悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

文字の大きさ
上 下
89 / 114
青年編

第66話 魔物

しおりを挟む
 暗殺者による襲撃を見事に退けたダリアはその褒美として新しい領地を所望した。

 クロウリー領から少し北に離れたクレバンスという土地だった。
 まだ未開拓で荒れ果てている土地を所望し、国王も困惑していたがベルメールでの活躍もあってか許可が降りた。
 そして正式にアルベルトの護衛の任も命じられることとなる。


「アルベルト殿下の護衛の任を命じられたというのに直後早々お忍びで街に出るなど何をお考えなのですか公女!」

キースの怒声がダリアの頭の中で鐘の音のように響き、うんざりした顔を向けるとキースの眉間はさらに険しくなる。
隣に立っているリアーナは苦笑いを浮かべながら黙っていた。

「これからうんと忙しくなるんだから少しくらい羽を伸ばしたっていいじゃないか。」

「暗殺者に襲われたことをお忘れですか?」

「私はそんなに弱くないよ?それにリアーナも来てくれるし。」

「ですが!」

「大丈夫、行くのはアルデン村だ。」

「アルデン村?ですがあの村は!」

キースの言葉をリアーナが止める。

「報告書を見た殿下がこちらの村に赴くことを所望していらっしゃいました。」

「、、、、、」

まだ不服そうなキースに一枚の書類を手渡すと優しく微笑みながら頼み事を1つキースにした。

「クレバンスを陛下に所望したのは絶対的安全な拠点を得るため。騎士団は団員数が増えつつある。戦場から帰る場所が必要だ。そして私の庇護下に置いた者たちが逃げ込める場所がね。」

キースはしばらく書類に目を通し沈黙するとダリアに敬礼し部屋を後にした。

「ダリア様、今のは少々失礼かと。咎めて参りましょうか?」

不安そうに言うリアーナにダリアがそっと静止した。

「構わないよ。彼の言うことはもっともだ。それに私と殿下を思っての言葉だろう。彼は騎士団の理性だよ。」

「アルデン村への訪問は今回が初めてとなりますが正式に訪問なさらなくてよろしいのですか?」

「あぁ、今殿下の身分を明かしながら訪問するのは避けた方がいい。それに正当な評価というものはお忍びの時の方が聞けるものだよ。」

「かしこまりました。」



【アルデン村】

初めて魔物と交渉を行い、魔物の村への出入りと交流を成功させた村である。
魔物による人間の村への襲撃があると同様に人間による魔物への襲撃があった。
魔物が持つ魔石と丈夫な防具の素材となる魔物の部位を目的としたものだった。
しかし魔物にも知性があり、人間の村へ襲撃しているのはほとんどが知性をなくした魔物によるものだった。
国に存在する冒険者たちはこの素材をギルドに提出して生業としていた。
だがダリアは魔物も交渉、対話を繰り返し罪のない魔物の村を冒険者たちが襲撃していることを知り、クロウリー公爵領内のギルドに許可された魔物以外を討伐することを禁止とした。
そして、今まで魔物の村を襲撃していた冒険者たちを招集し事情聴取を行なった。
その大半は魔物を殺すことを楽しんでおり、ダリアは褒め 報酬を渡すと伝え 襲われた魔物の村や彼らを憎む魔物たちに引き渡した。

その後魔物からも支持を集めつつあるダリアであった。




 パラディーゾ大神殿  最深部





「魔物と契約を交わすとはなんと汚らわしい、、、公爵家の正統な血筋だというのに。やはり闇の魔力を宿りし魂は生まれながらに穢れているのだな。」

「やはりヒナ嬢に文を出したのは妥当だったかもしれませんね。私生児ではありますが属性は問題ないかと、、、」

「ハンっ!嘆かわしいことよ。よもや公爵家から私生児が聖女候補選抜に参加することになるとはな。だが、、、あの小娘よりかはマシかもしれんな。カミュラよ、あとは任せたぞ。」


「お任せ下さい、猊下 げいか







𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

処理中です...