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  書簡はフィンレーの方にも勿論届いていたらしく、父様からも僕達の従弟が生まれたそうだって書簡が来た。ああ、そうか。従弟。僕達は隣国に従弟が出来たんだ。
 おめでとうって会いに行きたいって思ったけれど、シェルバーネにはシェルバーネのお祝いのやり方があるだろう。それに生まれたばかりの赤ちゃんの所に沢山の人が訪れるのはやっぱり良くはないと思うんだ。それにシャマル様だってきっと今はしっかりと身体を休まれた方がいいものね。

「父様に相談をして、何かお祝いの品物を贈りましょう。シャマル様は以前春になったら赤ちゃんを見せて下さると仰っていらしたので、お顔を見るのはその時に。ああ、でもその前にダリウス叔父様が映像書簡を下さるかもしれませんね」
「そうだね。エルグランド家も公爵家だからね、跡継ぎが生まれたならば、これから色々と忙しいだろう。父上にはエディの言葉を私から伝えておくよ。フィンレーはフィンレーで、グリーンベリーはグリーンベリーでそれぞれに贈り物を贈る事になるだろう。どういった品を贈るかは任せてもらってもいいかな」
「はい。よろしくお願いいたします」

 うん。色々兼ね合いがあるからね。ああ、でも……

「あの、出来る事ならシャマル様に温室の白イチゴをお贈りしたいです」
「分かった。それも伝えておくよ」
「はい。ありがとうございます」

 父様と話をして、とりあえず書簡で「おめでとうございます」というお返事を返した。それから贈り物の方は兄様と父様で相談をしてすぐに手配をする事が決まった。温室の白イチゴはシャマル様宛に贈る事にした。春になってシャマル様がいらして下さるか、僕達がお祝に伺う事になるかは分からないけれど、赤ちゃんのお顔が見られて、出来たら……そう、出来る事ならば、赤ちゃんを産むという事がどうだったのかって聞いてみたいなって思っている。

「エディ?」
「……ふふふ、何だかちょっとぼんやりしてしまいました。一の月の終わり位って聞いていた気がしたから」
「ああ、そうだね。少しだけ早かったのかな。でもシャマル様もお子様も元気だというから良かった」
「はい。来年は何だか出産が重なりそうなので、お仕事とは違う意味で忙しくなりそうですね」
「ふふふ、そうかもしれないね。マリーと、ジムの所と、ルシルか」
「はい」

 なんだか、そうなんとなくだけど、次々にそんな知らせが入って来るんだなって思うとちょっとそわそわするような、落ち着かないような気持ちになるなって考えたら、兄様がギュッて抱きしめてきた。

「アル?」
「うん? なんだかエディが色々考え始めそうだったから、止めてみた」
「…………」
「人は人だよ。それに私はまだまだエディを独り占めしたいし、甘やかしたい」
「アル……」
「ふふふ、森の探索の計画も楽しみなんだよ。一応二、三日前には森の様子を確認しておいてもらう予定だよ。ああ、そうだ。白イチゴは一緒に収穫をして贈ろうか。あとね、もう少しで画像書簡の魔道具が出来そうだよ。そうしたらマルリカの実の成長も見せてあげられるね。でも見たら以前のエディみたいに見に行きたいって言い出してしまうかな?」

 腕の中に抱き込まれたまま、耳元で兄様の声が聞こえている。優しくて、甘い声。本当に兄様はなんでもお見通しだ。揺れてしまっている僕の気持ちも分かっている。でもそれは言わないの。

「そうかもしれませんね。でもアルが改良をした映像書簡の魔道具は見てみたいな。今度の森の探索で試し撮りをしてみましょうか?」
「うん。それはいいね。じゃあそれまでに頑張らないといけないな」
「ふふふ、でも無理はしたらダメです」

 目の前ですごく嬉しそうに兄様が笑う。うん。その笑顔は絶対に反則です。だって昔から僕は兄様の笑顔が大好きなんだもの。

「無理はしないけど、今日はエディに少し無理をさせてしまうかもしれない」
「え……」

 あれ? なんだかちょっとこれは……。

「お休み前じゃないのにごめんね。でもちょっと我慢が出来そうにないな」

 言葉の不穏さとは裏腹に兄様はニコニコ笑って爽やかだ。どうやら僕はよく分からないうちに兄様の何かのスイッチを押してしまったらしい。
楽しそうに僕を抱き上げた兄様は、口を開きかけた僕の唇を塞いで、器用に寝室の扉を開けて……閉めた。


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ふふふ、詰めてきているんですよ。
再び……
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