悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

文字の大きさ
上 下
103 / 114
聖ブルノア魔術学園編

第78話 我が妹、弟たちよ

しおりを挟む
 入学して1週間ほど経った頃、ダリアとアルベルトの周りはより一層騒がしくなっていた。

「ダリア様いつ見てもお美しいですわ。あの憂いに帯びた目、あの目と合うと思うとため息が零れて止みません!」

「ご覧になって!読書なさってるダリア様の元にアルベルト様が!」

(本を読んでるだけでこの騒ぎ…)

「おい、そろそろ夕食の時間だぞ。日が暮れ始めているのが見えないのか?」

 読んでる本に指をかけて手前に倒すアルベルトに無表情に見上げるダリア。

「ほんとだ……」

「少しは休め、お前は頭を働かせすぎだ。」

「殿下にお気遣い頂けるなんて身に余る光栄です。」

「茶化すな。本気で言ってるんだぞ。兄上からも手紙で言われたんだ、お前を休ませるようにと。」

「ベルファ殿下が?」

「あぁ、あちらではアメリア嬢の神殿籠もりが遂に始まるそうだ。」

 ダリアは本を閉じるとその上で手を組み、そのようだね と言った。

「心配じゃないのか?」

「心配である、だが。あそこは入学を酷く嫌がった者に護らせている。何かあればすぐに知らせるようにとも。それにアメリアはしっかりしているからね、さほど心配はしていないよ。それに私たちが留守の間はヒナが公爵家の令嬢として茶会やサロンに顔を出す手筈だから問題ないよ。」

「俺は時々お前と同い年であることを忘れるよ。」

「ふふっそれは褒め言葉として受け取っておくよ。それよりカリム殿下の話を最近あまり聞かないが何かあったのかい?」

アルベルトは少し嫌な顔をすると「場所を変えるぞ」とダリアを連れて教室を出た。
廊下を歩きながらアルベルトの顔を覗いてみるものの表情は変わらない。
誰もいない教室を見つけるとアルベルトは入っていく。
ダリアは付き添ってきたリアーナに外で見張るように言い付けると、続いて部屋に入る。

「なんだい?随分と警戒するじゃないか。」

ダリアは指を鳴らして防音魔法を部屋にかけ、アルベルトは髪を片手で乱しながら口を開く。

「……実はカリムが襲われたんだ。」

「……暗殺か。」

「あぁ、アヤ側妃もだ。」

アルベルトはダリアの助言もあってかカリムの面倒を見るようになっていた。
自分が感じていた寂しさを弟にも与えてはならないとダリアに言われ、少しづつではあるが交流するようになったのだ。
そんなカリムに少なからず情が芽生えたのだろう。
今回の暗殺未遂事件はアルベルトにとって堪えるものだった。

「たしか、カリム殿下の護衛は。」

「王国騎士団だ。」

アルベルトは入学前信頼しているアストルム騎士団にカリムたちの護衛を任せたいと願い出たが王国騎士団がそれを許さなかった。
アストルム騎士団のトップふたりがこの度入学となり騎士団としての行動を禁じられているため残りの騎士たちだけでは不十分だとし適切ではないと却下したのだ。

「お前の騎士たちなら守れたはずだ。ヤツらはカリムが側室の子供だからと手を抜いたのだろうな!」

ここまで怒りに身を任せているアルベルトを初めて見たダリアは顎を手で弄りながら思案をめぐらせた。

そしてアルベルトにひとつの方法を提案してせた。



𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌃


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

悪妃の愛娘

りーさん
恋愛
 私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。  その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。  そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!  いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!  こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。  あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...