12 / 95
第十二話
しおりを挟む村の宿ではファングボアの肉が食べれると村のみんなが押し寄せて来て、宿の食堂は大賑わいだ。
「自分達の分は自分達で出すって言ってあるから、お肉出して」
「こんなもんか?」
「ありがとう!持って行って来る!」
とリミが肉を持って席を立つ。
俺たちの前には大きなステーキが並ぶ。
「美味そう!」
「いただきます!」
ファングボアのステーキは歯で噛み切れるほど柔らかい。
「美味いなぁ!これはくせになるな!」
「美味しい」
「ソースも香ばしくて美味い!肉も柔らかくていう事ないね!」
ファングボアの肉は大好評だな。
食堂は飲めや歌えの大騒ぎだ。
「兄ちゃん達が倒してくれたんだろ!さすが冒険者だな!」
「まぁな」
「ハハッ!ねぇちゃん達も冒険者なのか?」
「そうよ!でも今回はルシエが一人で倒しちゃったしね」
「まじかよ!すげーな!」
と村の人達とも喋り、いい夜だった。
次の日は朝からファングボアの解体をしてる男達を見ながら出発だ。
「気をつけてなぁ!」
「あぁ」
門兵と別れ街道を進む。
森の中の街道を走っている。
ちょうど昼になろうというところで叫び声が聞こえ、街道をこっちに走って来る女が一人。
「た、助けてぇ!!」
「ん、アイラ!頼むな!」
「分かった」
アイラに御者を任せ、馬車から飛び降り、女が走って来る方に走り出す。
「『パリィ』お前らなんだ?」
男が四人追いかけて来ていたので、先頭の男を弾いて退かせる。
「おっと、お前!邪魔をするつもりか!」
「何があった?」
「そ、そいつらが」
「うっせぇ!お前はいうこと聞いてりゃいいんだよ!」
はぁ、話もまともに出来ないのか?
「わ、私は冒険者になるためについて来たんだ!あんたらの慰め者になるつもりはない!」
と言うことはこいつら昼間からサカっているのかよ。
「街道でサカリがついたのか?」
「う、うるせぇ!お前には関係ないだろう!」
男は顔を真っ赤にして怒っているが、どこかこの森にでも小屋かなんかがあるのだろうな。
「私に任せてよ!」
「リミ?精霊に殺させるのか?」
「流石に手加減するわよ!『来てちょうだいウンディーネ』」
リミが水の精霊を呼び出した。
『なぁに?私にこいつらの相手をしろって?』
美形の人魚が空中を泳ぐ。
「そうよ?気絶させるだけなら簡単でしょ?」
『はぁ、まぁね』
と言って水の玉を四つ掌に浮かべる。
「ふ、ふざけんな!精霊使いなんて相手にしてられるか!」
「に、逃げるぞ」
と言って逃げようとするが時すでに遅し。
「ガボッゴボッ」
四人の口と鼻は水の塊で塞がれると倒れて行く。
『はい、もういいでしょ?』
「ありがとう、ウンディーネ」
ウンディーネは霧散して消えて行った。
「どう?私の精霊は?」
「凄い」
「あぁ、ちゃんと使えるんだな」
「んもぅ!一言多い!サラマンダーの時は初めてだったからしょうがないの!」
まぁ、サラマンダーの時が人間じゃなくてよかったよ。黒焦げになってたからな。
男四人を縛り上げると馬車に積み込む。
「あ、あの!ありがとうございます!私はネイルって言います!」
「ん?俺は何もやってないぞ?やったのはリミだ」
「はい!でも、ありがとうございます」
頭を下げて来るのでどうしようかと思ってたら、
「はいはい!ルシエがかっこいいからってそっちばっかにお礼言ってないで、こっち向きなさいよ!」
「はい!ありがとうございます!」
リミがたまらず出て来るとネイルはリミの方を見てお礼を言う。
「それにしても、コイツらどこでサカろうとしてたんだ?」
「あ、あっちに建物があるって言ってて」
ネイルが言うので少し進んで街道の横を見ると、木々に紛れて建物があるようだな。
「常習犯」
「のようだな。見て来るからここで待っててくれ」
「私も行きます!」
とネイルもついて来るようなので一緒に行く。
建物には鍵がかかっているようなのでドアを蹴破るとそこには縄で縛られた女が三人もいた。
「ひ、酷い!大丈夫ですか!」
走り寄ると手早く縄を切り介抱しているので、俺は建物の中を確認して回る。
「ネイル、これを」
「あ、ありがとうございます!」
服が見つかったのでそれを渡す。
あとはコイツら何処でこんなに溜め込んだのか金貨なんかが袋で三つも出て来た。
「あいつらどっちかと言うと盗賊の方が近いのかもな」
「そ、そうよ…冒険者の格好をした盗賊よ」
着替えた女がそう言う。
「そうか、まぁこんなとこにアジトを持ってるんだからな」
食料や装備なんかも置いてあるし、コイツらだけじゃないのかもな。
女三人は弱っているが、冒険者のようで自分で歩くと言って馬車に戻る。
馬車の中に女三人は座り込むと、
「まだいるわ…こいつらはまだ下っ端よ」
「やっぱりか、街まではどれくらいだ?」
「ここからなら夕方には着くわ」
と別の女が言うので、逃げられる前に急いでギルドに乗り込む事にした。
「その前に食ってないだろ?これを食うといい」
とサンドイッチ擬きを渡す。
「ありがとう、助けてくれて礼もしてなかったわ。本当にありがとう」
三人が口々にお礼を言う。
「馬車のなかでゆっくり食べてくれ、アイラ、代わるよ」
「分かった」
アイラと御者を代わるが動かす前に試しでブラハムを鑑定してみるとブラハムもスキルツリーがあった。
まぁ、人間に比べ少ないがそれでもブラハムはクライズデールと言う品種で、それなりにスキルがある。
ポイントもあるのでパッシブを上げてやる。
と、忘れないうちに縛られた四人の盗賊くずれの冒険者からポイントを奪っておく。
荷車は四人の女を乗せたらいっぱいなので男どもは起こして走らせる。
「じゃあ、出発するから、落ちないようにな?」
「え?ブラハムでしょ?そんな荒い事しないと思うけど?」
「一応だよ、ちょっと飛ばすからな?」
「え、う、うん」
腑に落ちないような顔をしていたが、ブラハムは『健脚10%UP』『体力30%UP』それに『スピードUP』もとれた。いかに大人しい性格のブラハムでも今までと違うからな。
「行くぞブラハム」
『ブルルルル』
最初の一歩目から力強くていつもより機嫌がいいな。
男達は引きずられる形になったが…まぁ、しょうがないから少しスピードを落とすことにした。
「ブラハム、悪いな」
『ブルルル』
アイラがヒールを使って男どもを治して再出発する。
今度は走って着いてきている。
まぁ、まだまだ遠いと思うが、全速力で頑張って貰おうか。
822
お気に入りに追加
1,233
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる