27 / 109
25 決め事
しおりを挟む
起きていた事を確認する為の話は、これまでに父様や兄様、そしてシャマル様から聞いていた内容がほとんどだった。
ただ時間が経って進展をしていた事もある。シェルバーネで保護をされ、帰国を望んだ被害者たちがルフェリットに帰ってきていた。元の場所に戻る事を選択した者。ルフェリットには戻りたいが異なる場所で暮らす事を望む者に分かれた。
いずれにしても彼らにはシェルバーネから慰謝料という形でお金も出されている事もあり、ルフェリットの中では観察対象者という扱いとなる事が決まった。
ちなみに子供を連れて帰国した人はいなかったという。生まれた子供は魔力持ちだったのでシェルバーネでは保護の対象となり、まずは神殿の預かりとなったそうだ。
また、現時点で子供を身ごもっている人もいて、その人たちは全員シェルバーネに残る事を選んだという報告があった。勿論奴隷や妾などではなく全員が保護対象となり、子供が生まれた後にどうするかを改めて選ぶ事が出来る事になっている。
加害者側についての洗い出しについては今の段階では一旦終了をし、今後同じような事が起きないか再発の防止を強化する事になった。またシェルバーネ側では奴隷を売った側にも買った側にも罰が設けられたのはシャマル様から聞いたけれど、それが速やかに執行され、後処理も終わったそうだ。
「マルリカの実がこれからもシェルバーネにある限り、きちんとした処罰を行う事が肝心です。これは人が己の欲望の為に使ってよいものではないのです。神聖な物としてきちんと後に繋いでいかなければなりません」
シャマル様は厳しい顔をしてそう言った。
一方ルフェリット側では人身売買に関しての法と奴隷に関する法をハワード先生を中心に見直して、強化をしたという報告がされた。またシェルバーネ側の組織との関りもしっかりと掴み、その関りなどにより、極刑や終身の投獄、家財没収の上強制労働といった刑が執行されていた。ルフェリットとしてはかなりの早さだが、多分マルリカの実の告知を前にそういった懸念事項を残しておきたくなかったんだろうなって思った。
そして話は勿論今後についての事になった。
起きてしまった事に関しては出来る限りの事をして、今後への監視も続けていくがそれ以外にも対策が取れないか、それが今回の話し合いの中心になると聞いていた。
「許しがたい事件があり、両国で法などを整えて今後同じような事が起きないように努める事になっておりましたが、それとは別に犯罪抑制の為に何か出来ないかという話を持ち帰っていただきました。その結果をご報告いただきたいと存じます」
ニールデン公爵の言葉に最初に口を開いたのはシェルバーネの宰相次官だった。
「ではこちらからでよろしいでしょうか。私どもでは昔は森などにマルリカ自体が自生をしておりましたので、使いたい者は手に入れて使うという意識が当り前でした。しかし近年は木が枯れ落ちたり実を付けなくなったりする事が多く、実は誰でも手に入れられるものではなく、金品にて買い取るものに変わっていきました。ですが昨年こちらから実を下ろしていただき、購入額を下げた事がこの犯罪を招いたのかもしれないという話も出ました。しかし価格が上がれば一定数の物しかマルリカの実を使う事が出来ない。元より我国では魔力量の問題により使用できない者が多い。シェルバーネにとっては砂漠の増加と共に、人口の減少は大きな課題です。ですので、価格は引き続き抑えると同時に、実を扱える所を絞り、そこに行く為の魔道具を作成し、役場に設置。必ず使用する本人たちが受け取りに来る事と、その際身元の確認を行う事でどこまで防ぐ事が出来るのが分かりませんが、この案で動いております。ルフェリット国の方で何か良い案がありましたらお聞きしたいと思っております」
なるほど、実を受け取れる人を確認して渡す方法か。うん。身元がきちんとした人に渡す事で、万が一それが転売されても繋がりは残される。
「実の受け取りについてはルフェリットでも同じような事が挙がりました。我国では各領の神殿で6歳の時に魔法鑑定をしております。それにより個人の身元鑑定は可能になるかと。必ず身元を確認し、受け取りと違う者が使った場合は罰則を。転売なども同じく罰則を科す予定です」
「やはり受け渡しの身元確認くらいですね。それを行った事でどれくらいの抑止力になるのかは今後の課題ですね。とりあえずは人身売買というような犯罪を根絶やしにする事が重要です」
「はい」
二国間の間で、今年は実が誰に渡ったのかをしっかりと把握し、万が一他者への転売などがあった場合は罰則がある事が決められた。
人を攫ったり、売ったり、買ったりする人たちへの罰則。
実を手に入れるための方法の整備。
今年の状況を見て次年度を考えていく。
一度に全てが出来なくてもいい。父様の言葉が僕の頭の中に繰り返された。
-----------
今出来る事を……ですね。
