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55 マリーの子供
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マルリカの実の会議も無事に終わり、実も引き渡して、この後は昨年のような流れでルフェリットでは四の月の初めまでにそれぞれの神殿へ運ばれる。もっとも今年は国からのお布令はないから、各神殿と各領から今年度の実の販売は四の月の一日からですって告知を出すだけ。後は昨年通りに行えばいい。
「あの手間がないだけでも随分と違うよね」
「確かにね」
「文句を言って来る人もいないだろうし、つまらない話を聞かなくてもいいし」
「ミッチェル、一言多いよ」
相変わらずのミッチェル君とブライアン君のやりとりに苦笑しつつ、僕は手元の書類に目を落とした。二十四日まで販売をしていたグリーンベリー領でのマルリカの実の集計がきたんだ。当初は10組分の30個が割り当てられた。それが少しずつ少しずつ出て半年経つうちになくなり、王国へ追加の申し出をした。結局グリーンベリーだけで18組、54個のマルリカの実が、子供が欲しい人達の元に渡った。
今年はどうなるのかな。
そのマルリカの実の販売が終了される二日前の二十二日、マリーに二人目の赤ちゃんが生まれた。まだ会えていないんだけど、男の子だって聞いた。
とにかくゆっくり身体を休めるように言っているけれど、顔を見てほしいって言われていて、三十日のお休みの日に会いに行く事が決まっているんだ。
シンシアの時もやっぱり顔を見てほしいって言われて、会いに行ったんだよ。だってマリーったら見せに来るって言うんだもの。顔を見られるのは嬉しいけど、生まれて間もない赤ちゃんを見せに来るなんて僕の方が心配で、見に行ってもいいかなって言ったんだ。今回もね。
ルーカスもマリーもものすごく恐縮していたけれど、そんなの全然気にしないよ。だってマリーの事も赤ちゃんの事も僕はとても大切に思っているんだもの。兄様にそう言ったら「エディの好きなようにしなさい」って。あまり人が多いとかえって疲れさせてしまうから最小限の人数で、護衛の一人はジョシュアなの。ふふふ、楽しみだな。
◇ ◇ ◇
「おめでとうマリー」
「ありがとうございます、エドワード様。本来であればこちらから伺わなければならないところ」
「僕が見に来たかったからいいんだよ。気を使わずにしっかり休んで、と言っても子育てしながら休むのは大変だろうけど」
「ありがとうございます。乳母にも手伝ってもらっておりますので、出来るだけ早く復帰出来るように致します」
ベッドの中にいてねって言ったのに、しっかりと着替えをして迎えてくれたマリーに苦笑をしながら僕は「待っているね」と伝えた。だってやっぱりマリーがいないと淋しいしね。
「ふふふ、可愛いね。男の子か」
「はい。セオドアと名付けました。古い言葉で神の贈り物という意味があるそうです」
「セオドア・ヒューイット。素敵な名前だね。愛称はテッドかな?」
「はい。そうですね。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ。早く目を開けて、声を聞かせてね。テッド。沢山の幸せが君と、君の家族の上に訪れます様に」
「ありがとうございます。エドワード様」
マリーはうっすらと涙を浮かべながら微笑んだ。
「今日はシンディは?」
「ルーカスが連れ出しています。エドワード様がいらっしゃると分かったらはしゃぎだしてしまいますので」
「そう。じゃあマリーがまた務め出したら連れてきてもらおう。ボーロを用意して待っているね」
「ありがとうございます」
僕は早々にマリーの部屋を後にした。入口の辺りにルーカスがいた。
「ルーカス、セオドアに会わせてもらったよ。良く眠っていてお利口さんだった」
「有難うございます」
「シンディもいい子にしていてえらかったね。また遊ぼうね」
僕がそう言うと絶妙なタイミングでシンシアが「はーい」と言って手を挙げたので、僕達は皆で笑ってしまった。とても幸せなひと時だった。
こうして、三の月が終わった。
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「あの手間がないだけでも随分と違うよね」
「確かにね」
「文句を言って来る人もいないだろうし、つまらない話を聞かなくてもいいし」
「ミッチェル、一言多いよ」
相変わらずのミッチェル君とブライアン君のやりとりに苦笑しつつ、僕は手元の書類に目を落とした。二十四日まで販売をしていたグリーンベリー領でのマルリカの実の集計がきたんだ。当初は10組分の30個が割り当てられた。それが少しずつ少しずつ出て半年経つうちになくなり、王国へ追加の申し出をした。結局グリーンベリーだけで18組、54個のマルリカの実が、子供が欲しい人達の元に渡った。
今年はどうなるのかな。
そのマルリカの実の販売が終了される二日前の二十二日、マリーに二人目の赤ちゃんが生まれた。まだ会えていないんだけど、男の子だって聞いた。
とにかくゆっくり身体を休めるように言っているけれど、顔を見てほしいって言われていて、三十日のお休みの日に会いに行く事が決まっているんだ。
シンシアの時もやっぱり顔を見てほしいって言われて、会いに行ったんだよ。だってマリーったら見せに来るって言うんだもの。顔を見られるのは嬉しいけど、生まれて間もない赤ちゃんを見せに来るなんて僕の方が心配で、見に行ってもいいかなって言ったんだ。今回もね。
ルーカスもマリーもものすごく恐縮していたけれど、そんなの全然気にしないよ。だってマリーの事も赤ちゃんの事も僕はとても大切に思っているんだもの。兄様にそう言ったら「エディの好きなようにしなさい」って。あまり人が多いとかえって疲れさせてしまうから最小限の人数で、護衛の一人はジョシュアなの。ふふふ、楽しみだな。
◇ ◇ ◇
「おめでとうマリー」
「ありがとうございます、エドワード様。本来であればこちらから伺わなければならないところ」
「僕が見に来たかったからいいんだよ。気を使わずにしっかり休んで、と言っても子育てしながら休むのは大変だろうけど」
「ありがとうございます。乳母にも手伝ってもらっておりますので、出来るだけ早く復帰出来るように致します」
ベッドの中にいてねって言ったのに、しっかりと着替えをして迎えてくれたマリーに苦笑をしながら僕は「待っているね」と伝えた。だってやっぱりマリーがいないと淋しいしね。
「ふふふ、可愛いね。男の子か」
「はい。セオドアと名付けました。古い言葉で神の贈り物という意味があるそうです」
「セオドア・ヒューイット。素敵な名前だね。愛称はテッドかな?」
「はい。そうですね。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ。早く目を開けて、声を聞かせてね。テッド。沢山の幸せが君と、君の家族の上に訪れます様に」
「ありがとうございます。エドワード様」
マリーはうっすらと涙を浮かべながら微笑んだ。
「今日はシンディは?」
「ルーカスが連れ出しています。エドワード様がいらっしゃると分かったらはしゃぎだしてしまいますので」
「そう。じゃあマリーがまた務め出したら連れてきてもらおう。ボーロを用意して待っているね」
「ありがとうございます」
僕は早々にマリーの部屋を後にした。入口の辺りにルーカスがいた。
「ルーカス、セオドアに会わせてもらったよ。良く眠っていてお利口さんだった」
「有難うございます」
「シンディもいい子にしていてえらかったね。また遊ぼうね」
僕がそう言うと絶妙なタイミングでシンシアが「はーい」と言って手を挙げたので、僕達は皆で笑ってしまった。とても幸せなひと時だった。
こうして、三の月が終わった。
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