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呪い

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 日本に帰って来た俺は。さっそく彼女の元へ。
「ただいまぁー!」
「おかえりー!」
 ユフィがちゃんと出迎えてくれた。これだけで心が和む。
「爺婆ズは?」
「今日はなんか打ち合わせとかでいないよ」
「んじゃ外に飯でもいくか?」
「やったぁー、俺はこの前食べそびれたハンバーガーが食べたい!」
 そういや、あの時勇者召喚されたんだったな。
「よし、食いに行くか」
「おぉー!」

 二人手を繋いで歩く。
 こんな幸せがあっていいのか?
「くふっ」
「なんだ?」
 いや。幸せだなぁ、なんて言えないよな。
「なんでもない」
「変なやつ。でもたまには二人もいいな」
「だな」
 
 バーガーショップにやってきた。やっぱり混んでいて並んではいる。
 ダブルチーズバーガーセット二つにテリヤキバーガーの単品二つにナゲットセットって、
「食い過ぎじゃね?」
「久しぶりだからな」
「そっか」

 窓際の席で二人並んで食べる。
「うまっ!やっぱうまっ!」
「美味いもん食わしてもらってたろ?」
「これは別腹だ!」
 こいつは高い食い物よりジャンキーな食い物の方が好きそうだからな。

「次はどこ行く?」
「やっぱりダンジョン?」
「なんでダンジョンだよ?もっと楽しいとこいこうぜ」
「他に楽しいとこ?どこかあるのか?」
「んー、ゲーセンとか?」
「じゃーゲーセン!」

 ぬいぐるみをゲットしたり、銃でゾンビを殺したり。あとはプリクラなんて久しぶりにらやった。
「楽しいのぉ!俺知らないものばっかだった!」
「あはは、そうか、やっぱりゲーセンでよかった」
 なにが悲しくてデートでダンジョンにいくんだよ。
 ぬいぐるみをギュッとしているユフィは可愛いじゃないか。

 あぁ、なんでダンジョンのこと考えてんだろ。なんかの中毒症状か?
「コタロー?」
「あぁ、ダンジョン少しだけいくか?」
「うん!行こう!」

 はぁ、ダンジョンバカになっちまった。

 知立ダンジョン 十五階層
「手応えなさすぎー!」
「天弓召喚してみたけど威力ありすぎてここじゃ使えないなぁ」
 ユフィは天弓召喚を試してみたらビームみたいな矢を放ってオーバーキルだ。
「もっと下の階層にいかないとなぁ、ここって中級ダンジョンだっけ?」
「俺が知ってるわけないじゃん」
 たしか中級ダンジョンだったよな。

 いつのまにか手を離して、これじゃデートじゃなくね?

「大丈夫ですか?すごい音がしましたけど」
「あぁ、大丈夫ですよ、それよりここって中級でしたよね?」
「あ、そうっすか、ここは中級ダンジョンですよ」
 助けにきてくれた人に手を振って挨拶。

 ヤベェな俺、なんか笑ってるわ。

「なぁ、ユフィ、今日はここまでにしようぜ」
「ん?俺はいいけど」
「なら決まり!クレープでも食いにいくか!」
「よーし、クレープも食いまくるぞ!」

 早く出ないとな。ダンジョンから。

「あっまーい!クレープならいくらでも食える!」
「な訳ないだろ?食いすぎると太るぞ」
「俺は太らない体質だ」
「そうか?この辺肉ついて来てんじゃねぇ?」
「んん!つまむな馬鹿タレ!」
 
 二人でいると楽しくてしょうがないはずなんだけどなぁ。

「電車は速いなぁ」
 外を見て笑ってるユフィ。
「電車だからな」
「なんだそれ?もっと説明しろよ」
「電車オタクじゃねぇからわからねぇよ」
 二人で笑う。

 家に帰ると爺婆ズが帰って来ていてお土産にクレープをあげると喜んで食っていた。
「なんでも食うな」
「人をそんな目でみるな!馬鹿息子!」
「これが若者の食べるクレープか」
「わしゃ初めて食べたわい」
 爺婆ズは嬉しそう。ユフィも。

 俺は?


「だめだなここも」
 岡崎ダンジョンを攻略してみても楽しくない。
「ルーに聞いてみるか」
『転移』

「あんた呪いにかかってるねぇ」
「は?俺が?いつだよ」
「たまに呪いをかけるモンスターがいるのさ、最近倒したやつに喋る奴はいなかったかい?」
「いた!ドラゴン」
「そいつだね。まぁ白の魔女にでも頼んでやるよ」
 白の魔女ってあの目を瞑ってるメイフィってやつだろ?

「なんか怖えのよあの人」
「まぁ、死の魔女って言われるくらいだからねぇ」
「はぁ、まじかよ。いつくらいになる?」
「はやくても一週間は見てもらわないとね」
「まじかよ、それまでにダンジョン行きたくなったら?」
「行けばいいさ、それで死ぬことはないんだろ?」
「はぁ、どこにいくかが問題だな」
 いまの俺じゃ上級……いや、特級だな。

 帝都にあるはずだから行ってみっか。
「上級ダンジョンを攻略した方のみに」
「上級ダンジョンは攻略したんだが」
「証は取って来ましたか?」
「証?」
「ドロップ品です」
「えーとどれだっけ?半年以上前だからなんの素材だ?」
「アダマンゴーレムの素材ですが」
「あ、これか?」
「上級ダンジョン攻略確認しました。特級ダンジョンは」
 地図を指差して小声で教えてくれる。


 特級ダマルダンジョン 五十階層。
 ウルティマギア……機械仕掛けのモンスター、全てがミスリルで出来ている。
「ただのミスリルゴーレムよりやりにくいな」
 素早い動きで片手が槍、片手が斧になっていて離れていると突きを、近づくと斧で攻撃してくる。
 そして魔法耐性が高いと来ている。
 アスカロンとクラウソラスの二刀流で槍をいなしアスカロンで一太刀、斧を避けクラウソラスで首を刎ねる。
 が、まだ動くか。機械仕掛けだもんな。
「上等上等!いくぜ!」
 とりあえず武器を斬り落とし、バラバラになるまで斬り刻んだらようやく消滅した。
 ドロップ品はミスリルのインゴットや核だ。

「あー。まだまだ暴れたりねぇ感じ?」
 呪いは厄介だな。


 白の魔女の屋敷。

「あら、ルーが来るなんて雨でも降るのかしら?」
「メイフィも冗談を言うようになったのか?」
 広い屋敷の接客室でソファーに座る。
「それで?なんのご用?」
「うちの馬鹿弟子が呪いにかかってな、力を借りたい」
「あら、私の望みは分かってるはずよ?」
「あぁ、望みのものの時を止めてやろう」
「ああ、やっと望みが叶うのね」
「だが悪趣味だぞ?」
「私は『死の魔女』と言われるのが嫌いなの、本当は『無の魔女』なんだから」
 白の魔女は大きく手を広げる。
 
「これでやっと完成するわ、わたしの作品が」
「はぁ、だから仮を作りたくなかったんだ」
 ルーは紅茶に口をつけて一人ゴチる。
「さぁ、来てちょうだい!わたしの作品を完成させて!」
「はいはい」
 メイフィについていくルーはこれから何を見せられるのか分かっていて気分が悪かった。

「これが私の作品!タイトルは無限の苦しみ」
 そこには数えるのも大変な数の魂やらが混在していて一つの絵画のようになっている。
『クロノ・ロブ』
 ルーが唱えると動きが止まりピクリともしなくなった。時を奪ったのだ。
「ああ。最高!最高よ!」
 メイフィは目を開けてその無を一心に見ている。
「こうなったら動かないから、一週間後に私の家に来てくれよ」
「分かったわ、ありがとう」

 あの大量の魂はどこから手に入れたのかなんて野暮なことは聞かない。

 白の魔女メイフィは死を好む魔女だから。

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