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王都

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 ハーヴィダンジョン    二十五層

「ほら、さっさと片付ける!」
「どうやってこんな大量のモンスターをやるのよ!」
「魔法も使えよ!『サイクロン』こんな感じだ!」
 俺は大量の軍隊アリを倒していく。
「貴方が非常識なのよ!」
「俺の師匠はこんなもんじゃなかったぞ?」
 ルーの扱きは酷かった。
「やってやるわよ!『ウインドカッター』」
「私もやりますぞ!『ダークボール』」
 ようやく本気で戦い始めたか。
 シャインは盾を上手く扱って軍隊アリを押し込んで、そこをサザンさんが上手いこと手助けしてる感じだな。

 ハーヴィダンジョン   三十階層

クイーンアント……女王アリ、軍隊アリを従えている。軍隊アリは倒されると補充される。
「おりゃああ」
 シャインがどんどん倒していくが軍隊アリを産むクイーンアントには届かない。
「一気にクイーンにトドメを刺すか、持久戦で立ち回るかだぞ」
「一気に決める!『サイクロン』」
「お嬢様!いきます!」
 軍隊アリを蹴散らしたシャインの後ろからサザンさんがクイーンアントの首を刎ねる。
 残りの軍隊アリを殲滅して終了した。


 宿に戻るといつものように俺の部屋に集まってくる。
「今日はなに?」
「はぁ、今日は牛丼でいいだろ」
 毎日こんな感じだ。
「美味い!柔らかいお肉とこの味がたまらないわ」
「っカァー!この一杯の為に生きております」
 サザンさんもビールの虜だな。

 食べ終わると食休みにいつもはだべっているが、俺はシャインとサザンさんの訓練もそろそろいいと思っている。これだけ動ければそう簡単に死ぬことはないだろう。
「二人とも明日からは二人でダンジョンに潜ってくれ」

「え?」
「もう俺は必要じゃないってことだ。サザンさんと二人でもレベル上げはやっていけるだろ?それに俺もそこまで暇じゃないんだよ」

 俺は俺で何があるかわからないし、日本に帰るまでにもっと強くなっていなければな。
「そ、そうよね」
「…お嬢様」
「そんな今生の別れであるまいし、いつでも会いにこれるんだ」
 だから泣かないでくれよ。

「うん!絶対会いに来てよ?」
「そうですぞ?私達はいつでもまっていますので」
「強くなった二人を見にくるし、俺もまだまだ強くなるしな」
 シャインもサザンさんも強くなってる姿を見せて欲しい。

「お願いがあるの!」
 急にシャインが正座をして俺に向かう。チューか?チューなのか?
「ハンバーガーを分けて欲しいの!」
「え?!」
「私はビールをお願いします」
「はぁ?」
 言うに事欠いて餌を強請って来るか?

「「「あはははは」」」
「いいよ、好きなだけやるよ」
 また補充しに日本に戻らなきゃな。
「サザン!アイテムボックスに入れておきなさいね」
「承知しました!」
 二人とも笑ってる。ノリがいいなぁ。

「無くなったらギルドに伝言しておくからちゃんとギルドに顔出すようにしてね」
「そんなしょっちゅう呼び出すなよ!」
「分かってるわよ!冗談よ」
「あはは、まぁ二人とも頑張れよ」

「「はい!」」


 二人と別れた俺はバレンシアから北西にある王都に訪れていた。
「へぇ、結構栄えてるなぁ」
 流石王都だけあって城壁も三重になっていて市民街、貴族街、王城となっている。広大な街が広がっている市民街に俺は宿をとった。

「宿が一泊八千ルビーなんかしやがる。もっと安いとこに変えたいなぁ」
 宿はどこもいっぱいで空いてるところがこんな高いとこしかなかった。
「王都だからしかたないか。まずはギルドにでもいってみるか」
 
 ギルドは王都にしてはこじんまりしていてすこし唖然としてしまった。
「王都のギルドはこんなに小さいのはなんでだ?」
 受付のおばちゃんに聞いてみると、俺が今いるギルドは『王都ギルド西支部』で王都西は初心者が行くような草原が広がっている。だから人気がないのでこのような建物でも十分らしい。人気のギルドは南側にある『王都ギルド本部』らしい。

「んじゃそっち側が人気の訳は?」
「そりゃ中堅所が一番狩りやすい南の『魔の森』があるし、でかい建物だからね。上級者は『ギルド北支部』にいてダンジョン勢が多い、ここも大きな建物だよ」
 北と南が人気のスポットか、んじゃ東は?
「東は行かない方がいいよ、貧民街がある東側は治安が悪いからねぇ」
 そういうことか、貧民街なんかあるんだな。

 ならそっち側の宿は安いだろう。逆の西側から入ってきたから治安が良くて宿も高いところしか空いてなかったのか。

「でも新人がここに来るんなら東地区はどうなんだ?」
「東地区は貧民が小銭稼ぎできるように清掃が主な依頼が多いよ。でも外はやっぱりモンスターがなかなか多いから貧民街の人間は稼げないだろうね。東地区のモンスター依頼は『本部』のほうにいくようになってるしね」

 それじゃ貧民街の人は抜け出せないじゃないか。
「アレク様がいた時はまだ貧民街も良かったんだけどねぇ」
「アレクってアレクダンジョンのアレク?」
「こら!様をつけなさい、アレク様は貧民街のことをどうにかしたくて、それまでボロ小屋だった『ギルド東支部』を立て直し、何人も有名な冒険者を育てたんだよ」
 おばちゃんは涙を滲ませながら話す。
「それなのに育った冒険者はアレク様が居なくなったら自分らでギルドに楯突いて、ギルドの真似事をするようになっちまった」
「へぇ、そりゃ大変だな」
「東地区のギルドはもうまともに機能してないだろうね」

 適当におばちゃんの話を打ち切って西ギルドを後にする。

「さて、今日はこっちに宿とったからこっち側を散策するか」
 気を取り直し武器、防具屋を見て回るがパッとしない。魔法屋を探して街をぶらつき、ようやく見つけることができた。
「ちわっ、いいの入ってる?」
 カウンターにいる男に声を掛ける。
「あん?最近はいいのはないなぁ。ウチであつかってるのはレギュラーの魔法玉と回復くらいだ」
 レギュラーとは火水風土の四大魔法と呼ばれる定番の魔法だ。
「そっか、それは残念」
「変わった魔法が欲しけりゃ東地区にいきな。あそこは変わり種しか置いてないからな」
「えぇー、治安が悪いんでしょ?」
「まぁな、でも闇ギルドが仕切ってるからそこまではわるくないさ」
 闇ギルドねぇ。
「その闇ギルドは大丈夫なのか?」
「なにが大丈夫かしらないが、実質仕切ってるのはギルド支部じゃなくてあいつら闇ギルドだからな」

 へぇ、ギルドじゃ聞けない訳だな。
「んじゃそっちにいってみるよ。ありがとな」
「おう!まぁ気をつけてな」
 
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