87 / 109
83 僕が決めた事
しおりを挟む
兄様から連絡がいっているかもしれないけど、父様に収穫が無事終わった事とその数を書簡で知らせた。
父様のお返事はすぐにきて、「お疲れ様」と、昨年の倍以上の収穫になった事に感謝すると書かれていた。
ルフェリットとシェルバーネの二国の会議は昨年からフィンレーの公爵領で行われるので、ここから先はそれぞれの担当者へお知らせをして、予定通りに話し合いが行われるように調整。勿論そのお知らせも調整も僕が関わる事は無い。
会議の準備自体はフィンレーが主導で行う事になって、フィンレーの次期当主として、兄様のお仕事になるって聞いているけれど、昨年の経験があるし、公爵領もしっかりとした防御の結界が張られているし、王城のように沢山の人の出入りがあるわけではないから特別に何かをしなければならないような事はないんだよって。
うん。まぁ、安全対策の事は心配ないと思うから、後はお部屋を整えるとか、お茶やお茶請けをどうするとかそういう事だよね。
ちなみにシャマル様達は交渉のためにくるから、今年からは交渉が終わるまではフィンレーに来る泊まったり、会議の前に関係者と話をする事も禁じられている。それはルフェリットの交渉を任されている者達も同じ。
より公正を期すという事になったのだそう。
このため場所は提供をするけれど、フィンレーは公にはされていない生産者であるグリーンベリーの後ろ盾として交渉のテーブルにはつかず、あくまでもオブザーバーとして出席をする事になる。
もちろんグリーンベリーは交渉には一切口出しはしない。
ただ、今後の事についてはきちんとした方向の提示を要求するという権限は持たせるんだって。
色々難しいけれど、やっぱりフィンレーやグリーンベリーと親戚であるエルグランド公爵家が交渉団にいるというのはルフェリットにとっては一つの懸念事項になってしまうのかな。
というわけで、今回はシャマル様達が事前にフィンレーに宿泊したり、グリーンベリーを訪れたりする事はないんだ。もちろん親戚だから交渉が終わってきちんと今年の実の振り分けの条約が締結をしたら、今まで通りのお付き合いが出来る。
日程としては十日に交渉の会議があって、一日で終わるか、二日になるのかは分からないし、数の振り分けだけでなく、実際はマルリカの実をめぐる事件についての続報や新たな事件がないかなどの情報交換もあるし、来年の実をどうするかっていう会議もあるし、シェルバーネの砂漠の改善とか、今後どうしていきたいのかも確認していかないといけない。
ちなみに僕が参加をするのはここまでだ。
だけど交渉団を迎える国としてはそれだけではもちろん終わらない。その会議の後に一応っていうのも変だけど、王城での晩餐会も予定されているし、条約文書が出来上がったら調印式もある。
この調印式は交渉団の長である宰相のニールデン公爵と昨年もいらしたシェルバーネの皇太子が行い、ルフェリット国王と他の公爵家当主、シェルバーネ国王代理として皇太子殿下とエルグランド公爵が見届け人とし、あとは交渉団に入っていた人たちが同席をする。交渉団にはハワード先生も入っているよ。そして護衛も兼ねて? と言われてレイモンド侯爵も入れられている。父様曰く「仲間はずれにはしない」んだそう。
ちなみに兄様は晩さん会には出席するけれど、調印式は出席出来ない。
後は色々が終わったシャマル様達が帰国の前にフィンレーを訪れる事になるから、そこでのおもてなしの準備も兄様のお仕事になるみたい。必要な食材とかがあれば用意できますって言ったら、シェフと相談をしておこうって笑っていた。
というわけで、収穫が終わってマルリカの実をきちんと保管をしたら会議までは僕は通常通りで、会議が終わっても公式な場には出席はしないから、あとはシャマル様達が帰る前にお会いするくらいの予定になる……
「………………」
僕はマルリカの実が入っているマジックポーチを見て、ため息をついていた。
一昨日収穫をして今はマジックボックスに入って厳重に保管をされているマルリカの実。
それとまったく変わらないこのポーチの中に入った僕達がいただいたマルリカの実。
