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〜幼少期編〜
第8話 悪役令嬢の心変わり
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「アルベルト様、私との婚約を破棄してください。」
私の言葉に王子の表情が一変する。
信じられないとでも言うかのようにコロコロ変わる表情を真剣な眼差しで逸らすことなく見つめていた。
「気を引くだけの幼稚な真似事なら今すぐ辞めろ。」
先ほどとはうってかわり表情がキツくなる。
「どちらかというと私は先程のアルベルト様の言葉の方が何の真似だろうと思いましたよ。」
7歳に凄まれたところで何も怖くない。
これがダリアなら怯えていただろうがこちらは20超えた大人だ。
「この前のお前とは随分違うな。前までなら俺に鬱陶しいくらい引っ付いていただろう?」
こんの生意気なガキがっ!
バカにするように見下すアルベルトに怒りを押えているとなんだがバカバカしく思えてきてしまった。
「、、、、だ。」
「なんだ?」
「滑稽だと言った。」
「なに?」
愛せとは言わない。
叶わぬ恋もあるのだから。
全ての恋が上手くいく訳では無いのだから。
だが、その気持ちを馬鹿にすることは決して許されない。
受け止めた上で誠実に対応すれば少しはダリアの気持ちも救われたのかもしれない。
「今の君の姿は滑稽だと言っているんだ。同時に不快だ。」
「お前!誰に向かって!」
「君も私を好ましく思っていないんだろう?だったら快諾してくれてもいいと思うが?」
アルベルトは酷く驚いた表情で口をパクパクさせるだけで何も言葉が出ないようだった。
「何も今すぐ解消しようと言っている訳では無い。君も、私も、体面というものがあるだろうから。」
ごめんね、ダリア。
君はこの男を愛しているのかもしれない。
だが、この体に私が転生したのはなにか意味があるのだろう。
この転生が君の意思ではないにしても、君はもっと広い世界を見るべきだ。
囚われることなく私を通して世界を見てほしい。
君が命を落とすことがない未来を必ずこの手にしてみせる。
「魔術学校に入学したとき、婚約を解消しよう。」
「誰だ、お前は。話し方や表情がまるで違う。影武者か?」
王子の言葉にフッと笑ってみせると真っ直ぐ王子の瞳を見て口を開く。
「私は、ダリア・クロウリー。クロウリー公爵家の娘だ。」
「では何故いきなりこんなことを言い出す?」
私はこの問い掛けの答えに酷く悩んだ。
疑念しかない王子になんと言えばその場が収まるのか。
白銀に輝く月を見上げながら思い浮かんだ言葉を振り向きながら言って見せた。
「私の心変わりだ。」
この日は記憶を取り戻してから一番清々しい気持ちになることが出来た。
自分でもダリアにこんなに思い入れがあるとは思わなかったが。
6年間共に生きたも同然だ。
無視できるはずがない。
私のやり方でしかないが。
私の勝手な思い込みでしかないが。
この体を任された以上適当など許されない。
全力で処刑エンドを回避してやるっ!!!!
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌃
私の言葉に王子の表情が一変する。
信じられないとでも言うかのようにコロコロ変わる表情を真剣な眼差しで逸らすことなく見つめていた。
「気を引くだけの幼稚な真似事なら今すぐ辞めろ。」
先ほどとはうってかわり表情がキツくなる。
「どちらかというと私は先程のアルベルト様の言葉の方が何の真似だろうと思いましたよ。」
7歳に凄まれたところで何も怖くない。
これがダリアなら怯えていただろうがこちらは20超えた大人だ。
「この前のお前とは随分違うな。前までなら俺に鬱陶しいくらい引っ付いていただろう?」
こんの生意気なガキがっ!
バカにするように見下すアルベルトに怒りを押えているとなんだがバカバカしく思えてきてしまった。
「、、、、だ。」
「なんだ?」
「滑稽だと言った。」
「なに?」
愛せとは言わない。
叶わぬ恋もあるのだから。
全ての恋が上手くいく訳では無いのだから。
だが、その気持ちを馬鹿にすることは決して許されない。
受け止めた上で誠実に対応すれば少しはダリアの気持ちも救われたのかもしれない。
「今の君の姿は滑稽だと言っているんだ。同時に不快だ。」
「お前!誰に向かって!」
「君も私を好ましく思っていないんだろう?だったら快諾してくれてもいいと思うが?」
アルベルトは酷く驚いた表情で口をパクパクさせるだけで何も言葉が出ないようだった。
「何も今すぐ解消しようと言っている訳では無い。君も、私も、体面というものがあるだろうから。」
ごめんね、ダリア。
君はこの男を愛しているのかもしれない。
だが、この体に私が転生したのはなにか意味があるのだろう。
この転生が君の意思ではないにしても、君はもっと広い世界を見るべきだ。
囚われることなく私を通して世界を見てほしい。
君が命を落とすことがない未来を必ずこの手にしてみせる。
「魔術学校に入学したとき、婚約を解消しよう。」
「誰だ、お前は。話し方や表情がまるで違う。影武者か?」
王子の言葉にフッと笑ってみせると真っ直ぐ王子の瞳を見て口を開く。
「私は、ダリア・クロウリー。クロウリー公爵家の娘だ。」
「では何故いきなりこんなことを言い出す?」
私はこの問い掛けの答えに酷く悩んだ。
疑念しかない王子になんと言えばその場が収まるのか。
白銀に輝く月を見上げながら思い浮かんだ言葉を振り向きながら言って見せた。
「私の心変わりだ。」
この日は記憶を取り戻してから一番清々しい気持ちになることが出来た。
自分でもダリアにこんなに思い入れがあるとは思わなかったが。
6年間共に生きたも同然だ。
無視できるはずがない。
私のやり方でしかないが。
私の勝手な思い込みでしかないが。
この体を任された以上適当など許されない。
全力で処刑エンドを回避してやるっ!!!!
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌃
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