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世界

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 まぁ、最後は勇者らしく死んだので弔ってあげる。ダンジョンの中だけどな。
 そして33階層に降りた俺たちの前にはまた勇者が居た。こんどは平民を連れた勇者だ。
「何をしているすぐに離れるんだそいつは魔王!」
「はあ?また勇者?何人いたの?」
「五人だ、今は4人になったか」
「は?なぜお前は平気な顔で魔王の横にいる?お前も魔王の一味か?」
 女の勇者は平民を守りながら戦う姿勢だが、なにを言っても聞かないのかな?
「ここはどこだと思う?」
「な、ダンジョンだろ?」
「じゃあ、ダンジョン変動が起きた、そして別の世界に繋がったぞ」
「そ、そんな!じゃあここは」
「はい、あなた方のいたルバリオル大陸じゃありません」
 ざわざわとしている。
「おちつけ、それでは何か?ここはなんと言う国だ?」
「日本という島国ですね」
「それはまことか」
「本当!」
 ミスティが幻術を解いて耳を見せる。
「な、エルフだと」
「あなた方は変動に巻き込まれてこちらの世界に来た」
 ミスティはまた幻術で耳を隠す。
「な、ならなぜここに魔王がいる!」
「あなた方の世界では魔王=魔物の王なのだろうけど、聞く耳はある?」
 女勇者は警戒を解かない。
「なんだ?」
「魔法国家の王様を魔王と呼んでいたんじゃないか?」
「魔法国家?そんなのは知らん」
 やはりな、
「知らなくてもあった!魔法国家で民も皆楽しく暮らしておったのじゃ!!」
 サーシャは涙を流して叫ぶ。
「な、じゃあ何故我々は?」
「騙されたんだろ?」
「な!」
「この世界はいろんな国がある。それも多くの国がな」
「一つの国ではないのか?」
 なんだよ一つの国って、
「だから言ってるだろ?あんたの世界にも他の国があったんだよ、魔法国家と言う国が」
「では私達は」
「そう、騙されて国を奪ったんだ。ただの戦争だな」
「そんな、勇者としてここまで生きてきたのに」
 剣を落とし泣きながら話す女勇者。
「まぁ、外に出てみれば違いがわかるはずだ!それから謝罪でもなんでもすれば良い」
「わ。分かった」
 女勇者は剣を収めると平民に今から外に出ると伝える。
「サーシャもそれで良いか?」
「八つ裂きにしたいところだがそれで良い。コイツらも騙されていたようだしな」
 サーシャは我慢してくれていた。平民の数は三十名ほどで女子供もいる。
「じゃあ、俺たちで道を作るからついてきて」
 俺が言うと、
「私も戦える」
「いいから着いてこい!」
 サーシャがブチ切れるが、
「わかった」
 と素直にいうことを聞いてくれるようだ。
 33階層だからもうそのまま降りることにした。三人で手分けして道を探すとすぐに見つかった。

 34階層も同じようにしてマッピングを忘れずに道を探すとさほど時間もかからずに階段を見つける。35階層、瞬殺したボスのドロップを拾って宝箱を開けるとバッグと金貨35枚が入っていた。そして皆がボードに触って  1階層に戻る。
 全員を連れてギルドに行き別室を使わせてもらう。
「ここは?」
「ここはギルドの別室だ、ギルドはなかったのか?」
「あったが、こんなに綺麗なところではなかった」
「ここじゃこれが普通だ」
 女勇者も平民も怯えている。
「持ってきましたよ、世界地図」
「ありがとうございます。あと、避難民の処置もお願いしますね」
「了解しました」
 と出て行った今野さんを横目に見て、女勇者に世界地図を広げてみせる。
「これがこの世界だ」
「これが?日本はここだろ?いや、こっちか?」
「日本はここだ!」
 と日本を指差してやる。
「う、うそだ!こんな小さなわけないだろ?」
「これが本当の世界だ!お前は世界を知らなすぎるんだ」
「嘘だ。こんな小さな国でこんな」
 女勇者は涙を流しながら見ている。
「本当にこんなに小さな国なのか?」
 サーシャが尋ねる。
「ほんとうだとも、世界は広いんだ。自分達だけの国を持っていたらさぞ世界は狭かっただろうな」
「そうか。私達は小さな世界で戦っていたのか」
 サーシャも女勇者もミスティまで固まってしまった。
「わかったか?自分はもしかしたら別の国を襲っていただけかも知れないと?」
 女勇者は頷きサーシャに向き合うと土下座して謝った。
「知らぬこととは言え貴女に、貴女の国に攻撃をしてしまった。すいませんでした」
「よい。終わったことじゃ。我も世界がこんなに広いとは思うておらんかった」
 サーシャは世界地図をみている。
「ここはどこだ?」
「あぁ、アメリカだな」
「ここは?」
「そこは中国だ」
「そ、そうか。全てに国の名前があるのだな」
「当たり前だ、この世界の人口は八十億以上だぞ?お前たちの国がどれくらいかわからないけどな」
「は。八十億」
「はは、桁が違うな」

 女勇者と平民はこのあとホテルに泊まり、国からの援助を受ける手筈になっているらしい。
「さあて、家に帰ろう」
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