悪役令息にならなかったので、僕は兄様と幸せになりました!

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83 僕が決めた事

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 兄様から連絡がいっているかもしれないけど、父様に収穫が無事終わった事とその数を書簡で知らせた。
 父様のお返事はすぐにきて、「お疲れ様」と、昨年の倍以上の収穫になった事に感謝すると書かれていた。

 ルフェリットとシェルバーネの二国の会議は昨年からフィンレーの公爵領で行われるので、ここから先はそれぞれの担当者へお知らせをして、予定通りに話し合いが行われるように調整。勿論そのお知らせも調整も僕が関わる事は無い。
 会議の準備自体はフィンレーが主導で行う事になって、フィンレーの次期当主として、兄様のお仕事になるって聞いているけれど、昨年の経験があるし、公爵領もしっかりとした防御の結界が張られているし、王城のように沢山の人の出入りがあるわけではないから特別に何かをしなければならないような事はないんだよって。
 うん。まぁ、安全対策の事は心配ないと思うから、後はお部屋を整えるとか、お茶やお茶請けをどうするとかそういう事だよね。
 ちなみにシャマル様達は交渉のためにくるから、今年からは交渉が終わるまではフィンレーに来る泊まったり、会議の前に関係者と話をする事も禁じられている。それはルフェリットの交渉を任されている者達も同じ。
 より公正を期すという事になったのだそう。

 このため場所は提供をするけれど、フィンレーは公にはされていない生産者であるグリーンベリーの後ろ盾として交渉のテーブルにはつかず、あくまでもオブザーバーとして出席をする事になる。
 もちろんグリーンベリーは交渉には一切口出しはしない。
 ただ、今後の事についてはきちんとした方向の提示を要求するという権限は持たせるんだって。
 色々難しいけれど、やっぱりフィンレーやグリーンベリーと親戚であるエルグランド公爵家が交渉団にいるというのはルフェリットにとっては一つの懸念事項になってしまうのかな。

 というわけで、今回はシャマル様達が事前にフィンレーに宿泊したり、グリーンベリーを訪れたりする事はないんだ。もちろん親戚だから交渉が終わってきちんと今年の実の振り分けの条約が締結をしたら、今まで通りのお付き合いが出来る。
 日程としては十日に交渉の会議があって、一日で終わるか、二日になるのかは分からないし、数の振り分けだけでなく、実際はマルリカの実をめぐる事件についての続報や新たな事件がないかなどの情報交換もあるし、来年の実をどうするかっていう会議もあるし、シェルバーネの砂漠の改善とか、今後どうしていきたいのかも確認していかないといけない。
 ちなみに僕が参加をするのはここまでだ。

 だけど交渉団を迎える国としてはそれだけではもちろん終わらない。その会議の後に一応っていうのも変だけど、王城での晩餐会も予定されているし、条約文書が出来上がったら調印式もある。
 この調印式は交渉団の長である宰相のニールデン公爵と昨年もいらしたシェルバーネの皇太子が行い、ルフェリット国王と他の公爵家当主、シェルバーネ国王代理として皇太子殿下とエルグランド公爵が見届け人とし、あとは交渉団に入っていた人たちが同席をする。交渉団にはハワード先生も入っているよ。そして護衛も兼ねて? と言われてレイモンド侯爵も入れられている。父様曰く「仲間はずれにはしない」んだそう。
 ちなみに兄様は晩さん会には出席するけれど、調印式は出席出来ない。

 後は色々が終わったシャマル様達が帰国の前にフィンレーを訪れる事になるから、そこでのおもてなしの準備も兄様のお仕事になるみたい。必要な食材とかがあれば用意できますって言ったら、シェフと相談をしておこうって笑っていた。

 というわけで、収穫が終わってマルリカの実をきちんと保管をしたら会議までは僕は通常通りで、会議が終わっても公式な場には出席はしないから、あとはシャマル様達が帰る前にお会いするくらいの予定になる……

「………………」

 僕はマルリカの実が入っているマジックポーチを見て、ため息をついていた。
 一昨日収穫をして今はマジックボックスに入って厳重に保管をされているマルリカの実。
 それとまったく変わらないこのポーチの中に入った僕達がいただいたマルリカの実。
 
 多分、ルシルやトーマス君に聞いたら教えてくれるかもしれないけれど、それもなんだか恥ずかしくて、マルリカの実を使った場合の出産について調べてみたりもした。
 使い方は兄様に任せておけば大丈夫って思っているからいいんだ。だから心配なのはその先の事だ。
 まだ使ってもいないうちにって思うかもしれないけれど、心配っていうか、やっぱり気になるんだもの。

 一般的に子供が生まれてくるまでは妊娠をしてから約二百八十日って言われているらしいけど、マルリカの実を使った場合はそれよりも少し早めの出産になる場合が多いらしい。
 出産はそれぞれ異なって、時間がかかってしまう人もいれば、すぐに生まれてしまう人もいるらしい。

「…………三日間」

 別に三日間そうする事は、びっくりしたけれど、大丈夫……だと思う。多分…………

 思い出すのはルシルの赤ちゃんのフェリクス君と、シャマル様の赤ちゃんのファルーク君の姿だ。
 小さくて、可愛くて、言い方は変だけれど、ちゃんと生きていた。うん。当たり前なんだけど、ああ、生きて目の前にいるんだって、愛おしいなって思ったんだよ。

 前にお茶会をした時にちょっとだけ話をきいたけれど、自分の中にもう一つの命を抱えるというのはやっぱりよく分からないし、不安だ。ルシルがそのうち手引書のようなものを出してみようと言っていたけれど、それが出来上がるまで待つつもりはないんだ。
 だって、収穫をした新しい実を改めて見たら、僕と兄様が受け取ってきた、この奇跡のような実は、やっぱり今年度中に使いたい。
 そうしたいって、思ったんだ。

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ふふふ( *´艸`)
 
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