上 下
96 / 104

初級ダンジョン

しおりを挟む

 俺は今防具を撮りに来ている。
「遅くなってすいません」
「いえいえ、いいものができてますよ」
 黒に青のラインの入った革鎧がそこには出来上がっていた。
「着てみてもいいですか?」
「どうぞ、調整しますね」
 調整が要らないくらいピッタリでびっくりした。動きやすいし、防御力もいい方だろう。
「この皮をなめすのがとても大変でしたが綺麗な仕上がりになっております」
「本当にいいものをありがとうございます」
「で、残りの革なんですが」
「あ、要らないんで引き取って下さい」
「いいんですか?ありがとうございます」
 必要ならまた取りに行けばいいからな。

 俺はその足で魔法屋に足を運ぶ。
「出物はあるかい?」
「そうだな、封印の魔法玉と斬撃のスクロールがあるぜ」
「両方もらうよ」
 両方買って宿に戻る。

 今は聖玉作りに専念している。
 さっさと作り上げたいのと、ブレイクを少しでも防げればと思ってのことだ。
 二十日続けて三十個作った。
 そろそろこれも加藤さんと福田さんに届けるか。

「さーて、そろそろ戻るか」
 宿を後にして日本に戻る。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
「アンアン」
「あれ?リアとガンプだけ?」
「二人は爺婆ズに連れて行かれましたけど」
 あぁ、また旅の予定かな?
「そうなんだ。で、リアは何をしてたんだ?」
「掃除ですね。あとガンプと遊んでました」
「あーね、俺は今から加藤さんと福田さんに会ってくるから、その後何処かに行こうか?」
「はい!待ってます」
「アンアン」
 俺は駐屯地に飛んで、加藤さんに会う。

「久しぶりですね」
「そうだね、今日はどうしたんだい?」
「聖玉の呼びができたんで持って来ましたよ」
「おぉ!助かるよ」
「とりあえず十五個です」
 聖玉を十五個取り出して渡す。
「いま聖玉は取り合いになっていたから助かるよ」
「取り合いに?」
「こっちの方に回せとかこっちが先だとかね」
「あぁ、一個しか無かったですもんね」
 持って来てよかったよ。
「小太郎さんのことだからこれからギルドにも持っていくんだろ?」
「そうですね。やっぱり数が足りないですからね」
 それから福田さんのいる岡崎ギルドに飛ぶ。

「小太郎さん!」
「やほー!聖玉持って来たよ」
「よかったです。聖玉待ちがあんなに来てるんですよ」
 見ると老若男女きちんと並んで触っていっている。
「日本人だねー、ちゃんと並んでる」
「まぁ、それだけは有り難いですけどね」
 会議室に案内され、十五個の聖玉を渡して福田さんとも別れる。


「んじゃ二人とどこに行こうかな?」
 北海道か鹿児島かルナディアくらいしかないんだよな。あと東京か、
「東京見学もいいけどガンプをたまには走らせたいからルナディアにするか」
 家に帰るとリアは防具をつけていた。
「あのリアさん?どこに行くつもり?」
「え?ダンジョンではないのですか?」
「たまには気晴らしにルナディアの草原にでもガンプ連れて行ってみようかなー、なんて」
「あ、それなら防具をつけといた方がいいじゃないですか。では行きましょうか!」
 そう言ってリアは腕に絡んでくる。
「アンアン」
「よし、『転移』」

 ルナディア大草原、自由国家の西に広がる草原だ。初級ダンジョンもある。
「アンアン(久しぶりだ)」
「そうか、ここにいるから走って来て良いぞ」
「アンアン(いってくるねー)」
「ははっ!あんなにはしゃいで!来てよかったよ」
「ほんとにそうですね」
 俺とリアは並んで腰を下ろす。少し近い気がするけどな。

 ゆっくりとした時が流れる。
「アンアン!」
「待てコラ!」
 ガンプと男が走って来ている。
「なんだ?行ってくる」
 瞬歩で男の前に立ち塞がると、
「そのフォレストウルフは俺たちが見つけたんだぞ!」
「首輪が見えないのか?テイムしているだろ」
「え?」
「アンアン」
 ほんとに知らなかったみたいだな。
「テイムしたモンスターに攻撃するんならこちらからも手を出させてもらうぞ?」
「そんな、すいません」
「最近初級ダンジョンじゃうまいこと狩れなくて焦っていたんです」
「はぁ、許してやるよ。で?なんで初級なのに狩れないんだ?」
「中のモンスターが狩られすぎてて沸きが遅いんですよ」
「なら中級にでも行けば良いだろ?」
 北西の森に行けば中級ダンジョンがあるはずだ。
「魔の森を通るのでも疲れるのに中級ダンジョンまではとても」
「ならここが中級ダンジョンならいいのか?」
「え?ま、まぁ、この草原ならモンスターも少ないですし、あそこが中級ダンジョンならと思ったりもしましたが」
 なら簡単だな。
「ガンプはリアのとこに戻っておいてくれ」
「アンアン(無理すんなよ)」
「んじゃお前たちはちょっと待ってろ」
「は?何すんだよ?」
「あのダンジョンを中級にする」
 さっさといって終わらせてくるか。

 初級ダンジョンだし、人が多すぎるので下の階層にいくのも疲れる。
「あー、だるいわ」
二十階層あたりでようやく途切れたからすぐに三十階層にいき、ボスを倒して宝箱を取る。
“ゴゴゴゴゴゴ”
 よし、中級ダンジョンになったな。

「おいお前らダンジョンに行ってこいよ」
「本当に中級ダンジョンにしたのか?」
「あぁ、裏技だ」
「ありがてぇ!行くぞお前ら」
「「「おぉー」」」

「あいつら大丈夫かよ。と、それより終わったよー」
「アンアン」
「お疲れ様でした」
 まったくまったり出来損なったな。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:7,113

最愛の人がいるのでさようなら

恋愛 / 完結 24h.ポイント:717pt お気に入り:649

メゾン漆黒〜この町の鐘が鳴る時、誰かが死ぬ。

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

『アラフォー獣医のほっこり奮闘記』

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

公然の主従に秘密の関係

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:2

悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:63

王太子妃候補、のち……

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:2,564

処理中です...