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43 会議①
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「おめでとう」と書簡を出すと「安定期に入ったら遊びに行く」と返って来た。
今、シルヴァン様は過保護モードに入っていて、どうにもならないので、教育的指導をしていく予定とも書いてあった。教育的指導ってなんだろう。とにかくルシルが元気そうで良かったし、シルヴァン様は相変わらずのようで、ちょっと笑ってしまったよ。
多分、ルシルのやる事為す事危ないからと一人では何もさせない勢いなのかな。
これも兄様に言ったら眉間に三本くらい皺を寄せて、揉んでいた。
シェルバーネの麦は次の畑に苗を植えた。今度は少し遅い秋蒔き。収穫をした麦の葉や茎や根などを肥料にして混ぜて、少し置いてからの植え付け。違う季節でもうまくいってくれるといいなって思っている。それほど寒くはならないみたいだけど、それでも夏の暑さに比べれば気温は低いので、収穫は四の月の後半を予定している。
ちなみにこの前植えた所には前と同じように五の月の終わりに植える予定なんだけど、この前収穫した麦を苗にしてから植える事にした。その間に新しい畑の場所を増やしていく。直播はその後から。
この辺りはお祖父様ともお話をして助言をいただいた。
そしてその直播が成功をしたら一旦は僕の手を離れる事になるかな。勿論相談は乗るけれど、後はシェルバーネの人達が考えていかなければね。
そう。少しずつ、少しずつ、死の砂漠に緑を取り戻す為に、麦だけでなく他の植物も育てられないかも試していきたいって思う人が出て来ているみたいだから。
◇ ◇ ◇
十一の月が終わりに近い頃に父様から連絡が来た。十二の月になるとフィンレーの冬祭りがあってその後は年末と新年に向けてのあれこれ細かい事があるので、その前にっていう事になったんだ。
話はマルリカの実の事だった。
去年から起きていた事件は一旦幕引きをしたものの、その後をエルグランド家もシェルバーネの王家も、そしてフィンレーやルフェリットの王室も色々と調査を続けていた。
その事に関しての報告を一度しておこうって事になったんだ。
今回集まったのはフィンレー公爵領。
ええっと元のフィンレー領も公爵領なんだけど、公爵領は王都を守るように囲んでいる特別な領地なので、フィンレーも、そして同じように公爵領を賜ったスタンリーも、元々の領地を非公式に侯爵領って呼んでいる。
そして現状はお祖父様が公爵領に当主代理として住んでいらして、父様は侯爵領にいる。王都のタウンハウスは学園に通う双子たちが住んでいて、週の半分くらいは兄様が父様の書斎だった所でお仕事をしている。
この辺りは陞爵をした時とあんまり変わっていないかな。
でも少し落ち着いてから父様が教えてくれたんだけど、陞爵をして公爵になって公爵領を賜る時に元の領地から出るのが普通と言う者もいたらしい。
父様は元の領地はフィンレーが守るべき地なので、それならば公爵への陞爵と公爵領の拝領を辞退するって言って、王様たちがものすごく慌てたらしい。うん、『首』の関連でやっぱり一番の功績があったのって父様たちだと思うんだよね。そこが辞退とかありえないよね。
だけどフィンレーには精霊王が住まう森と精霊樹があって、その森の中にはグランディス様が眠っていらっしゃるからあの地を手放すわけにはいかないんだ。
そして多分あの森は『厄災』の身体が精霊によって封じられている。勿論それは確かめた事ではないし、真実なのかは分からないけれど、おそらくはそうなんだろうってフィンレーは、そして賢者であるハワード先生も、王家も思っている。
それにこの地はずっとずっとフィンレーが守ってきた所で、毎日の祈りも、そして冬祭りも一度も欠かす事なく続けて来たんだもの。ルフェリットの神様も勿論蔑ろにするような事はないけれど、フィンレーの神様はグランディス様だ。そのグランディス様が眠る地をフィンレーが離れる筈がない。
あ、えっと、話題が逸れてしまったけれど、今回の話し合いは陞爵によって賜った公爵領の方で行われる事になった。さすがにねグリーンベリーに集まって会議をするのはグリーンベリーにとってもあまり良くないだろうって事になってお祖父様がグリーンベリーと同じくらい公爵領も結界の強化をしたんだって。実の販売も始まっているし、来年の実の話し合いは公爵領になるかな。
「エディ、呼び出してすまないね」
「いえ、こちらこそ声をかけていただきましてありがとうございます」
「中々グリーンベリーに行かれないが、順調そうだね。白イチゴの事も噂が届いたよ」
「はい。来年の春には領民たちが育てたイチゴの販売が出来そうです」
「ああ、温室の方は差別化を図るのだろう?」
「そのつもりでおります」
父様に声をかけられた後、他の人たちからも声をかけられて挨拶をした。この中では僕が一番爵位も年も下なのできちんとしないとね。
今回の会議には父様と兄様、そしてハワード先生とニールデン公爵が参加をしている。公爵領にいるお祖父様はフィンレーの当主が来ているので、代理は出るべきではないと不参加だ。
兄様は僕からお願いをして参加を許可してもらっている。
「では早速ですが、昨年あった事件の今後について現時点で分かっている事と、マルリカの実がルフェリットでも販売をされた事によって起きている事態について。そして、それらによって来年にどのような事が出来るかを考える話し合いをしていこうと思います。こちらで素案をまとめ、公・侯爵と王家を含めた上位家の者たちとの会議を経て、どこまでの爵位の者たちの承認を得ていくかなども順に決め行く事になると思っています。まずは昨年起きた人身売買についてです……」
ハワード先生の言葉で会議が始まった。
-------
ちょっと固い感じの事が2話くらい?続きます。多分。2話。多分……
今、シルヴァン様は過保護モードに入っていて、どうにもならないので、教育的指導をしていく予定とも書いてあった。教育的指導ってなんだろう。とにかくルシルが元気そうで良かったし、シルヴァン様は相変わらずのようで、ちょっと笑ってしまったよ。
多分、ルシルのやる事為す事危ないからと一人では何もさせない勢いなのかな。
これも兄様に言ったら眉間に三本くらい皺を寄せて、揉んでいた。
シェルバーネの麦は次の畑に苗を植えた。今度は少し遅い秋蒔き。収穫をした麦の葉や茎や根などを肥料にして混ぜて、少し置いてからの植え付け。違う季節でもうまくいってくれるといいなって思っている。それほど寒くはならないみたいだけど、それでも夏の暑さに比べれば気温は低いので、収穫は四の月の後半を予定している。
ちなみにこの前植えた所には前と同じように五の月の終わりに植える予定なんだけど、この前収穫した麦を苗にしてから植える事にした。その間に新しい畑の場所を増やしていく。直播はその後から。
この辺りはお祖父様ともお話をして助言をいただいた。
そしてその直播が成功をしたら一旦は僕の手を離れる事になるかな。勿論相談は乗るけれど、後はシェルバーネの人達が考えていかなければね。
そう。少しずつ、少しずつ、死の砂漠に緑を取り戻す為に、麦だけでなく他の植物も育てられないかも試していきたいって思う人が出て来ているみたいだから。
◇ ◇ ◇
十一の月が終わりに近い頃に父様から連絡が来た。十二の月になるとフィンレーの冬祭りがあってその後は年末と新年に向けてのあれこれ細かい事があるので、その前にっていう事になったんだ。
話はマルリカの実の事だった。
去年から起きていた事件は一旦幕引きをしたものの、その後をエルグランド家もシェルバーネの王家も、そしてフィンレーやルフェリットの王室も色々と調査を続けていた。
その事に関しての報告を一度しておこうって事になったんだ。
今回集まったのはフィンレー公爵領。
ええっと元のフィンレー領も公爵領なんだけど、公爵領は王都を守るように囲んでいる特別な領地なので、フィンレーも、そして同じように公爵領を賜ったスタンリーも、元々の領地を非公式に侯爵領って呼んでいる。
そして現状はお祖父様が公爵領に当主代理として住んでいらして、父様は侯爵領にいる。王都のタウンハウスは学園に通う双子たちが住んでいて、週の半分くらいは兄様が父様の書斎だった所でお仕事をしている。
この辺りは陞爵をした時とあんまり変わっていないかな。
でも少し落ち着いてから父様が教えてくれたんだけど、陞爵をして公爵になって公爵領を賜る時に元の領地から出るのが普通と言う者もいたらしい。
父様は元の領地はフィンレーが守るべき地なので、それならば公爵への陞爵と公爵領の拝領を辞退するって言って、王様たちがものすごく慌てたらしい。うん、『首』の関連でやっぱり一番の功績があったのって父様たちだと思うんだよね。そこが辞退とかありえないよね。
だけどフィンレーには精霊王が住まう森と精霊樹があって、その森の中にはグランディス様が眠っていらっしゃるからあの地を手放すわけにはいかないんだ。
そして多分あの森は『厄災』の身体が精霊によって封じられている。勿論それは確かめた事ではないし、真実なのかは分からないけれど、おそらくはそうなんだろうってフィンレーは、そして賢者であるハワード先生も、王家も思っている。
それにこの地はずっとずっとフィンレーが守ってきた所で、毎日の祈りも、そして冬祭りも一度も欠かす事なく続けて来たんだもの。ルフェリットの神様も勿論蔑ろにするような事はないけれど、フィンレーの神様はグランディス様だ。そのグランディス様が眠る地をフィンレーが離れる筈がない。
あ、えっと、話題が逸れてしまったけれど、今回の話し合いは陞爵によって賜った公爵領の方で行われる事になった。さすがにねグリーンベリーに集まって会議をするのはグリーンベリーにとってもあまり良くないだろうって事になってお祖父様がグリーンベリーと同じくらい公爵領も結界の強化をしたんだって。実の販売も始まっているし、来年の実の話し合いは公爵領になるかな。
「エディ、呼び出してすまないね」
「いえ、こちらこそ声をかけていただきましてありがとうございます」
「中々グリーンベリーに行かれないが、順調そうだね。白イチゴの事も噂が届いたよ」
「はい。来年の春には領民たちが育てたイチゴの販売が出来そうです」
「ああ、温室の方は差別化を図るのだろう?」
「そのつもりでおります」
父様に声をかけられた後、他の人たちからも声をかけられて挨拶をした。この中では僕が一番爵位も年も下なのできちんとしないとね。
今回の会議には父様と兄様、そしてハワード先生とニールデン公爵が参加をしている。公爵領にいるお祖父様はフィンレーの当主が来ているので、代理は出るべきではないと不参加だ。
兄様は僕からお願いをして参加を許可してもらっている。
「では早速ですが、昨年あった事件の今後について現時点で分かっている事と、マルリカの実がルフェリットでも販売をされた事によって起きている事態について。そして、それらによって来年にどのような事が出来るかを考える話し合いをしていこうと思います。こちらで素案をまとめ、公・侯爵と王家を含めた上位家の者たちとの会議を経て、どこまでの爵位の者たちの承認を得ていくかなども順に決め行く事になると思っています。まずは昨年起きた人身売買についてです……」
ハワード先生の言葉で会議が始まった。
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ちょっと固い感じの事が2話くらい?続きます。多分。2話。多分……
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