悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

文字の大きさ
上 下
8 / 114
〜幼少期編〜

第7話 もう1人の悪役令嬢

しおりを挟む
色んな貴族への挨拶回りも終わり、ようやく落ち着いた頃。
王子の方に視線を送りながらバルコニーへと向かった。
空を見上げるとまん丸の月が屋敷を明るく照らしていた。

あぁ、こんなにゆっくりと月見をするのはいつぶりだろうか。

たしか、、、あの時・・・も。

「ダリア嬢。」

突然声をかけられて弾けるように振り向くといつもの貼り付けたような笑顔で王子が立っていた。

「アルベルト様、お越しいただきありがとうございます。」

「2人きりで会いたいなんてどうしたんだい?」

主人公以外の女の子はみんなこの笑顔に騙されるんだよね。

「アルベルト様にご提案したいことがあってお呼びしました。あと、今は2人だけですから普段通りになさってください。」

いつも私といる時はつまらなそうに何を話しても「あぁ」しか言わない。
ダリアはそんな王子が笑顔になってくれるように、いや笑顔の王子をまた見たいと思って頑張っていた。

子供なりに。

王子も自分に心酔する人間の方が扱いやすいと思ってこの婚約の話を承諾したのだろう。
だが、愛する人を見つけた時。

ダリア・・・は邪魔な存在となった。

愛のためなら何でもすると思ったのだろうか。

ゲームの中の彼はダリアが事件を起こすことを望んでいたのではないだろうか。

記憶を取り戻して自分が処刑エンドを免れるためのことしか考えていなかったが改めてダリア・クロウリーについて考えると彼女もまた慈しまれるべき人なのだ。

彼女の行動は褒められるべきものではない、が。

「それは間違っているよ」と教えてくれる大人がいたのか。

親はもちろん、使用人も怯えるだけではなくこの娘に向き合おうとした人間はいなかったのか。

そう思うと彼女はずっと孤独だった。

6年間、、、たった6年間だけども私はダリア・クロウリーだった。その時の記憶も全てでは無いが覚えている。

彼女が物にあたって怒っている時。

メイドに怒っているわけじゃなかった。

「寂しい」という言葉を口に出来ずに藻掻いていたんだ。

水に溺れる子供のように、声にならない叫び声を上げて。

手足を懸命に動かして、誰かに気づいてもらいたくて。

だけど、そんなことは許されなくて。

誰も理解してくれなくて。

公爵家としてのプライドしか頼るものがなくて。

でも今度は大丈夫。 

私がいるから。

きみの寂しさは私が受け止めるから。

きみが言いたいことは私がハッキリと口に出すから。

だから、、、、、



「アルベルト様、私との婚約を破棄してください。」






もう、一人ぼっちだなんて思わないでくれ。









𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌃




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

悪役令嬢を演じるのは難しい

よしゆき
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したトゥーリ。 推しの幸せの為に悪役令嬢を演じ続けるけれど、結局失敗に終わってしまう話。

気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいました

みゅー
恋愛
『転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈ります』のスピンオフです。 前世から好きだった乙女ゲームに転生したガーネットは、最推しの脇役キャラに猛アタックしていた。が、実はその最推しが隠しキャラだとヒロインから言われ、しかも自分が最推しに嫌われていて、いつの間にか悪役令嬢の立場にあることに気づく……そんなお話です。 同シリーズで『悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい』もあります。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します

シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。 両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。 その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

処理中です...