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70 22歳の誕生日

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 十の月になって、母様から「たまには顔を見せに来なさい」という僕のお誕生会の招待状がきた。
 一体何があったのかなってちょっとびっくりしたんだけど、兄様に相談をしたら「きっとお茶会がしたいんだよ」って笑ったから、それならぜひ出席しなければとはりきってお返事を出した。

 色々考える事があってバタバタしていたからフィンレーに行くのは久しぶりになってしまったんだよね。グリーンベリーとフィンレーの屋敷は転移の魔法陣が設置されているんだからもう少し顔を出さないといけないな。父様ともお布令の後がどうなったかって話もしていないし。

 そして十一日の誕生日。カードに書かれていた時間より少し前にフィンレーに到着すると、母様がニッコリと笑って出迎えてくれた。

「エディ22歳のお誕生日おめでとう。少し痩せたんじゃない? 仕事が忙しいのかしら」

 顔を見てすぐにそんな風に言われて僕は「大丈夫です」と笑った。こんなに大きくなってお誕生会を開いてもらうのはなんだか恥ずかしかったけど、母様の嬉しそうな顔を見ると来て良かったなって思った。兄様が「これも親孝行だよ」って言った意味が少し分かるような気がしたよ。

 少し早めの夕食がそのまま誕生会になって、久しぶりにフィンレーの料理を楽しんでいたら父様も帰ってきて、本当に久しぶりに家族での食事会になった。
 父様と母様はあんまり変わらないけど、ウィルはなんだかクラウス君みたいになってきているし、ハリーはなんとなくミッチェル君みたいになっている。双子で小さい頃は髪と瞳の色以外はそっくりだったんだけど、いつの間にかこんなにもそれぞれの個性が表れるようになっていたんだなって改めて感じた。
 来年はいよいよ二人も高等部三年。学園最後の年になる。

「……早いなぁ」
「エディ?」

 兄様が振り向いた。

「ああ、すみません。自分が二十二歳っていうのも信じられない感じなんですけど、ウィルとハリーを見ていたら。時間が経ったんだなって。ふふふ、紙飛行機を取り合いしていたのになって」
「エ、エディ兄様、それはちょっと昔すぎます」
「あはは、そうだね。ウィルもハリーも来年は学園を卒業するんだものね。卒業式はきっと泣いちゃうな」
「えええ⁉ じゃあ、ハンカチを沢山用意しておきますね」
「僕も!」
「ありがとう。ああ、そうだ。グリーンベリーの森の中で見つかったヘーゼルナッツなどがどうやらきちんと販売できる目処が立ちました。それで販売したいものの一つとなるジャンドゥーヤを作ってきました。あとはショコラノワゼットっていうケーキも。マジックボックスに入れてありますので、召し上がってください」
「ふふふ、エディは相変わらず色々なものを作り出しているのね。そのうちに食の流行はグリーンベリーからの発信になりそうだわ」
「そんな事ないですよ。でも何かを見つけたり、育てたりできるのは嬉しいし楽しいです。それが広がって領が豊かになるなら尚更」
「ふむ。そうだね。でもエドワード、無理をしてはいけないよ。そして自領の事だけでなく周りの事も確認をしていかないと領民を不要な事に巻き込んでしまう事もある。アルフレッド、慎重に見極めていくように」
「はい」

 わぁ、何だかせっかくのお祝いに難しい話になっちゃったな。でも父様の言う通りに僕も気を付けて見極めていかないとね。

 沢山のご馳走を食べて、色々なお話をしてその日はフィンレーに泊まる事にした。
 父様からはとても綺麗で大きな魔石をいただいてしまった。これってスタンピードの時の褒賞の中にあったものじゃないかな。でも魔石は色々と使えるから何かお返しできるものを考えてみようかな。
 母様からはお洋服をいただいたよ。「何かないと中々自分のものをエディは作りそうにないから」って。
 そして双子たちからは王都で流行っているっていうとても綺麗な紙を使ったノートとインクが中に入っているガラスペンをもらった。真っ白の紙はとても高価なんだけど、それがどうやら量産出来るようになったんだって。
 そういう情報もちゃんと集めていかないといけないな。
 そして兄様からは……

「エディ、改めて二十二歳のお誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」

 フィンレーに泊まる時は以前使っていた自分の部屋だったんだけど、今日は夫婦の部屋として兄様と一緒の部屋が用意されていた。そこで僕はあのカクテルを兄様と一緒に口にしている。

 兄様が飲んでいるのは兄様が名付けた『夢のはじまり』。そして僕が口にしているのは僕が名付けた「夢のつづき」。これは強いお酒が使われているから兄様と一緒の時にしか飲めない事になっている。でもお酒自体をあまり飲む事はないんだけどね。ちなみにこれを初めて飲んだ後、僕は僕が何をしたのか全く覚えがない。

「はい、エディへのプレゼント。久しぶりに『記憶』の中を探していたら面白いものがあったからね」

 そう言って兄様が差し出したのはカメラだ。しかも以前に比べてとても小さい。

「えっと……これはカメラですよね。随分小さく軽くなりました」
「うん。でも図鑑と組み合わせてみたんだ」
「図鑑と?」
「エディは鑑定があるからあまり必要がないかなと思ったんだけど、何かを見つけた時にそれを撮っておけば辺りの状況とかも合わせて人に見せられるかなって。これからもきっとあちこちの視察を続けようと思っているんだろうし、さすがに全ての視察に同行するのは難しい。物は採取してしまうかもしれないけれどこんなものがあってもいいかもしれないなと試作を繰り返していたんだ」

 ふわりと笑った兄様に僕は思わず抱きついていた。

「ありがとうございます、アル! 今日父様から言われた事も踏まえてこれからも色々なものを見たり、取り入れたりしていきたいと思います」
「うん。気に入ってくれたなら良かった」

 そう言って兄様は抱き着いてしまった僕の身体をギュッと抱きしめて、額にチュッて口づけを落とした。

「ふふふ、今日も酔っぱらってしまったのかな。酔ったエディは可愛いから、我慢できなくなっちゃうかもしれないな。せっかく夫婦の部屋に通されているしね」

 言いながら頬に、髪に軽い口づけが降ってきて僕は赤くなりながらも、目の前の胸に顔を押し当てた。

「しゃ、遮音してくださいね。あと、明日起きれないのもポーション飲むのも嫌です」
「私の方がプレゼントをもらったみたいだね。了解しました。奥さん」

 そうして兄様は約束のように唇に口づけを落としてから僕の身体を抱き上げてベッドに運んだのだった。



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エディ22歳……しみじみと...( = =) トオイメ目
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