84 / 114
青年編
第62話 旅立ち
しおりを挟む
出発の朝、アメリアは食事が喉を通らず不安などの様々な感情を抱えて身支度を済ませた。
ウンディーネは無表情でアメリアの後ろに仕えている。
そんな彼女にアメリアは前を見据えたまま声をかけるとウンディーネが透き通るような声で返事をする。
「わ、わたくしはここで待っていればいいの?」
「はい、お嬢様。間もなくダリア様がいらっしゃるかと。」
ウンディーネの言葉と共に部屋のドアからノックが聞こえる。
「アメリア?支度はできた?」
ダリアの声に弾くように反応すると部屋のドアが開きシックなドレスに身を包んだダリアが姿を現す。
あまりの美しさにアメリアは言葉を失っていた。
(同じ顔だとしても、こんなに大人っぽく見えるのは夕だからだわ。)
「さぁ、アメリア。心の準備はいいかい?新しい人生の始まりだ。」
城の外に出ると街に続く水路に飾り付けられたゴンドラが浮いていた。
ダリアはアメリアを乗せると自分も乗り込み従者に出発させる。
街に続いていく水路には沢山の花びらが散りばめられており水路脇の街にはたくさんの人々がアメリアとダリアを人目見ようと集まっていた。
「ダリア様がまた才能ある方を養女に迎え入れられたぞ!」
「ヒナ様の姉君になられるそうだ!」
「可愛らしいヒナ様とは違ってダリア様のようにお美しい方ね!」
血筋を慮る国の公爵家とは思えないダリアの行動に平民は感心し、貴族たちは白い目を向けていた。
しかしダリアのおかげで違法薬物の流れ元が割れたのも事実、王室はこれを評価しないわけにはいかなかった。
アメリアは慣れない賛美の声に俯いて顔を赤らめていた。
それに気が付いたダリアは指で顎を持ち上げて上を向かせる。
「これからアウェーに向かうんだ。今のうちにしっかりと覚えておきなさい。貴女を認めている人がちゃんと存在しているのだと。」
「、、、はい。」
ゆったりと流れていくゴンドラはまるでこれから新たな船出に向かうようだった。
ベルメール領の公道に出ると馬車に乗り換え待っていたアストルム騎士団と共にクロウリー領へと歩みを進めた。
表情を曇らせたまま俯くアメリアにダリアは変わらず窓の外を見つめながら淡々と言葉を口にしていく。
「ベルメールは私が最初に作り上げた城だ。いつでも帰ってくればいいさ。」
「わたくしがクロウリー家に帰ってくることであなたが何か言われないかと心配しているのよ?」
アメリアの言葉に沈黙するダリアを更に詰める。
「わたくしより心が強いのかもしれないけれど、それでも傷は残るものなの。」
「ねぇ、ダリア。」
ダリアが夕として語りかけ始めた。
「私はね、ダリア。この世界に転生してもなお、心が満たされたことは一度もない。嬉しいと思ったことも悲しいと思ったことも、、、その瞬間は感じこそすれ、それが本物だと信じることが出来ないんだよ。」
(夕は昔から感情があるように見えて無関心なことが多かった。だからこそ何故わたくしに固執するのかがわからない。いっときの感情でわたくしに慈悲をかけたのならいつかわたくしの手を離してしまうんじゃないだろうか。)
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
ウンディーネは無表情でアメリアの後ろに仕えている。
そんな彼女にアメリアは前を見据えたまま声をかけるとウンディーネが透き通るような声で返事をする。
「わ、わたくしはここで待っていればいいの?」
「はい、お嬢様。間もなくダリア様がいらっしゃるかと。」
ウンディーネの言葉と共に部屋のドアからノックが聞こえる。
「アメリア?支度はできた?」
ダリアの声に弾くように反応すると部屋のドアが開きシックなドレスに身を包んだダリアが姿を現す。
あまりの美しさにアメリアは言葉を失っていた。
(同じ顔だとしても、こんなに大人っぽく見えるのは夕だからだわ。)
「さぁ、アメリア。心の準備はいいかい?新しい人生の始まりだ。」
城の外に出ると街に続く水路に飾り付けられたゴンドラが浮いていた。
ダリアはアメリアを乗せると自分も乗り込み従者に出発させる。
街に続いていく水路には沢山の花びらが散りばめられており水路脇の街にはたくさんの人々がアメリアとダリアを人目見ようと集まっていた。
「ダリア様がまた才能ある方を養女に迎え入れられたぞ!」
「ヒナ様の姉君になられるそうだ!」
「可愛らしいヒナ様とは違ってダリア様のようにお美しい方ね!」
血筋を慮る国の公爵家とは思えないダリアの行動に平民は感心し、貴族たちは白い目を向けていた。
しかしダリアのおかげで違法薬物の流れ元が割れたのも事実、王室はこれを評価しないわけにはいかなかった。
アメリアは慣れない賛美の声に俯いて顔を赤らめていた。
それに気が付いたダリアは指で顎を持ち上げて上を向かせる。
「これからアウェーに向かうんだ。今のうちにしっかりと覚えておきなさい。貴女を認めている人がちゃんと存在しているのだと。」
「、、、はい。」
ゆったりと流れていくゴンドラはまるでこれから新たな船出に向かうようだった。
ベルメール領の公道に出ると馬車に乗り換え待っていたアストルム騎士団と共にクロウリー領へと歩みを進めた。
表情を曇らせたまま俯くアメリアにダリアは変わらず窓の外を見つめながら淡々と言葉を口にしていく。
「ベルメールは私が最初に作り上げた城だ。いつでも帰ってくればいいさ。」
「わたくしがクロウリー家に帰ってくることであなたが何か言われないかと心配しているのよ?」
アメリアの言葉に沈黙するダリアを更に詰める。
「わたくしより心が強いのかもしれないけれど、それでも傷は残るものなの。」
「ねぇ、ダリア。」
ダリアが夕として語りかけ始めた。
「私はね、ダリア。この世界に転生してもなお、心が満たされたことは一度もない。嬉しいと思ったことも悲しいと思ったことも、、、その瞬間は感じこそすれ、それが本物だと信じることが出来ないんだよ。」
(夕は昔から感情があるように見えて無関心なことが多かった。だからこそ何故わたくしに固執するのかがわからない。いっときの感情でわたくしに慈悲をかけたのならいつかわたくしの手を離してしまうんじゃないだろうか。)
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
21
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました
山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。
でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。
そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。
長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。
脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、
「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」
「なりすましヒロインの娘」
と同じ世界です。
このお話は小説家になろうにも投稿しています
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる