99 / 114
聖ブルノア魔術学園編
第75話 甘い蜜
しおりを挟む
授業が終わるとアルベルトとダリアを遠巻きに見ながらソワソワしている生徒が沢山居た。
この機会に学園内のトップ2にとりいれようと皆様子を伺っているのだ。
そんなときに教室の外からアルマが甘い声でダリアの名を呼ぶ。
「ダリアさまぁ~」
その声でダリアに話しかけようと様子を伺っていた令嬢たちが悔しそうに表情を歪め近寄ろうとする足を止めた。
「このアルマ、ダリア様とは別のクラスだなんて許せませんわ!」
「アルマ、君は侍女は連れていないの?一応は君も公女と呼ばれる立場の女性だろう?」
「わたくしはダリア様がお傍にいらっしゃればそれで良いのです。」
にこりと微笑むアルマに「やれやれ」と困り笑顔で返す。
その様子に周りの令嬢が陰口を叩き始めたがアルマは気にする様子もなくダリアに話しかけ続けていた。
(こうしてみるとアルマは強いな。彼女の両親は気に入らないが個人的にはアルマが気に入っている自分がいる。同じ公爵家であるが故にこうして気を使わずに話せるのはとても楽だ。)
「ダリア様はいかがですか?お部屋のご様子は、わたくしはまぁまぁといった……」
ダリアはアルマの頬を曲げた人差し指で軽く触れると優しい笑顔で話した。
「せっかく身分も立場も同じなんだ。」
(この数年、アルマは私の傍を離れなかった。)
「だから、ただダリアと。」
(父の命令通り私に近づきしたたかに情報を集めている。油断出来ない令嬢ではあるが、味方にいたら頼もしい人材だ。)
「そう呼んでくれないか?」
(この子が望む、憧れの姿のダリアでいる限り有利にことが進むのだろうか。)
ダリアの言葉に一瞬驚いているとすぐに笑顔で「はい!」と答えた。
次の授業が始まるためアルマが教室を離れるとすれ違いざまに鋭い言葉が耳に飛び込んできた。
「ダリア様と敵対している家名の分際で。あの方と懇意にするなど。」
アルマはピタリと動きを止めると言葉を発した主である令嬢に嘲笑しながら目を合わせ。
「近づけもしない雑魚が、口を開かないでいただける?」
令嬢は恐怖のあまりその場を青ざめながら走り去って言ってしまった。
その背中を眺めながら頬を赤らめて自身の体を腕で抱きしめる。
「んふふ、わたくしたちがただの仲良しに見えているのなら相手にする価値もありませんわね?あの方はずっとわたくしを警戒しておいでなのに。その鋭い瞳を緩めることなく見張っておられもののその合間に見せる少しの本音とわたくしへの期待はまるで甘い蜜のようにわたくしを誘惑する。こんな関係を築けるのは殿下でもヒナ嬢でもない。このアルマだけ。」
アルマは笑顔のまま表情を歪ませると拳を強く握りしめる。
「第3王子のパーティで10にも満たない小娘にしてやられるとは、我が両親ながらに情けなくて泣けてきますわ。最初からわたくしを使えばよろしかったのに。そしたらもっと濃くて甘い毒をあの方に味わっていただけましたのに。」
弧を描くように引き上げられた口の端は笑みを浮かべていた。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
この機会に学園内のトップ2にとりいれようと皆様子を伺っているのだ。
そんなときに教室の外からアルマが甘い声でダリアの名を呼ぶ。
「ダリアさまぁ~」
その声でダリアに話しかけようと様子を伺っていた令嬢たちが悔しそうに表情を歪め近寄ろうとする足を止めた。
「このアルマ、ダリア様とは別のクラスだなんて許せませんわ!」
「アルマ、君は侍女は連れていないの?一応は君も公女と呼ばれる立場の女性だろう?」
「わたくしはダリア様がお傍にいらっしゃればそれで良いのです。」
にこりと微笑むアルマに「やれやれ」と困り笑顔で返す。
その様子に周りの令嬢が陰口を叩き始めたがアルマは気にする様子もなくダリアに話しかけ続けていた。
(こうしてみるとアルマは強いな。彼女の両親は気に入らないが個人的にはアルマが気に入っている自分がいる。同じ公爵家であるが故にこうして気を使わずに話せるのはとても楽だ。)
「ダリア様はいかがですか?お部屋のご様子は、わたくしはまぁまぁといった……」
ダリアはアルマの頬を曲げた人差し指で軽く触れると優しい笑顔で話した。
「せっかく身分も立場も同じなんだ。」
(この数年、アルマは私の傍を離れなかった。)
「だから、ただダリアと。」
(父の命令通り私に近づきしたたかに情報を集めている。油断出来ない令嬢ではあるが、味方にいたら頼もしい人材だ。)
「そう呼んでくれないか?」
(この子が望む、憧れの姿のダリアでいる限り有利にことが進むのだろうか。)
ダリアの言葉に一瞬驚いているとすぐに笑顔で「はい!」と答えた。
次の授業が始まるためアルマが教室を離れるとすれ違いざまに鋭い言葉が耳に飛び込んできた。
「ダリア様と敵対している家名の分際で。あの方と懇意にするなど。」
アルマはピタリと動きを止めると言葉を発した主である令嬢に嘲笑しながら目を合わせ。
「近づけもしない雑魚が、口を開かないでいただける?」
令嬢は恐怖のあまりその場を青ざめながら走り去って言ってしまった。
その背中を眺めながら頬を赤らめて自身の体を腕で抱きしめる。
「んふふ、わたくしたちがただの仲良しに見えているのなら相手にする価値もありませんわね?あの方はずっとわたくしを警戒しておいでなのに。その鋭い瞳を緩めることなく見張っておられもののその合間に見せる少しの本音とわたくしへの期待はまるで甘い蜜のようにわたくしを誘惑する。こんな関係を築けるのは殿下でもヒナ嬢でもない。このアルマだけ。」
アルマは笑顔のまま表情を歪ませると拳を強く握りしめる。
「第3王子のパーティで10にも満たない小娘にしてやられるとは、我が両親ながらに情けなくて泣けてきますわ。最初からわたくしを使えばよろしかったのに。そしたらもっと濃くて甘い毒をあの方に味わっていただけましたのに。」
弧を描くように引き上げられた口の端は笑みを浮かべていた。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
20
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました
山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。
でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。
そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。
長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。
脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、
「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」
「なりすましヒロインの娘」
と同じ世界です。
このお話は小説家になろうにも投稿しています
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる