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15 僕の出来る事
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兄様から色々な事を聞いて僕は再び熱を出した。
情けない気持ちになりながら、それでも聞いた事を嘆くだけでなく、何が出来るのかを考えなければと思う気持ちの方が強くて、兄様には「一人で無茶をしないって約束をしてね」と言われてしまい、何かをする時はその前に父様と兄様に必ず知らせるという事も約束させられた。
でも元よりそのつもりだった。だって、マルリカの実はシャマル様に預けられて僕が育ててしまったけれど、それはもう僕の手を離れて国同士のやりとりになっている事だから、僕だけで何かをする事は出来ないんだ。それはちゃんと分かっている。ただどうしても頭の中でそんなつもりじゃなかったのにっていう思いが離れなかった。
熱が中々下がらなくて、ベッドの中で過ごしているとマリーが来てくれた。
「エドワード様、お昼ですが、何かお召し上がりになりませんか?」
「……うん。そうだね。何か、果実水とか」
「それはお食事にはなりませんよ」
そう言われて「そうだね」って笑ってパンケーキを頼んだ。控えていたメイドがさっと部屋を出て行く。
「ねぇ、マリー」
「はい」
「僕はマルリカの実を育てた事を後悔はしたくないんだ」
「……はい」
「だけど、親が子供を売ったり、恋人だった人に売られたりする事はなくなってほしいなって思ったよ。勿論魔力量が高いからって攫われたりする事もね」
「そうですね。そうであってほしいと思います」
「でも人の売り買いを取り締まるのは、領ごとで法を決めてもきっと抜け道があると思うから、やっぱり国として定めていかなくていけないと思う。だからそれは父様達に任せておけばいいのかなって思うんだ。それから領ごとにどうしたらそれが無くなるのか、そうしなくてはならなら原因はなんなのかって考えて対策を立てていく方がいいのかなって思う」
「はい」
「僕は今までずっと、僕の出来る事を出来るだけしていきたいと思っていたけれど、今回のマルリカの実に関して起きている色々な事の中で、僕が出来る事って何だろう」
僕がそう尋ねると、マリーはちょっと考え込むような顔をしてからそっと口を開いた。
「……そうですね。マリーには難しい事は分かりませんが、大事な人たちが傷つかない世の中であってほしいと願います。そして、どうしたらいいのかと考える時には一人ではなく、エドワード様の事を大事に思っている方と一緒に考えてゆくのが良いと思います。そうでないときっとその方が淋しく思われると思います。なので、まずは熱を下げて元気になられるのが、今一番出来る事でしょうか」
「……うん。そうだね。大好きな人を淋しい気持ちにさせたらいけないね。ありがとう、マリー。えっと、熱が下がったら、久しぶりに赤ちゃんを抱っこさせてほしいんだけど。いいかな」
話題を変えるようにそう言うとマリーが柔らかな笑みを浮かべた。
「勿論です。エドワード様に抱っこをしていただけるなど光栄な事です」
「ふふふ、大きくなっただろうな」
そう。マリーはお母さんになったんだよ。そして使用人の館を出て、ルーカスと屋敷の近くの家で暮らしている。僕がそうお願いしたんだ。マリーもルーカスも本邸の一室に転移出来る許可を与えているからね。
「もうすぐ9カ月です。最近はつかまり立ちが出来たり、ハイハイが早くて乳母が悲鳴を上げています」
「わぁ、ハリー達の事を思い出すなぁ。どうしてこんな速さで思うほど早いよね」
僕の言葉にマリーは楽しそうに笑った。
「ああ、パンケーキが出来たようですね。今日はベッドの上で召し上がって下さい。アルフレッド様からもそのように申し付かっています。考える事は後にしてまずは身体と頭を休めて下さいませ」
マリーの言葉に僕はコクリと頷いた。
-----------
えへへ、マリーはお母さんになっていました。
情けない気持ちになりながら、それでも聞いた事を嘆くだけでなく、何が出来るのかを考えなければと思う気持ちの方が強くて、兄様には「一人で無茶をしないって約束をしてね」と言われてしまい、何かをする時はその前に父様と兄様に必ず知らせるという事も約束させられた。
でも元よりそのつもりだった。だって、マルリカの実はシャマル様に預けられて僕が育ててしまったけれど、それはもう僕の手を離れて国同士のやりとりになっている事だから、僕だけで何かをする事は出来ないんだ。それはちゃんと分かっている。ただどうしても頭の中でそんなつもりじゃなかったのにっていう思いが離れなかった。
熱が中々下がらなくて、ベッドの中で過ごしているとマリーが来てくれた。
「エドワード様、お昼ですが、何かお召し上がりになりませんか?」
「……うん。そうだね。何か、果実水とか」
「それはお食事にはなりませんよ」
そう言われて「そうだね」って笑ってパンケーキを頼んだ。控えていたメイドがさっと部屋を出て行く。
「ねぇ、マリー」
「はい」
「僕はマルリカの実を育てた事を後悔はしたくないんだ」
「……はい」
「だけど、親が子供を売ったり、恋人だった人に売られたりする事はなくなってほしいなって思ったよ。勿論魔力量が高いからって攫われたりする事もね」
「そうですね。そうであってほしいと思います」
「でも人の売り買いを取り締まるのは、領ごとで法を決めてもきっと抜け道があると思うから、やっぱり国として定めていかなくていけないと思う。だからそれは父様達に任せておけばいいのかなって思うんだ。それから領ごとにどうしたらそれが無くなるのか、そうしなくてはならなら原因はなんなのかって考えて対策を立てていく方がいいのかなって思う」
「はい」
「僕は今までずっと、僕の出来る事を出来るだけしていきたいと思っていたけれど、今回のマルリカの実に関して起きている色々な事の中で、僕が出来る事って何だろう」
僕がそう尋ねると、マリーはちょっと考え込むような顔をしてからそっと口を開いた。
「……そうですね。マリーには難しい事は分かりませんが、大事な人たちが傷つかない世の中であってほしいと願います。そして、どうしたらいいのかと考える時には一人ではなく、エドワード様の事を大事に思っている方と一緒に考えてゆくのが良いと思います。そうでないときっとその方が淋しく思われると思います。なので、まずは熱を下げて元気になられるのが、今一番出来る事でしょうか」
「……うん。そうだね。大好きな人を淋しい気持ちにさせたらいけないね。ありがとう、マリー。えっと、熱が下がったら、久しぶりに赤ちゃんを抱っこさせてほしいんだけど。いいかな」
話題を変えるようにそう言うとマリーが柔らかな笑みを浮かべた。
「勿論です。エドワード様に抱っこをしていただけるなど光栄な事です」
「ふふふ、大きくなっただろうな」
そう。マリーはお母さんになったんだよ。そして使用人の館を出て、ルーカスと屋敷の近くの家で暮らしている。僕がそうお願いしたんだ。マリーもルーカスも本邸の一室に転移出来る許可を与えているからね。
「もうすぐ9カ月です。最近はつかまり立ちが出来たり、ハイハイが早くて乳母が悲鳴を上げています」
「わぁ、ハリー達の事を思い出すなぁ。どうしてこんな速さで思うほど早いよね」
僕の言葉にマリーは楽しそうに笑った。
「ああ、パンケーキが出来たようですね。今日はベッドの上で召し上がって下さい。アルフレッド様からもそのように申し付かっています。考える事は後にしてまずは身体と頭を休めて下さいませ」
マリーの言葉に僕はコクリと頷いた。
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えへへ、マリーはお母さんになっていました。
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