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第九話
しおりを挟むここはエクアルと言う街だ。
流石にまだ隣町だからギルドには顔を出さないでおく。
またいらないイベントが起きても困るしな。
今は二人の買い物に付き合っている。
やはり服が多い。
「ルシエが収納持ってるから買えるのよ?普通はこんなに買えないもの!」
「ルシエ、ありがとう」
「まぁ、いいけど二人は収納覚える気は?」
「「ない」」
「…そっか」
まぁ、ポイントの消費が激しいから取るのはオススメ出来ないな。
と言うかバッグに詰めて俺が収納しているが、本当に全部いるのだろうか?
「ルシエ?なんか言った?」
「いや、なにも?」
よし、聞かない事にしておこう。
「お茶でもしよっか!」
「そうだな。そうしよう」
「分かった」
喫茶店に入ってようやく買い物から離れたので休めるな!
昼時だったのでランチを食べる。
「あ!ここ美味しい!当たりだね!」
「そうだな!美味い!このパスタ」
「ルシエ、あーん」
アイラがオムライスをくれるので食べる。
「あ!ダメよ!抜け駆けは!」
「早い者勝ち」
「??」
「なに自分は関係ないような顔してるのよ!はい!アーン!」
「アーン」
何をそんなに…
って、流石に鈍感じゃないから分かるが、それでも俺はどう接していいか分からないんだが…
二人に腕を組まれて歩きづらいな。
「あ!ねぇ、アクセサリー売ってる!」
「欲しいのか?買えば?」
「違う、買って?」
とアイラが言うので、
「あ、おぉ、そうか!買う買う!」
そう言うことか!
「もう、でもそんなとこがいいんだけどね」
と言って腕を抱かれるが、アイラのほうがデカいんだよな。
まぁ、何がとは言わないが、リミはスレンダーなのだ。
「えへへ」
左手に指輪をつけて嬉しそうに笑うリミ。
「ルシエ、ありがとう」
アイラにはネックレスを買った。着けてからとても大事そうに服の中にしまっていた。
「あはは」
こう言う時は何て言えばいいんだ?
だが、二人からの気持ちは嬉しいし、パーティーとしても楽しく過ごせている。
まぁ、気軽に話せる男友達も欲しくなってきたが、これはルシェールでも昔の俺でもなく、俺になってからの心境の変化なんだな。
さて、3日の休養も終わり、旅立つ。
「あと一週間くらいかな?」
「多分もうちょっとかかると思うよ?」
長めに見ておくと良い、地図なんて無いからな。
馬車はゆっくり南に向かって走る。
アイラも御者をやってくれるから助かっている。
「あ、野営の準備してるわね」
「今日はあそこまで行ったら野営だな」
「分かった」
草原のまだ先の方で他のパーティーが野営をしているのであそこが野営地だろう。
「失礼する。ここは野営地で問題ないだろうか?」
「おう、お前らも冒険者か?ここは野営地だから問題ないぞ。俺らはこっち半分を使うからそっちを使ってくれるか?」
「分かった!ありがたく使わせてもらう」
「おう!俺はラビオンだ。何かあったら言ってくれ」
と大剣を背負っているガタイのいい男が言う。
「俺はルシエだ。よろしく頼む」
馬車を停めるとテントを張り、火を起こす。
その火を使い料理をして行く。
今日は前の街で手に入ったホロホロ鳥の丸焼きにスープにパンだ。
「美味しそう!ねぇ、まだ?」
「まだだ。スープでも飲んでろよ」
「くぅ、美味そうだなぁ」
「ん?どうした?」
こちらの陣営に来たのはラビオンだった。
「そりゃ、こっちが干し肉とパンで我慢してるのに、そんな豪勢な料理を見たら涎が止まらないんだよ」
人懐っこい笑顔のおっさんだなぁ。
「分かった、料理を分けてやるから皿くらい持って来てくれ」
「お!マジか!?やったな!」
ガニ股で走って戻るラビオンはパーティーメンバーを連れて戻って来た。
「ごめんね!ラビオンが図々しくて!」
「アビーだって我慢できない顔してたろ?」
アビーと言うフードの女性が苦笑いで話してくるが、ラビオンがツッコむ。
「ラビオン?それは言わないほうがいいですよ」
「ゲッ!しまったな。あとで小言が」
小柄な体型の男がラビオンに注意する。多分斥候だろう。
「ガハハ!ラビは一言多いからなぁ!」
一番ガタイのでかい男が笑いながら皿を渡してくる。
「ハハッ!良さげなパーティーだな。1匹持って行ってくれ、こっちはまた焼くからな」
「お、おいおい!それじゃ割に合わないだろ!金くらい払わしてくれ」
「金は別にいいよ。それなら旅の話でもしてくれ」
「あはは!それでいいならお安い御用だ!ワルツ、酒を用意してくれ!」
「ガハハ!分かった」
盾役だろうワルツと言う男が酒を持ってくる。
こちらも二羽目を焼きにかかる。
昔の俺なら避けていた宴会のようになってしまったな。
ラビオン達も干し肉などを持って来てこちらで食べる。
「ルシエは料理が上手いな!これは金が取れる味だぞ!」
「ラビオン、褒めても何も出ないぞ?」
「ガハハ!美味い飯に美味い酒があれば、俺はどうでもいい!!」
こちらの二人もアビーと言う魔法使いと話をして盛り上がっていた。
「じゃー、まだお手付き無しなの?こんなに可愛いのに?」
「アビーは褒めるのが上手ね!でもそこがいいのよ?」
「ルシエはそこら辺の男と違う」
「あら、アイラも言うわねぇ」
主に俺の話のようだが聞かなかった事にしよう。
一応酒も買ってあるから樽で出す。
「うぉ!!収納持ちか!だからこんなに料理が出せるんだな!」
「いいなぁ!僕も収納が欲しい!」
と小柄な男が言う、斥候のウリンだ。
斥候に盾、大剣に魔法使いとバランスの取れたパーティーだな。
「これでもBランクパーティーの『ストロミー』って迷宮街ではそれなりなんだぜ?」
「へぇ、俺らも迷宮街に行くつもりだ。何故こんなとこに?」
「護衛依頼の帰りだ。せっかくダンジョンに潜ってたのに、呼び出されちまってな」
と言うラビオンは本当に嫌な顔をしていた。
時間が短く感じるが酒が回って少し酔ってきたな。
「領主の息子かなんかしらないが!俺は奴隷じゃないんだぞぉぉぉ!!!」
「うぉ!急にどうした?」
ラビオンが夜空に向かって叫ぶ。
「まぁ、随分と動かされたからね」
「ガハハ、溜まっておったのだろう」
面白いパーティーだな。
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