「…ハハッ」
「フフッ」
 ブラハムも昨日の嵐に負けず今日も元気だ。

「さて、アイラ行こうか!」
「はい」
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