悪役令息にならなかったので、僕は兄様と幸せになりました!

tamura-k

文字の大きさ
上 下
18 / 109

お気に入り1234記念『彼誰時の独り言』(かわたれどきのひとりごと)

しおりを挟む
 結婚をしてからしばらくの間、目が覚めて、隣にある温もりにハッとして顔を上げて確かめて、それからホッとしてもう一度そのぬくもりの隣に戻る。そんな事をしていた。
 戻ると無意識にもぞもぞと近づいて来る身体が愛おしくて、そっと抱き寄せる。
 それがひどく嬉しくて、愛おしかった。


 グリーンベリーはフィンレーに比べて冬でもあまり雪が降らない。
 勿論寒くはなるけれど、それでも一面が銀世界になるような事も、魔道具が設置をされていない廊下の寒さに驚くような事もなく、夏は夏だと分かるような、冬は冬だと分かるような、そんな気候の中で農村地域と鉱石や金属などを産出したり加工をしたりする地域に分かれている興味深い領だ。
 色々な事に興味を持って、自分の中に吸収をしていくエディに良く合っていると思う。

 十二の時に自分の気持ちを自覚した。
 そうして、ただただ驚かせないように、怖がらせないように、そして絶対的な味方としながらも、大好きだよと繰り返した。
 向けられている気持ちは、家族に対するものだとしても、勿論それだけで終わらせるわけにはいかない。
 だけど、それでもエディの中でその気持ちが家族以上のものにならなければ、その時は……

「そんな事を、思ったりもしたんだけどね……」

 部屋の中はまだ薄暗くて、まだ起きるには早い時間だと伝えてくる。

「……でも、諦めるつもりはなかったけどね」

 呟きながらそっとミルクティ色の髪に口づけて、私はそっと目を閉じた。


*****


 けれどその数日後……

「ふふ……兄様の寝顔だ……」」

 小さな声が聞こえて来て、ふわりと意識が浮かんだけれど、見つめられている感覚にそのままで居ると温かなぬくもりがもぞもぞとしがみついてくる。

「……うん。夢じゃない」

 聞こえてきたほっとしたような色を含んだ言葉。
 どうやら、私たちはお互いに同じような事をしていたらしい。
 顔がにやけそうになってくるのを隠すように、寝返りを装ってしがみついている身体を抱き寄せた。

 腕の中の身体はすぐに力が抜けて、小さな寝息が聞こえ始める。



 ねぇ、エディ。私たちは似た者夫婦なのかもしれないね。



-----------
かわたれどき(彼誰時) 人の見分けがつきにくい夜明けの薄暗い時刻
  ↕
たそがれどき(黄昏時) 
しおりを挟む
感想 136

あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました

山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。 王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。 レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。 3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。 将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ! 「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」 ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている? 婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...