悪役令息にならなかったので、僕は兄様と幸せになりました!

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26 王国からのお布令

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 グリーンベリーで会議をして、その翌日は王城で形だけの覚書の締結。
 そして更にその翌日、ルフェリット国内にマルリカの実に関するお布令が出た。

 後継者の争いなどが起こりうる貴族位に関しては、先に貴族会議が設けられて父様がブチ切れる様な時間を使って審議が行われていたんだけど、爵位はないけれどそれなりに大きな家や地位を持っている人達、それに平民にとってはまさに寝耳に水で、お布令ふれが出た直後には、それぞれの領の役所に人が押しかけたり、ものすごい量の書簡が送られてきた。

 本当なら前もって国からこういうお布令が出るから、こういう対応を取ってほしいっていうのを領内の各役所に申し送りをしておく方がいいんだけど、国からのお布令は一斉に行われるから、領主たちはお布令の内容を分かっていても、役人たち全員に伝えるわけにはいかない。

 だからお布令が出たばかりの時はグリーンベリーもちょっと大変だったんだ。
 でもお布令が出た直後にそれぞれの街の役所に向けてお布令に関する対応をまとめた書簡を一斉に送ったから、どうにか乗り切ったという感じかな。
 それに面倒な案件は執務室に回させるようにしたからね。その辺りはブライアン君や屋敷からスティーブ君も手伝いに来てくれて、あとは兄様もこちらを手伝うように言われたってグリーンベリーに詰めてくれたから、そんなに大きな混乱にはならなかった。

 とりあえずマルリカの実が販売される初めての年。王国として各領に課せられたのは
 ・子を望む者に販売をする。
 ・受け取りはそれぞれの領都の神殿とする。
 ・受け取る際は必ず使用をする者が来て水晶を通して身元を確認する。
 ・転売や受け取った者以外の不正な使用をしたら罰を与える。
 この四点だ。
 
 もっとも領ごとに注意する点が異なる場合もあるだろうからって、各領で決め事を作ってもいいという事にはなっている。だけど必ず国へ届け出をする事が義務付けられている。

 ちなみに実の販売はお布令の翌週から。
 さすがに神殿には前もって知らせが来ていて、領主とはやりとりをしていたけどね。
 それでもどれくらいの人が訪れるのか分からないし、それぞれの町の神殿から領都の神殿に飛ぶ魔法陣の設置もあって、その準備も結構大変なんだよ。勿論防犯的な事もあるから、遠くの村に住んでいる人は、町の神殿までは申し訳ないけど、自力で移動をしてもらうしかない。

 それから、一番気を遣うのは受け渡し。やっぱりあんまり公になるのはっていう人もいるだろうし、貴族と平民が同じ場所に並ぶわけにはいかないしね。
 だから大神官から授与されるのは貴族。神官長から授与されるのは平民。
 場所もグリーンベリーは神殿の入口を分けた。

「とりあえず、問い合わせと文句は一段落した感じかな~」
「ミッチェル、文句って言わない」
「ええ? だってどう聞いても文句だったでしょう。使うつもりがないなら使わなければいいだけの話なのに、どうして一言物申すみたいにしないと納得できないんだろうね」

 ミッチェル君の言葉を聞きながら僕とブライアン君とスティーブ君は苦笑いを浮かべた。
 ちなみによく分からないけれど、街では小さな衝突が起きていて、街の警ら隊だけではなく、ジョシュア達の魔導騎士団とクラウス君達の騎士団が交代で見回りをしている。
 それでもグリーンベリーは大人しい方らしい。
 
「でもさ~、誰が使ったかなんて、買った後は実際には調べようがないんだよね」

 そうはっきりと言い切ったのは勿論ミッチェル君だ。

「罰則って言ってもどこまで調べられるのか分からないものに罰を与えるのは難しいよね」

 そうなんだ。数を決めたりしたあのグリーンベリーでの話し合いでもそれは皆感じていたんだ。でもさすがにマルリカの実を買った人全員が実をきちんと自分たちで使ったかなんて確認するのは無理だよね。 
 じつは兄様とも話をしたんだ、これが付与出来たらいいのかもしれないねって。
 実を受け取りに来た人の身元は水晶でしっかり分かっているんだから、その二人以外は使えないっていうのなら、必然的に他の人には使えないって事だよね。 

 ただ、実に対しての付与って言うのが本当に出来るのかはまだ分からないんだ。
 例えば新しい効能の薬草を作る時には、沢山のサンプルを作って何度も何度も鑑定を繰り返して作り上げていくんだ。でもこの実の場合は実の力はそのままで、条件だけを付けるんだよね。実を受けた人しか使えないって。
 しかもこれが一つならまだ簡単だったのかもしれないけど、実は三つ使う。
 兄様は詳しくは話してくれなかったんだけど、実は三つとも使う二人で分け合うんだって。一つ目は子を産む側が多く、二つ目は相手が多く、そして三つめは二人で同じだけ分け合って食べるんだって。
 それって単純そうに思えて、ものすごく複雑だと思うんだ。

 それにその実は赤ちゃんになるわけで、何か付与を付けた事でどう言う変化があるのかを実験をするわけにはいかない。
 あの時は、事件の抑止力になるような力を付与出来たらなんて考えていたけれど、よくよく考えてみれば結構大変な事だなって思ったんだ。

「新しい事を入れるって本当に難しいね」

 ミッチェル君がポツリと声を漏らした。

「でもそれくらい慎重になった方がいい案件だと思う。安易に考えてはいけないと思うんだ。起きた事を考えても……」

 ブライアン君が顔を強張らせるようにしてそう言った。
 

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説明回で文章が多いので一旦切ります。
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