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盗賊の村

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 三日の休みはあっという間に終わって、また帝都に向かって旅立つ。
 ユフィは新しい弓を磨いている。
 俺は御者台に乗り馬の扱いを教えてもらっている。
「頭のいい馬ですからちゃんと手綱で指示してやれば動いてくれますよ」
「思ったよりも楽ですね」
 慣れて来るとなかなか馬もいいな。

 休憩を挟んで次は村だ。
「ここはなんもねーぞ?」
 愛想の悪い門兵だ。
「一晩宿をお借りするだけですので」
「なら中に入って村長に挨拶してきな」
 村長に挨拶をして空いてる家を借りる。
「閉鎖的な村ですね」
「居心地悪すぎ」
「まぁ、一日だけですから」  
「警護は万全にしておきますね」

 夜中に少し動きがあったが、夜番をしているのを見て諦めたようだ。
「昨夜はありがとうございました」
「いえ、何も出来ませんですいません」
 何がすいませんだ!よく言えるぜ。
 村を後にすると男が一人走って来る。
「すまねぇ。お強い方だと思うが、妻を助けて下さい!」
「何がなんなんだ?説明からしてくれよ」

 あの村は盗賊がしきってる村で、泊まった客を捕まえては奴隷や下働きをさせているそうだ。
「お願いします。助けてくダセェ!」
 フェイズさんを見ると、
「私は構いませんよ。一日遅れるくらいは」
「……なら助けましょう」
「あ、ありがとうございます」

 男の名はガイ。
 村の西側に馬車とフェイズさんを残して、俺とユフィ、そしてガイの三人で村へ。
「なんだ、ガイか、んでそっちの二人は今日出ていった奴等じゃねぇか、何を企んでウガッ!」
 門兵を殴り飛ばし縄で縛る。
「ここからは素早さ勝負だ」
「村長の家に!」
「了解!」
 村に入り村長の家に突入する。
「な、なんだお前たちは!うわっ!」
 ここでも村長を殴り飛ばして縄で縛る。
「で?どこにいるんだ?」
「ここに地下通路が」
 箪笥をどかすと階段が現れる。
 下に降りると二人の男がいた。

「てめぇらなんだ!おっと」
 殴り飛ばそうとするがけっこうやるらしく、ククリナイフのような剣を手にした。
 こちらもアスカロンを手に対峙する。
 もう一人のほうは大したことなかったようでユフィが、ナイフで制圧済みだ。
「けっ、女にやられて情けねぇ。おら!かかってこい!」
「『グラビティ』」
「なっ!卑怯だ、ぞ」
「卑怯もクソもあるかよ」
 縄で縛り上げ奥に向かうと檻があり、その中に女が五人も捕まっていた。
「ティナ!」
「ガイ!アァァァァ」
 泣き出す女達を解放して、縄で縛り上げた男どもと外に出る。
 村長の家に男を放置して外に出ると、盗賊どもが集まっていた。
「ここから帰れると思っているのか?」
「うるせぇよ。かかってこい」
 結果盗賊は全員で十二名にも及んだ。

「盗賊の処理はガイに任せてもいいか?」
「お、俺に?」
「次の町で憲兵にいってこちらに人を送る。それまでこいつらを見張ってて欲しい」
 連れていくにも時間がかかるし、すべて殺すのも面倒くさい。
 全員を村長の家の檻に縛ったまま入れ込む。ちょっと、いやだいぶ狭くてギチギチだが、知ったことか!
 溜め込んでいたお宝はそこまで良いものはなく、金貨数十枚と酒や食い物ばかりだった。
「んじゃ。あいつらのことよろしく頼むぞ」
「は、はい!ありがとうございました」

 俺はフェイズさんにことの詳細を語り、次の町までいそいだのだった。

 次の町に着いたのはもう日が暮れていた。
「もう門を開けることはできない、朝まで待つんだな」
 門兵はそう言うが話だけでもと隣り村のことを話す。
「すぐに町長に連絡を入れる。中には入れられないがここで夜を明かしてくれ」
 と毛布の差し入れをしてくれた。

 明朝には戦士団が隣り村に向けて出発していった。俺たちは戦士団が戻って来るまで軟禁だ。嘘の報告だったら死罪もあるからな。
「まあ、フェイズさんは軟禁じゃなくてよかったな」
「でも俺らも軟禁しなくても逃げないのに」
「それはしょうがない、休みと思って寝て過ごすだけだ」

 軟禁は早々と解けた。早馬で村の惨状が報告されたらしい。
「この度はありがとうございました。隣り村とは近いこともあり交流はあったのですが、まさか盗賊の根城になっているとは」
 町長まで騙す盗賊が凄いのか、騙されるほうが……。

 無罪放免となった俺たちは少しの金子を貰いフェイズさんと合流した。
「いやぁ、社会勉強になりました」
「俺たちもガイが来なきゃそのまま素通りだったし、ガイの勇気の賜物だよ」
「そうですね。何事も諦めないことですね」

 ガイ達に会うことなくこの町を出る。次の街までさっさと行こう。
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