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第51話

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 職員室にいるのは中村、小早川、鈴木の三人だ。
「宇田先生!今生と和田はダンジョンに行かないんだ!だからソフィアをこっちに入れて欲しい!」
「私も気になってました、三人で休みの日もダンジョンに行く貴方達のことが。ですがどうして中村君は皆から避けられているんですか?」
 中村は口籠ると、
「それはいいからソフィアを」
「よくありません!五美君を置き去りにしたことは知っています!」
 宇田先生は珍しく強い口調だ。
「クッ!なんで先生にまで?」
「私にはSWTOから生徒のことを聞く義務があります。貴方は何故そう自分勝手なのですか?」
「…チッ!もういいよ!」
 中村達が帰ろうとするが、
「待ちなさい!このままだと2年に上がっても卒業出来ませんよ?」
「な!なんでだよ!おかしいだろ!」
「この学校では人間性を見ます。私から貴方に言えることは変わりなさい」
「たかが教師が何偉そうに!イダダダダダ」
 掴みかかる中村を押さえつける宇田先生。

「貴方はここの教師が自己防衛できないと思っているのですか?」
「わ、悪かった!だから離してくれ!!」
 手を離す宇田先生は笑っている。
「暴力には暴力が帰って来ます。貴方もわかっているはずです」
「いたた、…じゃあどうすりゃいいんだ!五美は化け物だし、今生達はダンジョンに行かねーんだよ!」
 
「暴力は暴力で帰って来ます。それは言葉も一緒ですね?あとはどうすればいいのか分かると思います」
「…わかったよ!もう一度誘ってみる。でもそれでも無理な時は」

「もう一度来て下さい」
「わかった」
 と言って職員室から出ていく中村達。


 中村達はその足で今生達を探す。

 今生達がいたのは校舎裏だった。
「は?あーしらになんか用?」
「はぁ、悪かったな。お前らもちゃんとダンジョンにつれてくから」
 中村は宇田先生に言われたように今生達の事も考え、そう告げる。

「は?私らにそんなこと言っていいわけ?」
「あ、愛?!中村ぁ!あーしらにもう構うな!」
 今生は焦っているようだった。

「あ?んだよ!お前らが可哀想だから言ってやってんだろ!あー、まじ損したわ」
「マジムカつくんだけど?謝ったら許してあげる」
 和田は指で地面を指している。
「は?はぁ?なんで俺が謝るんだよ!ふざけんな!」
「愛!ね!もうあーしらと関係ないって?」
「あんたらまじクソみたいなやつね?ほら、かかってきなよ!」
「んだと!このデブが!まじウゼェ!」
「あ?………殺してやる」
「中村!逃げろ!あんた殺されるって!!」
 今生が叫ぶが和田の手は中村に触れる。

「『毒』!!」

「ウグッ、ガァアァァ」
「愛!ヤバいって!殺したらダメ!」
「こいつが死んでも誰も困らないって、んじゃあんたらも」
ロード!!!誰か呼んで来い!急げ!」
 小早川が言うと鈴木は走り出す。

「『帯電』!!」
「イタッ!…あんた、私になにした!英里紗!鞭だしな!!」
 小早川に触ろうとした和田は電気を触ったように手を引っ込める。

「愛!やり過ぎだって!もう辞めよ?」
「あ?アンタも私の敵なの?」
「ち、違うから!でも」
「ほら!早く鞭出せっていってんのよ!」
 和田は今生の髪を掴む。

「わ、わかったから………」
 今生が鞭を出すのを躊躇っている間に小早川は中村を抱き抱え走り去っていく。

「はやくしろ!この鈍臭いな!!」
「イタッ!…愛?ごめんね」
 2人の関係は逆転していた。
「チッ!追いかけるよ!!」
「は、はい」
 2人は走り出す。

「おい。大丈夫か?」
「鈴木!新城シンシロ呼んでこい!教室にまだ居たはず!」
 ナルトとトウマが中村を見てそう言う。

「わ、わかった!『瞬足』」
 鈴木はユニークの『瞬足』を使って教室に向かう。
 鈴木が呼んできたのはナルトとトウマだった。小早川は倒れながら中村を運び、中村は毒に冒され顔色が悪い。
「ゼェ、ゼェ、な、中村、が、んばれよ!」
「どうしてこうなったんだよ?」
「そ、それは」
「いた!追いつくわよ!!」
 遠くから走ってくるのは和田と今生。
「は?和田?」
「いつもと逆じゃねえか?なんだよ?どうしたんだ?」
「あ、アイツがやったんだ!!和田が」
「どう言うことだ?アイツ回復魔法しか使えないだろ?」
「しらねーよ!でも和田が触れたらこうなったんだ」
 小早川はそう言うと怯えたように中村を連れて和田から逃げようとする。

「おーい、和田!何があったか知んねーけど、もうその辺でいいんじゃねぇか?」
 とトウマが走ってくる和田にそう言うと、
「ハァハァハァ、ハァァ………トウマにナルト?なんでここに?」
「ん?呼ばれた?」
 ナルトは不思議そうな顔をしている。
「あ、あんた彼氏にしてやってもいいわよ?」
「へ?」
 さらに不思議そうな顔をするナルト。
「…だから。彼氏になれっての!」
「いや?無理?」
「は?なんでよ!こっちが言ってあげてんのよ!?」
 激昂する和田を前に飄々と、
「ごめん、無理だわ」
 と言ってそっぽを向くナルト。
「じゃあトウマね!彼氏にしてあげる!」
「あ?何言ってんだ?中村がこんな時に?」

「中村なんて死ねばいいのよ!!そんなやつはほっといていいから!」


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