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66 話し合いの後は
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その後は抱きしめられながらの話になった。
シャマル様に子供が欲しいかと尋ねられた事。
それに分からないと答えた事もちゃんと伝えた。
「シャマル様は女性のように元から産める身体ではないし、どうなっていくのか、どうやって外に出てくるのか怖くて当然だって仰いました。子供が欲しくても自分の命と引き換えになるのは困るからって」
「…………」
兄様の眉根がどんどん寄せられていくのを見ながら僕は「でも」と言葉を続けた。
「シェルバーネでは学校や神殿でマルリカの実の事を教えてくれるのだそうです。どうやって生まれてくるのか、女性の出産との違いは何か、あと、生まれてくる子供に差別がない事も伝えているって」
「学校や神殿で?」
「はい。あんまり当たり前の事だったから使い方についてはきちんと説明をする事は伝えたんだけど、産む側になってからその事も伝えるべきだったって気づいたって。知らずに身ごもる事はどれほど不安だろうって思ったって」
「………なるほど」
「実が子を育てる器を作る事は王国にも伝えてあるのだそうです。育つための大きなポイントは魔力だという事も。だからマルリカの実は魔力を有しているし、魔力がないと子が出来にくいって。だから去年のような事件が起こったんだってそれは理解できました」
「ああ、そうだね。それはあの事件の時にも言われていたからね」
「はい。それで、子が出来るだけでなく、産むときにも魔力が必要になるのだそうです。魔力が大きければ生むのも楽だとか。だからシェルバーネでは魔力が少ないものが産む時には魔力の高い助産師が付き添うって言っていました。でもルフェリットではそれは必要ないかもしれないとも言われました」
「…………そう」
「あと、えっと……陣痛? はあるけどシャマル様が耐えられるくらいだから大丈夫みたいな……アル?」
兄様が僕の肩口にポスンと額を載せた。どうしたのかな。
「ああ……うん。そうなんだね。色々と知らない事があるようだ。昨年実を受けに行った人たちはわけが分からない中でも子を欲しいと思ったんだね」
「はい。そうですね。一応神殿で使い方とかどうなるのかという説明は受けると領主としては聞いていましたが、具体的な事は知らなかったので、分からないまま受け取りに行くと言うのは、とても、勇気がいる事だったんだなって改めて思いました」
僕の言葉に兄様は肩に額を載せたまま「ルフェリットも考えなければならないね」と言った。
「はい。生むまでの事も、生まれた子への差別も、ちゃんと説明して、広めていかなければいけません」
「そうだね。シェルバーネのように正しい事を伝えていく場が必要だ。父上にも話をしておこう」
「はい。……あの、アル」
「うん?」
「僕、ルシルにも聞くつもりです」
「エディ?」
兄様が顔を上げた。
「子が出来てどうだったのか、生まれる時はどうだったのか。何が不安で、何が足りないと感じて、どうすればもっと生みやすいと思ったのか。きっとルシルは話してくれると思うんです。でもそれだけでなくて、産んだ人たちの声を拾い上げて、まとめていく作業が必要になると思うんです。そう言った事をどうやって考えていったらいいのかもルシルに投げかけてみようと思って……」
「なるほど。経験者の言葉だね」
「はい」
ニッコリと笑って頷くと、兄様は「エディはすごいな」と言った。
「え?」
「色々な事を考える力がある」
「あ、え……えっと……知らないと不安なだけですよ。だって、僕自身はどうしたらいいのか、決められずにいるし……」
「うん。それでも考えようと思う事がすごいんだよ。大丈夫。沢山考えて、エディが話をしようっていう気持ちになったら教えて。そうしたら一緒に沢山話をして決めよう。一度だけでなく、作戦会議みたいに何度も話をしてもいいしね」
「はい。ありがとうございます。ふふふ……作戦会議か。懐かしいな。アルが旦那様で良かった」
「私も、エディが奥さんで良かった」
二人で顔を見合わせて、もう一度笑って。
話し合いは終了して、後は甘い時間になった。
------------
