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鍛錬と出国

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 ノサルディに着いた小隊は宿に一泊し、明日は商売をするらしいので明日は休みになった。
「おい!勝負しろ!」
 黄金の爪の一人、多分剣士なんだろう金髪のツンツン頭が木剣を突きつけてきた。
「なーんでお前なんかとやる必要があるんだ?」
「お前は俺達を馬鹿にしてる!」
「ゴブリン程度相手に出来ないなら馬鹿にされても問題ないだろ?」
 よくこの護衛任務を受けられたもんだよ。
「ゴブリンはきちんと倒してるだろ!勝負しろ」
「分かったよ、んじゃ、始め!」
 懐に潜り込んで腹に拳が減り込む。
「うごフッ!」
「はい終わり」
「ゴェッかっはっ……はぁ、ひ、卑怯な」
「卑怯もクソもないだろ?なんならさっさと立てよ」
 金髪野郎は何とか立ち上がると木剣を上段に構えて突進してきた。
「きぇえぇ!」
「声出すな!動きが固い!」
 ただの振り下ろしを半身で避けて腹を蹴り込む。
「かっはっ!」
「もっと鍛錬しろ!」
 はぁ、やっと休みなのになんでこんなガキの相手しないといけないんだよ。
 俺は町に繰り出して魔法屋や道具屋を見て回った。

「兄貴!おはようございます!」
「……誰が兄貴なんだよ?」
「やだなぁ、今日は休みじゃないですか!いい鍛錬日和ですよ」
「頑張れよ」
「待ってください!お願いします!強くなりたいんです」
 はぁ、なんかやな予感しかしない。
「だからって俺に教えを乞うなよ」
「お願いします!」
 背後にはパーティーメンバーが並んでる。

「おら、もっと早く動けよ」
「はい!」
「そこは避けるとこだろ?ちゃんと見て戦え」
「はい!」
「詠唱が遅い!」
「はい!」
 なんで俺は休みなのにこんなことやってんだか。しかも、こいつら年上でやんの。

 やっと昼になって飯を食う。
「俺は絶対冒険者で成り上がるんだ」
 金髪野郎の名前はサンタ。
「私はお金持ちと結婚かなぁ」
 マジシャンのミーナ。茶髪のポニーテールで活発そうな女だ。
「僕はサンタと一緒かな」
 タンクのカンは俺と夜番が一緒だった、ずんぐりした体型の坊主頭。
「私も……です」
 喋りが堪能じゃない弓師のテラは暗めの緑髪のボブだ。
「ならもうちょっと連携とか考えていこうな?俺は忙しいから昼からは付き合わないぞ?」
「「「「えーー」」」」
「いや、付き合う理由がないからな!さっきの復習でもしてろよ」

 なんだかんだで理由をつけて逃げて来た。
「っとに、あ、ポケットさん」
「おぉ、コタロー殿。鍛錬ご苦労様でした」
「見てたんですか?」
「声が聞こえましてね。あの子らは知り合いの子でして、つい護衛を頼んでしまったんですが、思ったより出来が悪かったみたいですね」
 それでこんなレベル違いの護衛なんだな。
「コタロー殿が宜しければ鍛錬してやってください。少しですが色をつけさせて貰いますので」
「はぁ。わかりました。でも期待しないでくださいね」
「わかってます。よろしくお願いしますね」
 請け負ってしまった。

「あ、兄貴」
「やるぞ、お前ら」
 それから扱きに扱いてやった!怪我も回復魔法で治して、すぐにまた訓練。泣いても許してやらなかったら、ちょっとはマシになってきた。
「ウッゴッ!」
「ガハッ!」
「まだまだぁー!」
「もうやめてぇー!」
「お前もやるんだよ!」
「ヘギョっ!」

 アザだらけのサンタ、ミーナ、カン、テラは自然体で護衛ができるようになっている。
 あれから二週間もかけて護衛の合間に訓練したかいがあったな。
「コタロー殿。やり過ぎでは?」
「いや、これでも甘い方ですよ?俺なんかこの倍は扱かれましたから」
「そ、そうですか」
 こちとら三歳から英才教育だっつーの!

 ようやく国境にこれたのはそれから一週間もかかった。まぁ、歩きとさほど変わらないからしょうがない。
「兄貴はどこに向かうんですか?」
「ん?決めてないけど」
「なら一緒に」
「はいかないぞ?俺は一人で動くから。それにお前らはもう大丈夫だろ?」
「「「「あ、兄貴ぃー」」」」
 な、泣かないぞ!俺は決して泣かないぞ!

 帝国側に入る。
「コタロー殿、サンタ達をここまで鍛錬してくれてありがとうございます。これはお礼ですので取っておいて下さい。そしてまた会える日を楽しみにしてます」
「こちらこそありがとうございました」
 護衛任務も終わり、あとはギルドに達成報告をしてようやく自由だ。
 サンタ達は先にギルドに行って達成報告をしている。

「帝国のギルドはどんなんかなぁ?」
 ギルドの看板は変わらない。ギルドの中に入っていくと受付にサンタ達がいた。
「お、もう終わりか?」
「あ、兄貴。俺らはもう済んだんでこれで失礼します」
「おう!頑張れよ!」
「「「「はい」」」」
 何事もなくて良かった。
「俺も達成報告だ」
 報告書を受付に出すと簡単な応答とギルドカードの提示だけで素早く終わった。ついでに金を帝国金貨に変えて貰い、おすすめの宿を聞く。

「いらっしゃい!泊まりで銀貨三枚、朝食付きで銅貨五枚追加だよ」
「んじゃ五日で朝食付き」
「まいど!」
 なかなかいい宿だ。部屋に入るとやっぱどこも似たり寄ったりだな。部屋の鍵をかけると、
『転移』
 日本の自宅にやって来た。今日は親父の手紙もないようだ。

「あー、やっぱこっちが俺の家って感じだ」
 すぐに風呂場に行って風呂を沸かす。
「ッカァー!染みるねぇ」
 ビールを開けてテレビをつける。テレビではダンジョンのニュースをやっていて、いまが夕方なのが分かる。
「なんだ夕方かよ。買い物は明日だな」
 時間差があるからもうちょい宿も延長しておこう。
 明日は金を下ろしてからだな。髪もそろそろ切らないとロン毛になってきてるし。下着も買わないともうボロボロになって来ている。あー、金かかるなぁ。
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