悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

文字の大きさ
上 下
46 / 115
アストルム騎士団創立編

第39話 悪役令嬢 権力を振りかざす

しおりを挟む
クロース邸

「お願い致します!伯爵様!どうか、どうか猶予を!あの店を無くしてしまったら生活を送ることが!」

「フンっそんなもの知るかっ!もう2ヶ月も支払いが滞っておる。財産を取り上げられるのは当然のことだろう。」

「どうか、、、息子が病気なのです!薬を、、飲ませてやらないと、、、、」

屋敷の玄関で交わされる会話は30代の平民の男と小太りの派手な格好をした男によるものだった。

「貴様ら平民の事情など知るか!ここは私の領地だ!その領地に住まわせてやっているのにその口の利き方はなんだ!!!」

小太りの男は唾を吐きかけながら平民の男に怒鳴り散らかす。


「いや、貴殿の土地ではないぞ。」

凛とした声に2人が平民の男の背後に視線を向けると黒い岸服を纏った美少年が10人ほど少年達を連れて小太りの男を鋭い視線で見つめていた。

「貴殿はこの土地を私の父から預かり受けているだけに過ぎない。」

少年の言葉に2人の顔は段々と真っ青になっていく。

「この地をお預かりしている方といえば、、、、」

「ま、、、まさか、クロウリー公爵様。」

小太りの男の顔色が真っ青になると少年は口の端をニヤリと上げると


「控えろっ!この方をどなたと心得える!この土地の領主であり、公爵家第一令嬢であらせられるダリア・クロウリー様であるぞ!」

(、、、、この紋所が、、、いや、やめとこう。)

空色の髪の少年が声をはりあげて名前を口にすると平民と小太りの男はその場にひざまつく。

「さて、まずはお初にお目にかかるリンチ・クロース殿。」

「こ、このような辺境な場所まで御足労お掛けしまして!り、、、りりりりリンチ・クロースでございます!」

「この男がリンチ殿に借金をしているとのことか。」

「は、はい!卑しくもこの私から金を巻き上げた挙句に返さないというのです!」

「か、、、返せないのです!税金が異様に高くお店が回らないのです!一日の生活もままならない!」

「こ、公爵令嬢のまえだぞ!言葉を慎め!おい!誰かこの男をつまみ出せ!」

リンチの言葉にクロース邸の使用人が平民の男を乱暴に連れ出していく。

「どうか!どうかお嬢様!ご精査を!お助け下さい!!!」

段々と声が聞こえなくなるとダリアは伏せ目で連れていかれた方角を静かに視線を向ける。


「大変失礼致しました。ダリアお嬢様、この度は領主としての委任誠におめでとうございます。ダリアお嬢様がこの地を治められることを心よりお喜び申し上げます。」

脂汗の男、この男こそがクロース領の代理統治者である リンチ・クロースだ。

「あぁ、そうだな。実にめでたいよ。」

この男とても焦っている。
公爵令嬢が土地を与えられ、主がガエル・クロウリーからダリア・クロウリーとなっただけでさほど変わらないものだと思っていた。
ガエルはこの土地に全くと言っていいほど関心がない。
だからお遊び感覚で与えられた土地に来るだけなのかと思っていたのだ。
しかし実際どうだろうか。

来たのは公爵令嬢とは呼べぬ雄々しい姿のダリア令嬢。
それに控えるは大人の騎士と見劣りしない凛とした騎士見習いたち。
この仰々しい空気はとても和やかとは言えないものだ。

「しかし、なんだな。この港は少し活気が足りないように感じる。どう思う?クロース殿。」

「こ、この土地ではあまり作物が育たないため街としての収入はあまり期待できないかと。ダリア様の後ろ盾さえあればこの街は素晴らしいものになるでしょう!」

「ほぉ、この私の後ろ盾が欲しいと。」

「が、ガエル様はこの街を発展させるために、、、」

リンチの言葉にダリアの視線が鋭く光る。

「一体貴殿の後ろ盾・・・とやらはいくつあるのだろうな?」

「へ?」

「調べによると貴殿は随分と金を溜め込んでいるようだ。暴力団に密輸会社。そしてこの地の民に随分高額な税金をかけているとか。そして、、、公爵家からの公金にも手を出しているな?」



𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌌
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

悪役令嬢は間違えない

スノウ
恋愛
 王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。  その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。  処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。  処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。  しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。  そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。  ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。  ジゼットは決意する。  次は絶対に間違えない。  処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。  そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。   ────────────    毎日20時頃に投稿します。  お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。  

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

処理中です...