すみません~~~。短いですが( ;∀;)
シャマル様に子供が欲しいかと尋ねられた事。
それに分からないと答えた事もちゃんと伝えた。
「シャマル様は女性のように元から産める身体ではないし、どうなっていくのか、どうやって外に出てくるのか怖くて当然だって仰いました。子供が欲しくても自分の命と引き換えになるのは困るからって」
「…………」
兄様の眉根がどんどん寄せられていくのを見ながら僕は「でも」と言葉を続けた。
「シェルバーネでは学校や神殿でマルリカの実の事を教えてくれるのだそうです。どうやって生まれてくるのか、女性の出産との違いは何か、あと、生まれてくる子供に差別がない事も伝えているって」
「学校や神殿で?」
「はい。あんまり当たり前の事だったから使い方についてはきちんと説明をする事は伝えたんだけど、産む側になってからその事も伝えるべきだったって気づいたって。知らずに身ごもる事はどれほど不安だろうって思ったって」
「………なるほど」
「実が子を育てる器を作る事は王国にも伝えてあるのだそうです。育つための大きなポイントは魔力だという事も。だからマルリカの実は魔力を有しているし、魔力がないと子が出来にくいって。だから去年のような事件が起こったんだってそれは理解できました」
「ああ、そうだね。それはあの事件の時にも言われていたからね」
「はい。それで、子が出来るだけでなく、産むときにも魔力が必要になるのだそうです。魔力が大きければ生むのも楽だとか。だからシェルバーネでは魔力が少ないものが産む時には魔力の高い助産師が付き添うって言っていました。でもルフェリットではそれは必要ないかもしれないとも言われました」
「…………そう」
「あと、えっと……陣痛? はあるけどシャマル様が耐えられるくらいだから大丈夫みたいな……アル?」
兄様が僕の肩口にポスンと額を載せた。どうしたのかな。
「ああ……うん。そうなんだね。色々と知らない事があるようだ。昨年実を受けに行った人たちはわけが分からない中でも子を欲しいと思ったんだね」
「はい。そうですね。一応神殿で使い方とかどうなるのかという説明は受けると領主としては聞いていましたが、具体的な事は知らなかったので、分からないまま受け取りに行くと言うのは、とても、勇気がいる事だったんだなって改めて思いました」
僕の言葉に兄様は肩に額を載せたまま「ルフェリットも考えなければならないね」と言った。
「はい。生むまでの事も、生まれた子への差別も、ちゃんと説明して、広めていかなければいけません」
「そうだね。シェルバーネのように正しい事を伝えていく場が必要だ。父上にも話をしておこう」
「はい。……あの、アル」
「うん?」
「僕、ルシルにも聞くつもりです」
「エディ?」
兄様が顔を上げた。
「子が出来てどうだったのか、生まれる時はどうだったのか。何が不安で、何が足りないと感じて、どうすればもっと生みやすいと思ったのか。きっとルシルは話してくれると思うんです。でもそれだけでなくて、産んだ人たちの声を拾い上げて、まとめていく作業が必要になると思うんです。そう言った事をどうやって考えていったらいいのかもルシルに投げかけてみようと思って……」
「なるほど。経験者の言葉だね」
「はい」
ニッコリと笑って頷くと、兄様は「エディはすごいな」と言った。
「え?」
「色々な事を考える力がある」
「あ、え……えっと……知らないと不安なだけですよ。だって、僕自身はどうしたらいいのか、決められずにいるし……」
「うん。それでも考えようと思う事がすごいんだよ。大丈夫。沢山考えて、エディが話をしようっていう気持ちになったら教えて。そうしたら一緒に沢山話をして決めよう。一度だけでなく、作戦会議みたいに何度も話をしてもいいしね」
「はい。ありがとうございます。ふふふ……作戦会議か。懐かしいな。アルが旦那様で良かった」
「私も、エディが奥さんで良かった」
二人で顔を見合わせて、もう一度笑って。
話し合いは終了して、後は甘い時間になった。
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すみません~~~。短いですが( ;∀;)
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