多分、ルシルやトーマス君に聞いたら教えてくれるかもしれないけれど、それもなんだか恥ずかしくて、マルリカの実を使った場合の出産について調べてみたりもした。
使い方は兄様に任せておけば大丈夫って思っているからいいんだ。だから心配なのはその先の事だ。
まだ使ってもいないうちにって思うかもしれないけれど、心配っていうか、やっぱり気になるんだもの。
一般的に子供が生まれてくるまでは妊娠をしてから約二百八十日って言われているらしいけど、マルリカの実を使った場合はそれよりも少し早めの出産になる場合が多いらしい。
出産はそれぞれ異なって、時間がかかってしまう人もいれば、すぐに生まれてしまう人もいるらしい。
「…………三日間」
別に三日間そうする事は、びっくりしたけれど、大丈夫……だと思う。多分…………
思い出すのはルシルの赤ちゃんのフェリクス君と、シャマル様の赤ちゃんのファルーク君の姿だ。
小さくて、可愛くて、言い方は変だけれど、ちゃんと生きていた。うん。当たり前なんだけど、ああ、生きて目の前にいるんだって、愛おしいなって思ったんだよ。
前にお茶会をした時にちょっとだけ話をきいたけれど、自分の中にもう一つの命を抱えるというのはやっぱりよく分からないし、不安だ。ルシルがそのうち手引書のようなものを出してみようと言っていたけれど、それが出来上がるまで待つつもりはないんだ。
だって、収穫をした新しい実を改めて見たら、僕と兄様が受け取ってきた、この奇跡のような実は、やっぱり今年度中に使いたい。
そうしたいって、思ったんだ。
-------------
ふふふ( *´艸`)
父様のお返事はすぐにきて、「お疲れ様」と、昨年の倍以上の収穫になった事に感謝すると書かれていた。
ルフェリットとシェルバーネの二国の会議は昨年からフィンレーの公爵領で行われるので、ここから先はそれぞれの担当者へお知らせをして、予定通りに話し合いが行われるように調整。勿論そのお知らせも調整も僕が関わる事は無い。
会議の準備自体はフィンレーが主導で行う事になって、フィンレーの次期当主として、兄様のお仕事になるって聞いているけれど、昨年の経験があるし、公爵領もしっかりとした防御の結界が張られているし、王城のように沢山の人の出入りがあるわけではないから特別に何かをしなければならないような事はないんだよって。
うん。まぁ、安全対策の事は心配ないと思うから、後はお部屋を整えるとか、お茶やお茶請けをどうするとかそういう事だよね。
ちなみにシャマル様達は交渉のためにくるから、今年からは交渉が終わるまではフィンレーに来る泊まったり、会議の前に関係者と話をする事も禁じられている。それはルフェリットの交渉を任されている者達も同じ。
より公正を期すという事になったのだそう。
このため場所は提供をするけれど、フィンレーは公にはされていない生産者であるグリーンベリーの後ろ盾として交渉のテーブルにはつかず、あくまでもオブザーバーとして出席をする事になる。
もちろんグリーンベリーは交渉には一切口出しはしない。
ただ、今後の事についてはきちんとした方向の提示を要求するという権限は持たせるんだって。
色々難しいけれど、やっぱりフィンレーやグリーンベリーと親戚であるエルグランド公爵家が交渉団にいるというのはルフェリットにとっては一つの懸念事項になってしまうのかな。
というわけで、今回はシャマル様達が事前にフィンレーに宿泊したり、グリーンベリーを訪れたりする事はないんだ。もちろん親戚だから交渉が終わってきちんと今年の実の振り分けの条約が締結をしたら、今まで通りのお付き合いが出来る。
日程としては十日に交渉の会議があって、一日で終わるか、二日になるのかは分からないし、数の振り分けだけでなく、実際はマルリカの実をめぐる事件についての続報や新たな事件がないかなどの情報交換もあるし、来年の実をどうするかっていう会議もあるし、シェルバーネの砂漠の改善とか、今後どうしていきたいのかも確認していかないといけない。
ちなみに僕が参加をするのはここまでだ。
だけど交渉団を迎える国としてはそれだけではもちろん終わらない。その会議の後に一応っていうのも変だけど、王城での晩餐会も予定されているし、条約文書が出来上がったら調印式もある。
この調印式は交渉団の長である宰相のニールデン公爵と昨年もいらしたシェルバーネの皇太子が行い、ルフェリット国王と他の公爵家当主、シェルバーネ国王代理として皇太子殿下とエルグランド公爵が見届け人とし、あとは交渉団に入っていた人たちが同席をする。交渉団にはハワード先生も入っているよ。そして護衛も兼ねて? と言われてレイモンド侯爵も入れられている。父様曰く「仲間はずれにはしない」んだそう。
ちなみに兄様は晩さん会には出席するけれど、調印式は出席出来ない。
後は色々が終わったシャマル様達が帰国の前にフィンレーを訪れる事になるから、そこでのおもてなしの準備も兄様のお仕事になるみたい。必要な食材とかがあれば用意できますって言ったら、シェフと相談をしておこうって笑っていた。
というわけで、収穫が終わってマルリカの実をきちんと保管をしたら会議までは僕は通常通りで、会議が終わっても公式な場には出席はしないから、あとはシャマル様達が帰る前にお会いするくらいの予定になる……
「………………」
僕はマルリカの実が入っているマジックポーチを見て、ため息をついていた。
一昨日収穫をして今はマジックボックスに入って厳重に保管をされているマルリカの実。
それとまったく変わらないこのポーチの中に入った僕達がいただいたマルリカの実。
多分、ルシルやトーマス君に聞いたら教えてくれるかもしれないけれど、それもなんだか恥ずかしくて、マルリカの実を使った場合の出産について調べてみたりもした。
使い方は兄様に任せておけば大丈夫って思っているからいいんだ。だから心配なのはその先の事だ。
まだ使ってもいないうちにって思うかもしれないけれど、心配っていうか、やっぱり気になるんだもの。
一般的に子供が生まれてくるまでは妊娠をしてから約二百八十日って言われているらしいけど、マルリカの実を使った場合はそれよりも少し早めの出産になる場合が多いらしい。
出産はそれぞれ異なって、時間がかかってしまう人もいれば、すぐに生まれてしまう人もいるらしい。
「…………三日間」
別に三日間そうする事は、びっくりしたけれど、大丈夫……だと思う。多分…………
思い出すのはルシルの赤ちゃんのフェリクス君と、シャマル様の赤ちゃんのファルーク君の姿だ。
小さくて、可愛くて、言い方は変だけれど、ちゃんと生きていた。うん。当たり前なんだけど、ああ、生きて目の前にいるんだって、愛おしいなって思ったんだよ。
前にお茶会をした時にちょっとだけ話をきいたけれど、自分の中にもう一つの命を抱えるというのはやっぱりよく分からないし、不安だ。ルシルがそのうち手引書のようなものを出してみようと言っていたけれど、それが出来上がるまで待つつもりはないんだ。
だって、収穫をした新しい実を改めて見たら、僕と兄様が受け取ってきた、この奇跡のような実は、やっぱり今年度中に使いたい。
そうしたいって、思ったんだ。
-------------
ふふふ( *´艸`)
1,060
お気に入りに追加
3,126
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?
京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。
顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。
貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。
「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」
毒を盛られ、体中に走る激痛。
痛みが引いた後起きてみると…。
「あれ?私綺麗になってない?」
※前編、中編、後編の3話完結
作成済み。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる