上 下
87 / 107

83 僕が決めた事

しおりを挟む
 兄様から連絡がいっているかもしれないけど、父様に収穫が無事終わった事とその数を書簡で知らせた。
 父様のお返事はすぐにきて、「お疲れ様」と、昨年の倍以上の収穫になった事に感謝すると書かれていた。

 ルフェリットとシェルバーネの二国の会議は昨年からフィンレーの公爵領で行われるので、ここから先はそれぞれの担当者へお知らせをして、予定通りに話し合いが行われるように調整。勿論そのお知らせも調整も僕が関わる事は無い。
 会議の準備自体はフィンレーが主導で行う事になって、フィンレーの次期当主として、兄様のお仕事になるって聞いているけれど、昨年の経験があるし、公爵領もしっかりとした防御の結界が張られているし、王城のように沢山の人の出入りがあるわけではないから特別に何かをしなければならないような事はないんだよって。
 うん。まぁ、安全対策の事は心配ないと思うから、後はお部屋を整えるとか、お茶やお茶請けをどうするとかそういう事だよね。
 ちなみにシャマル様達は交渉のためにくるから、今年からは交渉が終わるまではフィンレーに来る泊まったり、会議の前に関係者と話をする事も禁じられている。それはルフェリットの交渉を任されている者達も同じ。
 より公正を期すという事になったのだそう。

 このため場所は提供をするけれど、フィンレーは公にはされていない生産者であるグリーンベリーの後ろ盾として交渉のテーブルにはつかず、あくまでもオブザーバーとして出席をする事になる。
 もちろんグリーンベリーは交渉には一切口出しはしない。
 ただ、今後の事についてはきちんとした方向の提示を要求するという権限は持たせるんだって。
 色々難しいけれど、やっぱりフィンレーやグリーンベリーと親戚であるエルグランド公爵家が交渉団にいるというのはルフェリットにとっては一つの懸念事項になってしまうのかな。

 というわけで、今回はシャマル様達が事前にフィンレーに宿泊したり、グリーンベリーを訪れたりする事はないんだ。もちろん親戚だから交渉が終わってきちんと今年の実の振り分けの条約が締結をしたら、今まで通りのお付き合いが出来る。
 日程としては十日に交渉の会議があって、一日で終わるか、二日になるのかは分からないし、数の振り分けだけでなく、実際はマルリカの実をめぐる事件についての続報や新たな事件がないかなどの情報交換もあるし、来年の実をどうするかっていう会議もあるし、シェルバーネの砂漠の改善とか、今後どうしていきたいのかも確認していかないといけない。
 ちなみに僕が参加をするのはここまでだ。

 だけど交渉団を迎える国としてはそれだけではもちろん終わらない。その会議の後に一応っていうのも変だけど、王城での晩餐会も予定されているし、条約文書が出来上がったら調印式もある。
 この調印式は交渉団の長である宰相のニールデン公爵と昨年もいらしたシェルバーネの皇太子が行い、ルフェリット国王と他の公爵家当主、シェルバーネ国王代理として皇太子殿下とエルグランド公爵が見届け人とし、あとは交渉団に入っていた人たちが同席をする。交渉団にはハワード先生も入っているよ。そして護衛も兼ねて? と言われてレイモンド侯爵も入れられている。父様曰く「仲間はずれにはしない」んだそう。
 ちなみに兄様は晩さん会には出席するけれど、調印式は出席出来ない。

 後は色々が終わったシャマル様達が帰国の前にフィンレーを訪れる事になるから、そこでのおもてなしの準備も兄様のお仕事になるみたい。必要な食材とかがあれば用意できますって言ったら、シェフと相談をしておこうって笑っていた。

 というわけで、収穫が終わってマルリカの実をきちんと保管をしたら会議までは僕は通常通りで、会議が終わっても公式な場には出席はしないから、あとはシャマル様達が帰る前にお会いするくらいの予定になる……

「………………」

 僕はマルリカの実が入っているマジックポーチを見て、ため息をついていた。
 一昨日収穫をして今はマジックボックスに入って厳重に保管をされているマルリカの実。
 それとまったく変わらないこのポーチの中に入った僕達がいただいたマルリカの実。
 
 多分、ルシルやトーマス君に聞いたら教えてくれるかもしれないけれど、それもなんだか恥ずかしくて、マルリカの実を使った場合の出産について調べてみたりもした。
 使い方は兄様に任せておけば大丈夫って思っているからいいんだ。だから心配なのはその先の事だ。
 まだ使ってもいないうちにって思うかもしれないけれど、心配っていうか、やっぱり気になるんだもの。

 一般的に子供が生まれてくるまでは妊娠をしてから約二百八十日って言われているらしいけど、マルリカの実を使った場合はそれよりも少し早めの出産になる場合が多いらしい。
 出産はそれぞれ異なって、時間がかかってしまう人もいれば、すぐに生まれてしまう人もいるらしい。

「…………三日間」

 別に三日間そうする事は、びっくりしたけれど、大丈夫……だと思う。多分…………

 思い出すのはルシルの赤ちゃんのフェリクス君と、シャマル様の赤ちゃんのファルーク君の姿だ。
 小さくて、可愛くて、言い方は変だけれど、ちゃんと生きていた。うん。当たり前なんだけど、ああ、生きて目の前にいるんだって、愛おしいなって思ったんだよ。

 前にお茶会をした時にちょっとだけ話をきいたけれど、自分の中にもう一つの命を抱えるというのはやっぱりよく分からないし、不安だ。ルシルがそのうち手引書のようなものを出してみようと言っていたけれど、それが出来上がるまで待つつもりはないんだ。
 だって、収穫をした新しい実を改めて見たら、僕と兄様が受け取ってきた、この奇跡のような実は、やっぱり今年度中に使いたい。
 そうしたいって、思ったんだ。

-------------
ふふふ( *´艸`)
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...