ただ時間が経って進展をしていた事もある。シェルバーネで保護をされ、帰国を望んだ被害者たちがルフェリットに帰ってきていた。元の場所に戻る事を選択した者。ルフェリットには戻りたいが異なる場所で暮らす事を望む者に分かれた。
いずれにしても彼らにはシェルバーネから慰謝料という形でお金も出されている事もあり、ルフェリットの中では観察対象者という扱いとなる事が決まった。
ちなみに子供を連れて帰国した人はいなかったという。生まれた子供は魔力持ちだったのでシェルバーネでは保護の対象となり、まずは神殿の預かりとなったそうだ。
また、現時点で子供を身ごもっている人もいて、その人たちは全員シェルバーネに残る事を選んだという報告があった。勿論奴隷や妾などではなく全員が保護対象となり、子供が生まれた後にどうするかを改めて選ぶ事が出来る事になっている。
加害者側についての洗い出しについては今の段階では一旦終了をし、今後同じような事が起きないか再発の防止を強化する事になった。またシェルバーネ側では奴隷を売った側にも買った側にも罰が設けられたのはシャマル様から聞いたけれど、それが速やかに執行され、後処理も終わったそうだ。
「マルリカの実がこれからもシェルバーネにある限り、きちんとした処罰を行う事が肝心です。これは人が己の欲望の為に使ってよいものではないのです。神聖な物としてきちんと後に繋いでいかなければなりません」
シャマル様は厳しい顔をしてそう言った。
一方ルフェリット側では人身売買に関しての法と奴隷に関する法をハワード先生を中心に見直して、強化をしたという報告がされた。またシェルバーネ側の組織との関りもしっかりと掴み、その関りなどにより、極刑や終身の投獄、家財没収の上強制労働といった刑が執行されていた。ルフェリットとしてはかなりの早さだが、多分マルリカの実の告知を前にそういった懸念事項を残しておきたくなかったんだろうなって思った。
そして話は勿論今後についての事になった。
起きてしまった事に関しては出来る限りの事をして、今後への監視も続けていくがそれ以外にも対策が取れないか、それが今回の話し合いの中心になると聞いていた。
「許しがたい事件があり、両国で法などを整えて今後同じような事が起きないように努める事になっておりましたが、それとは別に犯罪抑制の為に何か出来ないかという話を持ち帰っていただきました。その結果をご報告いただきたいと存じます」
ニールデン公爵の言葉に最初に口を開いたのはシェルバーネの宰相次官だった。
「ではこちらからでよろしいでしょうか。私どもでは昔は森などにマルリカ自体が自生をしておりましたので、使いたい者は手に入れて使うという意識が当り前でした。しかし近年は木が枯れ落ちたり実を付けなくなったりする事が多く、実は誰でも手に入れられるものではなく、金品にて買い取るものに変わっていきました。ですが昨年こちらから実を下ろしていただき、購入額を下げた事がこの犯罪を招いたのかもしれないという話も出ました。しかし価格が上がれば一定数の物しかマルリカの実を使う事が出来ない。元より我国では魔力量の問題により使用できない者が多い。シェルバーネにとっては砂漠の増加と共に、人口の減少は大きな課題です。ですので、価格は引き続き抑えると同時に、実を扱える所を絞り、そこに行く為の魔道具を作成し、役場に設置。必ず使用する本人たちが受け取りに来る事と、その際身元の確認を行う事でどこまで防ぐ事が出来るのが分かりませんが、この案で動いております。ルフェリット国の方で何か良い案がありましたらお聞きしたいと思っております」
なるほど、実を受け取れる人を確認して渡す方法か。うん。身元がきちんとした人に渡す事で、万が一それが転売されても繋がりは残される。
「実の受け取りについてはルフェリットでも同じような事が挙がりました。我国では各領の神殿で6歳の時に魔法鑑定をしております。それにより個人の身元鑑定は可能になるかと。必ず身元を確認し、受け取りと違う者が使った場合は罰則を。転売なども同じく罰則を科す予定です」
「やはり受け渡しの身元確認くらいですね。それを行った事でどれくらいの抑止力になるのかは今後の課題ですね。とりあえずは人身売買というような犯罪を根絶やしにする事が重要です」
「はい」
二国間の間で、今年は実が誰に渡ったのかをしっかりと把握し、万が一他者への転売などがあった場合は罰則がある事が決められた。
人を攫ったり、売ったり、買ったりする人たちへの罰則。
実を手に入れるための方法の整備。
今年の状況を見て次年度を考えていく。
一度に全てが出来なくてもいい。父様の言葉が僕の頭の中に繰り返された。
-----------
今出来る事を……ですね。
364
お気に入りに追加
3,126
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる