28 / 109
26 王国からのお布令
しおりを挟む
グリーンベリーで会議をして、その翌日は王城で形だけの覚書の締結。
そして更にその翌日、ルフェリット国内にマルリカの実に関するお布令が出た。
後継者の争いなどが起こりうる貴族位に関しては、先に貴族会議が設けられて父様がブチ切れる様な時間を使って審議が行われていたんだけど、爵位はないけれどそれなりに大きな家や地位を持っている人達、それに平民にとってはまさに寝耳に水で、お布令が出た直後には、それぞれの領の役所に人が押しかけたり、ものすごい量の書簡が送られてきた。
本当なら前もって国からこういうお布令が出るから、こういう対応を取ってほしいっていうのを領内の各役所に申し送りをしておく方がいいんだけど、国からのお布令は一斉に行われるから、領主たちはお布令の内容を分かっていても、役人たち全員に伝えるわけにはいかない。
だからお布令が出たばかりの時はグリーンベリーもちょっと大変だったんだ。
でもお布令が出た直後にそれぞれの街の役所に向けてお布令に関する対応をまとめた書簡を一斉に送ったから、どうにか乗り切ったという感じかな。
それに面倒な案件は執務室に回させるようにしたからね。その辺りはブライアン君や屋敷からスティーブ君も手伝いに来てくれて、あとは兄様もこちらを手伝うように言われたってグリーンベリーに詰めてくれたから、そんなに大きな混乱にはならなかった。
とりあえずマルリカの実が販売される初めての年。王国として各領に課せられたのは
・子を望む者に販売をする。
・受け取りはそれぞれの領都の神殿とする。
・受け取る際は必ず使用をする者が来て水晶を通して身元を確認する。
・転売や受け取った者以外の不正な使用をしたら罰を与える。
この四点だ。
もっとも領ごとに注意する点が異なる場合もあるだろうからって、各領で決め事を作ってもいいという事にはなっている。だけど必ず国へ届け出をする事が義務付けられている。
ちなみに実の販売はお布令の翌週から。
さすがに神殿には前もって知らせが来ていて、領主とはやりとりをしていたけどね。
それでもどれくらいの人が訪れるのか分からないし、それぞれの町の神殿から領都の神殿に飛ぶ魔法陣の設置もあって、その準備も結構大変なんだよ。勿論防犯的な事もあるから、遠くの村に住んでいる人は、町の神殿までは申し訳ないけど、自力で移動をしてもらうしかない。
それから、一番気を遣うのは受け渡し。やっぱりあんまり公になるのはっていう人もいるだろうし、貴族と平民が同じ場所に並ぶわけにはいかないしね。
だから大神官から授与されるのは貴族。神官長から授与されるのは平民。
場所もグリーンベリーは神殿の入口を分けた。
「とりあえず、問い合わせと文句は一段落した感じかな~」
「ミッチェル、文句って言わない」
「ええ? だってどう聞いても文句だったでしょう。使うつもりがないなら使わなければいいだけの話なのに、どうして一言物申すみたいにしないと納得できないんだろうね」
ミッチェル君の言葉を聞きながら僕とブライアン君とスティーブ君は苦笑いを浮かべた。
ちなみによく分からないけれど、街では小さな衝突が起きていて、街の警ら隊だけではなく、ジョシュア達の魔導騎士団とクラウス君達の騎士団が交代で見回りをしている。
それでもグリーンベリーは大人しい方らしい。
「でもさ~、誰が使ったかなんて、買った後は実際には調べようがないんだよね」
そうはっきりと言い切ったのは勿論ミッチェル君だ。
「罰則って言ってもどこまで調べられるのか分からないものに罰を与えるのは難しいよね」
そうなんだ。数を決めたりしたあのグリーンベリーでの話し合いでもそれは皆感じていたんだ。でもさすがにマルリカの実を買った人全員が実をきちんと自分たちで使ったかなんて確認するのは無理だよね。
じつは兄様とも話をしたんだ、これが付与出来たらいいのかもしれないねって。
実を受け取りに来た人の身元は水晶でしっかり分かっているんだから、その二人以外は使えないっていうのなら、必然的に他の人には使えないって事だよね。
ただ、実に対しての付与って言うのが本当に出来るのかはまだ分からないんだ。
例えば新しい効能の薬草を作る時には、沢山のサンプルを作って何度も何度も鑑定を繰り返して作り上げていくんだ。でもこの実の場合は実の力はそのままで、条件だけを付けるんだよね。実を受けた人しか使えないって。
しかもこれが一つならまだ簡単だったのかもしれないけど、実は三つ使う。
兄様は詳しくは話してくれなかったんだけど、実は三つとも使う二人で分け合うんだって。一つ目は子を産む側が多く、二つ目は相手が多く、そして三つめは二人で同じだけ分け合って食べるんだって。
それって単純そうに思えて、ものすごく複雑だと思うんだ。
それにその実は赤ちゃんになるわけで、何か付与を付けた事でどう言う変化があるのかを実験をするわけにはいかない。
あの時は、事件の抑止力になるような力を付与出来たらなんて考えていたけれど、よくよく考えてみれば結構大変な事だなって思ったんだ。
「新しい事を入れるって本当に難しいね」
ミッチェル君がポツリと声を漏らした。
「でもそれくらい慎重になった方がいい案件だと思う。安易に考えてはいけないと思うんだ。起きた事を考えても……」
ブライアン君が顔を強張らせるようにしてそう言った。
----------
説明回で文章が多いので一旦切ります。
そして更にその翌日、ルフェリット国内にマルリカの実に関するお布令が出た。
後継者の争いなどが起こりうる貴族位に関しては、先に貴族会議が設けられて父様がブチ切れる様な時間を使って審議が行われていたんだけど、爵位はないけれどそれなりに大きな家や地位を持っている人達、それに平民にとってはまさに寝耳に水で、お布令が出た直後には、それぞれの領の役所に人が押しかけたり、ものすごい量の書簡が送られてきた。
本当なら前もって国からこういうお布令が出るから、こういう対応を取ってほしいっていうのを領内の各役所に申し送りをしておく方がいいんだけど、国からのお布令は一斉に行われるから、領主たちはお布令の内容を分かっていても、役人たち全員に伝えるわけにはいかない。
だからお布令が出たばかりの時はグリーンベリーもちょっと大変だったんだ。
でもお布令が出た直後にそれぞれの街の役所に向けてお布令に関する対応をまとめた書簡を一斉に送ったから、どうにか乗り切ったという感じかな。
それに面倒な案件は執務室に回させるようにしたからね。その辺りはブライアン君や屋敷からスティーブ君も手伝いに来てくれて、あとは兄様もこちらを手伝うように言われたってグリーンベリーに詰めてくれたから、そんなに大きな混乱にはならなかった。
とりあえずマルリカの実が販売される初めての年。王国として各領に課せられたのは
・子を望む者に販売をする。
・受け取りはそれぞれの領都の神殿とする。
・受け取る際は必ず使用をする者が来て水晶を通して身元を確認する。
・転売や受け取った者以外の不正な使用をしたら罰を与える。
この四点だ。
もっとも領ごとに注意する点が異なる場合もあるだろうからって、各領で決め事を作ってもいいという事にはなっている。だけど必ず国へ届け出をする事が義務付けられている。
ちなみに実の販売はお布令の翌週から。
さすがに神殿には前もって知らせが来ていて、領主とはやりとりをしていたけどね。
それでもどれくらいの人が訪れるのか分からないし、それぞれの町の神殿から領都の神殿に飛ぶ魔法陣の設置もあって、その準備も結構大変なんだよ。勿論防犯的な事もあるから、遠くの村に住んでいる人は、町の神殿までは申し訳ないけど、自力で移動をしてもらうしかない。
それから、一番気を遣うのは受け渡し。やっぱりあんまり公になるのはっていう人もいるだろうし、貴族と平民が同じ場所に並ぶわけにはいかないしね。
だから大神官から授与されるのは貴族。神官長から授与されるのは平民。
場所もグリーンベリーは神殿の入口を分けた。
「とりあえず、問い合わせと文句は一段落した感じかな~」
「ミッチェル、文句って言わない」
「ええ? だってどう聞いても文句だったでしょう。使うつもりがないなら使わなければいいだけの話なのに、どうして一言物申すみたいにしないと納得できないんだろうね」
ミッチェル君の言葉を聞きながら僕とブライアン君とスティーブ君は苦笑いを浮かべた。
ちなみによく分からないけれど、街では小さな衝突が起きていて、街の警ら隊だけではなく、ジョシュア達の魔導騎士団とクラウス君達の騎士団が交代で見回りをしている。
それでもグリーンベリーは大人しい方らしい。
「でもさ~、誰が使ったかなんて、買った後は実際には調べようがないんだよね」
そうはっきりと言い切ったのは勿論ミッチェル君だ。
「罰則って言ってもどこまで調べられるのか分からないものに罰を与えるのは難しいよね」
そうなんだ。数を決めたりしたあのグリーンベリーでの話し合いでもそれは皆感じていたんだ。でもさすがにマルリカの実を買った人全員が実をきちんと自分たちで使ったかなんて確認するのは無理だよね。
じつは兄様とも話をしたんだ、これが付与出来たらいいのかもしれないねって。
実を受け取りに来た人の身元は水晶でしっかり分かっているんだから、その二人以外は使えないっていうのなら、必然的に他の人には使えないって事だよね。
ただ、実に対しての付与って言うのが本当に出来るのかはまだ分からないんだ。
例えば新しい効能の薬草を作る時には、沢山のサンプルを作って何度も何度も鑑定を繰り返して作り上げていくんだ。でもこの実の場合は実の力はそのままで、条件だけを付けるんだよね。実を受けた人しか使えないって。
しかもこれが一つならまだ簡単だったのかもしれないけど、実は三つ使う。
兄様は詳しくは話してくれなかったんだけど、実は三つとも使う二人で分け合うんだって。一つ目は子を産む側が多く、二つ目は相手が多く、そして三つめは二人で同じだけ分け合って食べるんだって。
それって単純そうに思えて、ものすごく複雑だと思うんだ。
それにその実は赤ちゃんになるわけで、何か付与を付けた事でどう言う変化があるのかを実験をするわけにはいかない。
あの時は、事件の抑止力になるような力を付与出来たらなんて考えていたけれど、よくよく考えてみれば結構大変な事だなって思ったんだ。
「新しい事を入れるって本当に難しいね」
ミッチェル君がポツリと声を漏らした。
「でもそれくらい慎重になった方がいい案件だと思う。安易に考えてはいけないと思うんだ。起きた事を考えても……」
ブライアン君が顔を強張らせるようにしてそう言った。
----------
説明回で文章が多いので一旦切ります。
357
お気に入りに追加
3,124
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!
Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。
転生前も寝たきりだったのに。
次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。
でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。
何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。
病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。
過去を克服し、二人の行く末は?
ハッピーエンド、結婚へ!

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
【完結】「『王太子を呼べ!』と国王陛下が言っています。国王陛下は激オコです」
まほりろ
恋愛
王命で決められた公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢との婚約を発表した王太子に、国王陛下が激オコです。
※他サイトにも投稿しています。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
小説家になろうで日間総合ランキング3位まで上がった作品です。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる