外れスキルと言われたスキルツリーは地球の知識ではチートでした

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第十四話

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「キャアァァァァ!ルシエ!!」

『ワイドガード』
『空蝉の術』

「ガハッ!!な、なぜ?」
 口から血を吐くボブ。
「間に合ったみたいだが…余計なお世話だったか?」
「いえ、兵士長が来てくれて良かったです」
 兵士長がボブの技をガードしてくれた様だが、俺の空蝉も発動した。

 俺はスキルツリーで忍者のスキルを伸ばしていた。ボブが最後の大技を出すのを待っていたのだ。
 これは最後の手段だったんだが成功だ。
 ミスリルソードがボブの背中から胸を貫通している。

「お前の負けだ」
「グッ、ガハッ!こ、こんなところで…」
 ボブは前に倒れミスリルソードは血に濡れている。
「ば、ばかな!ボブさん!!」

「動くな!!ここはもう包囲されている!」
 兵士が中に入ってきていて冒険者達を縛り上げて行く。

「な、何事だ!ここは冒険者ギルドだぞ!」
 ハゲて太った身体を左右に揺らし階段を降りて来る男がいる。
「ギルマスのオースティンだな?領主からのお達しがでてる!お前も共犯の容疑で捕縛する!」
「は?ふ、ふざけるな!ぼ、ボブがやっていたことなんて知らないぞ!!」
 なんて間抜けなギルマスなんだ。
 しかも終わってから出て来るなんてな。

「も、もう!死んだかと思ったじゃないの!」
「寿命が縮む」
 リミとアイラが涙を流しながら抱きついて来る。
「悪かったな、でもありがとう」
 スキル頼りだった、もうこんな賭けのような真似はしたくないな。

「悪いがお前達も一緒に来てくれるか?」
「ん?何故だ?」
「ハハッ、そう怖い顔するな。報奨金やら色々話があるだけだ」
 と言って笑う兵士長はついてこいと身体を反転させる。
 俺は倒れたボブを鑑定するとまだ息がある様なので、ポイントを奪ってから兵士長の後を三人でついて行く。

 兵士長の話では領主に連絡したところ突入の了承を得られたのでギルドに足を踏み入れた瞬間、咄嗟に技を発動させたらしい。
 聞くとやはりナイトのジョブ持ちだった。
 ギリギリのところで助けられた形だ。
 
 ギルマスから受付嬢、冒険者と全員牢屋に入れて話を聞いて行くと、芋蔓式に門兵の名前や街人の名前が出てきたらしい。
 あとはギルマスと受付嬢は死刑は免れないだろう。

 ボブはあの後、ポーションを使ったがダメだったようで死んでしまったようだ。
 

 そして街の領主もカンカンに怒っていてギルド組合を非難し、街の治安を著しく悪化させたとし、賠償金を支払ってもらうそうだ。
 その賠償金の一部が報奨金になると言うことだから一週間は滞在して欲しいとのことだった。

 懸賞金はかかっていなかったのでもちろん無し、のはずだったが領主のポケットマネーから出してくれるらしい。

「これで大金持ちよ?もう旅しなくていいんじゃない?」
「俺は旅を続けるが、リミは辞めるのか?」
「んな!なんでそうなるのよ!一緒にいくわよ!」
「辞めてもいいよ?」
「アイラ!冗談でもやめてよね!」
 まだ三人の旅は終わらないし、俺は旅を続けたい。

 今回の事でギルド組合は冒険者の天罰の水晶による確認を再度徹底し、定期的にそれを行うと言う事だった。
 天罰の水晶に犯罪を判定する力があるかは謎だが、やらないよりはマシだろう。

 領主から呼び出しがかかったのはそれから5日後の事で、三人とも冒険者の格好で兵士長とともに領主の館まで行く。
「さ、三人ともそんなに緊張するなよ」
「そう言う兵士長さんが一番緊張してるわよ?」
「…。何でお前らは緊張しないんだよ!ここは伯爵様の館だぞ!」
「まぁ、ねえ?」
「そうね」
「二人とも俺を見るなよ」
 まぁ、俺らにはそんな事関係ないし、俺も元はそれなりだから緊張はしてもそこまでだしなぁ。

 領主の前に行くと兵士長に従い、膝をつき頭を下げて待つ。
「楽にしていいぞ。それで、今回は大活躍だな」
 顔を上げると俺の中の記憶にある顔だった。
「…ルシェールか?」
「いえ、その名を持つものは死にました。私はルシエです」
「…そうか…それは悪かったな」
「いえ」
 ここの領主は王都にも顔が効くカルア伯爵だった。ルシェールも小さな頃から知っている。
 少し寂しそうなカルア伯爵だったが、
「よし、それでは兵士長ハーネルには勲章を授与する」
「は!」
「後の三人は報奨金、懸賞金合わせて白金貨10枚」
 とかなり多い額のような気がするが受け取る。
「ルシエと言ったな、少し残れ」
「はい」

 俺は応接室に通され、そこで待つ事になった。
「ルシェール、座っていれば良かったのに」
 と入って来たカルア伯爵は俺に昔からの目を向けて喋る。
「いえ、私は平民ですのでそのようなことは」
「ルシェール…いや、ルシエか。まぁ、座れ」
「はい」
 俺は対面に座り、お茶が運ばれて来ると伯爵は二人になるようにしてくれる。

「ルシエ、俺はお前が死んだと聞かされたよ。しかもレビンに殺されてな」
 まぁ、そう言う話になってるしなぁ。
「…その通りです」
「ルシエ…だがお前は生きている。お前の頑張りは俺がよく見て来た!お前さえ良ければ俺の」
「カルア叔父さん…俺は一度死にました。そしてルシエとして今は生きています」
 良くしてもらっていた。
 俺の小さい頃からの憧れだった。
「だから、俺は旅に出ました。何も縛られずに自由な冒険者です」
 カルア叔父さんは悲しい顔をして大声で叫ぶ様に話す。
「スキルなんてナンセンスなんだ!どれだけ頑張ったかが重要なんだ!…お前には苦労をかけたが、やはり俺の目は間違って無かった!」
「そうですね…でも、そのスキルに今回は、いえ、気づいてからは助けられてます」
 俺の外れスキル、『スキルツリー』はチートだからな。

「そうか、お前はスキルを使いこなせたんだな…なら」
「いえ、もう家督はレビンに譲りました。俺は自由にこの世界を生きていきます」
 カルア叔父さんは涙を拭い、
「そうか…世界は広い!お前が活躍するのを応援している」
「ありがとうございます」
 カルア伯爵からは一振りの短剣をもらった。
 紋章のついた短剣だ。
 使うことはないだろうが、叔父さんの気持ちが詰まっている短剣をしっかりと持つ。


 館を出ると二人が待っていた。

「大丈夫?」
 リミが俺の顔を覗き込む。
「あぁ、行こうか」
 俺は笑って答える。
「はい」
 アイラが手を引き街へと戻る。

 自由を選んだ俺だがルシェールの心も忘れてなんかいない。

 大事な人に認められたのだから胸を張ろう。
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