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第七話
しおりを挟む宿に部屋をとったので先にアイラに着替えてもらう。リミの服だから少し大きいが、男物の服よりはマシだろう。
「リミ…あんなことされたアイラは大丈夫なのか?」
「ん?あぁ、できてないかってこと?冒険者は避妊魔法を使ってるから問題ないと思うわよ?女冒険者なら必須だからね」
避妊魔法なんてあるのか…いや、ルシェールの知識にも無いな。
「そうなのか…知らなかった」
「まぁ、男は知らなくて当たり前よ?でも女にとっては死活問題だからね」
そりゃそうだな。
ゴブリンなんかは人間を孕ませる類いのモンスターだし、捕まったらやばいからなぁ。
「終わった。服が欲しい。あと杖も」
出て来たアイラはブカブカの服を着ている。
「分かったわ、アイラのものを買いに行きましょう」
物怖じしないアイラは自分の意見をちゃんと言うな。
「お金は後払いで」
「分かってるわよ!ちゃんと働いてよね」
「分かってる」
と言って二人で宿を出て、大通りをスイスイ歩いて行く。俺は後からついて行く。
服屋で待っているとリミが近寄って来て。
「盗賊達から奪った金貨なんかはある?あったらアイラので使いたいんだけど」
「あぁ、あるぞ」
とリミに袋を渡そうとすると、
「は?こんなに溜め込んでたの?…これからは情報共有してね?」
「悪い、言う機会がなかったからな」
リミは必要なお金を袋から取ると、
「とりあえずこんだけあれば足りると思うから、足りなくなったらまたお願いね」
リミは笑顔でそう言うと店の中に戻って行く。
「やっとリミが笑顔になったな」
リミの機嫌が悪かったので少しホッとした。
女の買い物は長いな。
服屋の次は防具屋、武器屋について行きその都度お金は渡している。
リミも一緒になって自分の服なんかを買っているようだ。
アイラは紺のローブの中にベストタイプのレザーアーマーを着込んで、パンツルックにブーツを履いている。独特な着こなし方だな。
今は杖を選んでいる。
躊躇なく水色の魔石のついたウッドスタッフを選んでいた。背丈くらいあるんじゃ無いか?
「これでいい。準備はできた」
「そうか、良かったな」
「うん」
アイラはスタッフを背中に背負うみたいだな。
「ふう、久しぶりに買い物したわ」
リミも武器を新調して新しいロッドになったようだ。
弓は銀の弓があるからと言っているので矢だけ俺の収納に大量に入ってる。
「ルシエは良かったの?」
「まぁ、俺はこれで問題ないぞ」
ミスリルソードは手入れを欠かしてないからな。
3人でギルドに向かう。
誰かが口笛を鳴らし、下品な笑い方をしている。
あまりガラが良くないな。
「はい、買取ですね。あとはカードをお願いします」
受付で大量の素材を売り払う。
「ルシエさんはEランクに昇格です」
受付嬢がそう言うと笑い声が聞こえてくる。
「おい!ルーキー!お前にゃ勿体ねえから俺が女どもとパーティー組んでやるよ!」
どこにでもいるんだな。
「はぁ、断る。大事なパーティーメンバーだからな」
「あ?お前Eランクのくせに生意気だな」
「Eランクだが何か問題でもあるのか?」
強さとランクは必ずしも一致しない。
「おいおい、Eランクごときがデカい口叩いてるぜ!!」
「貴方達!喧嘩は処罰の対象ですよ?」
と受付嬢が言うが、コイツのせいなんだが?
「へいへい、いつも通りだな。おい!外に出るぞ?」
「は?俺がお前の言うことを聞くのか?」
「あ?出ろって言ってんだよ!」
蹴りを避けると建物の外に出る事にする。
「は!なんだ結構動けるじゃないか!」
「ゾロゾロと…男がやることかよ?」
中にいた男達が外に出て囲んでくる。
「あ?お前死んだぞ?」
「それなりにやりそうだから気をつけろよ?」
と頭っぽい優男が口を出す。
「へい、んじゃ金だしな!」
「『エアリアルラッシュ』」
「グアッ!」
「イデェ!」
何人かの腕や足を斬っておく。
「チッ!口だけじゃないみたいだな!『回転斬り』」
「『パリィ』オラッ!」
よく喋るやつは剣を弾いて肩口から剣を振り下ろす。
「グハッ」
男が倒れると周りの奴らは少し退がる。
「まぁ、やるじゃねぇか。いまなら金を置いて行くだけで済ましてやるが?」
「意味が分からないな?全員倒せば良いだけだろ?」
「く、お前ら、やれ!」
「『パリィ』オラァ!」
優男以外が全員参加して来た。
「『ライトニング』」
「「「ウギャアァァァァァ!!」」」
突然の光で目を瞑り開くと男どもが倒れていた。
「はぁ、私達を忘れてもらっては困るわ?」
「そう、パーティーだから」
今のは魔導士のアイラがやったみたいでスタッフを掲げている。
「テメェら卑怯だぞ!」
優男がいうが、
「そっくりそのままお前に返すよ!」
と腕を斬り落とすと泣き叫ぶ。
「ひぃ!いでぇえぇぇ!!」
「俺を殺そうとしたんだ、少しは分かるか?」
「ま、まて!お、俺はこの領主の息子だぞ!こんなことしてタダで済むと思ってるのか!!」
領主かぁ、めんどくさい事になったなぁ。
「はぁ、腕をつけてあげるわ。アイラ」
「分かった」
と言って腕を切り口に押し当てる。
「『ヒール』」
アイラが魔法を唱えると腕がつながったみたいだ。
「グッ!アガッ!お、お前ら覚えとけよ!」
走って逃げて行く領主の息子を見送る。
「はぁ、ったく、領主は俺が何とかするから、お前らはさっさと逃げろ」
と禿げたおっさんがギルドから出て来た。
「あんたは?」
「ここのギルマスだ」
ギルドマスターか、全部終わってから出て来たな。
「なら、受付嬢は?」
「あぁ、ありゃクビだな」
「そうか、もっと早く出てこれなかったのか?」
ギルマスはバツの悪そうな顔をして、
「こっちも色々あるんだ。後は任せてこの街から出て行ったほうがいい」
「…はぁ、分かったわ!さぁ、行くわよ!」
リミが俺の手を引いてその場を後にする。
俺たちは宿に戻り馬車で街を出る。
「はぁ、そうだったわ!盗賊のこともあったのに…まぁ、貴族と関わるよりマシね」
「そう」
リミもアイラもそれでいいみたいだ。
腑に落ちないがそう言うものだと割り切る事にしよう。
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