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武器屋

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 町を出て、また街道をひたすら馬車がはしる。
「次の街は結構遠いので今日中に着ければ良いのですが」
「だから今日は俺らも馬車なんですね」
「少し窮屈かもしれませんが我慢してください」
「おー、早い早い!」
 ユフィは外を見ながら楽しんでいるようだ。
 
 森に入ると散発的にモンスターが出て来るのをユフィが弓で射る。
「ナイス!」
「油断すんなよ」
「はいはーい」
森を抜けると荒野になった。
「もうすぐ街が見えてきます」
 後少しと言うところで後ろからモンスターが追いかけて来る。
「先に行っててくれ」
「「コタロー」さん」
 俺は降りてモンスターと対峙する。虎型のモンスター、サーベルタイガーだ。
「チャチャっと終わらせてやる」
『ガルルルル』
「『グラビティ』なに!」
 重力魔法を避けやがった。サーベルタイガーは右回りに走り俺の周りを駆け巡る。
 飛びかかってくるサーベルタイガーをアスカロンで迎え撃つがそれも避けて肩口を削られる。
「くそっ!なら『サンダーボール』」
 少しなら軌道をずらせるサンダーボールをあてることに成功する。
「らぁ!」
 首を斬ると少し浅かったが、十分だ。
 血が流れ力なく倒れたサーベルタイガーにトドメを刺す。


「間に合うかな」
 サーベルタイガーをアイテムボックスに入れ、走り出す。もう日が暮れかけていた。
「コタローさん!」
 門を開けていてくれたようだ。
「フェイズさん、ありがとうございます」
「あのモンスターは?」
「ちゃんと倒してきましたよ」
「それは良かった。さぁ、宿に向かいましょう」
 ユフィはダンマリだった。
「俺を置いていくなんて!」
「あの時はあれがベストだっただろ?」
「それでも」
「誰かがフェイズさんを守らなきゃならない。お前なら任せられると思ったから俺が出たんだ」
「ゔー……わかった」
 この我儘娘を説得するのはつかれるな。
「さぁ、飯にしよう」
 部屋を出て降りると酒場になっていて、フェイズさんもそこにいた。

「コタローさん!ここ空いてますよ」
「ご一緒しますね」
「何食べようかなー!」
 フェイズさんの席に着く。
「コタローさんが倒したモンスターを売ってくれませんか?」
「え、いいですよ。アイテムボックスに入れてありますけど」
「はい、虎型の獣は皮などが良い値段で売れるんですよ」
「あぁ、それなら買い取って下さい。アイテムボックスにいれといても仕方ないんで」
「喜んでお願いします」

「私は帝都にある商会の息子でして、こうして修行しているんです」
「そうなんですか、てっきり旅がてら行商してるのかと思ってましたよ」
「ならなんで護衛もつけてなかったんだ?」
「信頼できる護衛が見つからなかったのが原因です。これでも商会の跡取りですからやっかみがあるんですよ」
「はあ、世知辛いですね」
「本当に、でもコタローさん達と会えてよかったです。これからも帝都までよろしくお願いします」
「こちらこそ」
「俺に任せとけぇー!」
 ユフィは酔っ払いすぎだ。

 この街は結構大きな街だ。また三日は商いをするらしく、俺たちは暇になってしまった。
「ユフィの弓を探すぞ」
「おお、武器屋だな!」
 聞くところによるとこの街には二つの武器屋があった。大通りに面した大きな武器屋と裏通りにある個人経営の武器屋。
 まずは大通りにある武器屋に行ってみる
「いらっしゃいませ。どのようなものをお探しですか?」
「こいつに会うような弓を探してる」
「ではこちらの弓なんてどうでしょうか?こちらはショートボウで弾きやすく小回りが効きます」
 ユフィは弾いてみるが、
「少し弱いかな、これだと今の弓の方がいいよ」
「んー、そちら様の体格だとこれがウチで扱っているもので最高だと思うのですが」
「ならまた来てみるよ」
 店を出てつぎの店に行ってみる。
「ちわっ!」
 一人のドワーフが出て来る。
「なんじゃ?」
「こいつに合った弓を探してる」
「んじゃこれを弾いてみろ」
 渡してきたのはロングボウ、ユフィの体格だと大きすぎる。が、なんなく弾いてみせる。
「これくらいならちょうど良いけどでかいな」

「ほう、やるもんじゃな。オーダーメイドになるが作ってやる」
「おお、おっちゃんよろしく」
「三日しかここにいないができるか?」
「三日もあれば十分じゃ、料金の心配をしておけよ」
「あぁ、見合う金をちゃんと用意しておくよ」
 ドワーフの親父はさっさと奥に入っていった。

 ユフィはあれから武器屋に毎日顔を出して調整してもらっている。自分の武器だから嬉しくて仕方ないんだろう。
 出来上がったのはコンポジットボウと呼ばれる混成素材で作られた弓だ。
「これならロングボウにも劣らんから嬢ちゃんにピッタリじゃ」
「うん!俺専用の弓だ」
「料金は八十万ゼルじゃ!たまげたろ!」
「んじゃ、これで、釣りはいらないよ」
「白金貨?!これじゃ貰いすぎだぜ」
「良い武器にはちゃんとした対価をってな」
 ちゃんと予備の弦や矢まで用意してくれているのにここでケチる必要はない。
「チッ!ありがたくもらっとくぜ」
「あぁ、良い酒でも飲んでくれ」
「良かったなおっちゃん!」
「ユフィは俺に借金な」
「えー!買ってくれたんじゃないのかよ」
「稼げば良いんだよ、無駄遣いを無くしてな」

 
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