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12 どんな事が起きているのかを知る
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お祖父様が帰ってから、僕は改めてマルリカの実について起きている事を考えてみた。
父様は話をしてくれたけれど、もう少し詳しい事を知りたいと思ったんだ。その事を気付いたのは勿論兄様だった。
「エディに自分で調べさせるより、私が知っている事を話した方が早いし安全だからね」
そう言って兄様は夕食の後、リビングに移動をして、紅茶を飲みながら「何が聞きたい?」と言った。勿論屋敷の中とは言え、遮音魔法は完璧だ。
「王宮の貴族会議で揉めている事は先日父様もお話しくださったし、今日お祖父様も少しお話をして下さったので、なんとなく想像が出来ますが、起きている事件の事をもう少し詳しく知りたいのと、その事に関してどのように対応をされていくと話し合いがされているのか、具体的な話を聞きたいのです」
「うん。分かった。だけどそれを話す前に、エディ、それを聞いてエディは何をしたいと考えているのかな。それをまずは教えてくれる?」
兄様にそう言われて僕はコクリと頷いた。
「起きている事に関して、何か未然に防げるような事が出来ないかなと思ったのです」
「未然に?」
「はい。例えばですが、何か付与のようなものが出来ないかなって。えっとまだちゃんと考えてはいないし、そういう付与が実に出来るのかも分からないんですけど」
「……なるほど、その為にもう少し詳しい情報が欲しいって言う事だね」
「はい」
「分かったよ。でも今分かっている情報は父上が話をした事とあまり変わらないんだ。それでも聞きたいかな」
「はい。お願いします」
「うん。分かった。ただし、途中で聞くのが辛くなったり、我慢が出来なくなったら必ず言う事。いいね」
「分かりました」
兄様が話し出したのは事件が明るみに出たきっかけだった。
「はじめはね、メイソン卿がシェルバーネの人との婚姻が急に増えてきているって言い出した事だったんだ。四年前に国交が正常化して商品や人の行き来が始まり、港がある領を中心にそういった縁が結ばれているんだろうっていう増加は見られたんだけど、昨年の三の月以降の増加はちょっと異常だって思って、シェルバーネにルフェリットの者たちとの婚姻の状況を確認した。ところがこちらが思っていた事と違う答えが返ってきたんだ。ルフェリット人と婚姻を結んだと届けられていたのは貴族たちが多く、次いで地位のある役人や大きな店を持つ商人たち。嫁いだルフェリット人の多くが側室や妾として迎えられている事が分かった。国交正常化の時、シェルバーネは他国の者と縁を結ぶ際には届け出が必要になっていたからね」
「あ、あの思っていた事と違うって……」
「ああ、メイソン卿はシェルバーネの貴族がルフェリットの平民や身分がそれほど高くはない貴族と結婚をするという事に違和感を覚えたんだよ。でもその答えはすぐに出た。父上が前回仰っていたようにマルリカの実を使って魔力量の多い者から生まれた子供は魔力持ちの可能性が高い。そしてエディも以前に聞いたと思うけど、シェルバーネ人は魔力がない者が多く、魔力を持つ者は届け出が必要で、届け出ればかなりの補助金が出る。」
うん。そうだった。確かにその話は聞いた。魔法を使えない人にとって魔法を使える人は脅威にもまるからきちんと把握をしておかなければいけないんだって。その為に届け出と保護を行い魔力持ちが使い潰されたり、悪い事に利用させられたり、自由がなく囲われる事がないようにしているんだって。
魔力持ちが一人出るだけでその家族の生活が保障されるだけのお金が出るような事も言っていた気がする。
「では、その補助金をもらう事を狙ってルフェリットの者と結婚を?」
「うん、それだけではないと思うけれど、補助金の事を考えて結婚をした者もいるだろうね。ただ、貴族はその補助からは外れていて魔力持ちが生まれた場合は国に仕える者として届け出の義務があるらしいよ。でも一族の中から魔力持ちが多く出ればそれなりのメリットはあるんだろう」
「…………」
「エディ?」
兄様に名前を呼ばれて僕は思わず兄様にぎゅっとしがみついた。
「ルフェリットでも家同士の結びつきとか、色々とあるのは分かっているけれど、こういう話を聞くと悲しい気持ちになりますね。僕は、好きな人と結婚出来て良かったです」
その途端兄様は僕の事を抱き締めてきた。
「うん。私も好きな人と結婚出来て良かった。さて、続きは部屋で話そうか。いつまでもリビングにいては皆の片づけが終わらないからね」
「はい」
僕たちは遮音の魔法を解いて、自分たちの部屋に移動した。
----------
思い出したように甘みを添えるwww
父様は話をしてくれたけれど、もう少し詳しい事を知りたいと思ったんだ。その事を気付いたのは勿論兄様だった。
「エディに自分で調べさせるより、私が知っている事を話した方が早いし安全だからね」
そう言って兄様は夕食の後、リビングに移動をして、紅茶を飲みながら「何が聞きたい?」と言った。勿論屋敷の中とは言え、遮音魔法は完璧だ。
「王宮の貴族会議で揉めている事は先日父様もお話しくださったし、今日お祖父様も少しお話をして下さったので、なんとなく想像が出来ますが、起きている事件の事をもう少し詳しく知りたいのと、その事に関してどのように対応をされていくと話し合いがされているのか、具体的な話を聞きたいのです」
「うん。分かった。だけどそれを話す前に、エディ、それを聞いてエディは何をしたいと考えているのかな。それをまずは教えてくれる?」
兄様にそう言われて僕はコクリと頷いた。
「起きている事に関して、何か未然に防げるような事が出来ないかなと思ったのです」
「未然に?」
「はい。例えばですが、何か付与のようなものが出来ないかなって。えっとまだちゃんと考えてはいないし、そういう付与が実に出来るのかも分からないんですけど」
「……なるほど、その為にもう少し詳しい情報が欲しいって言う事だね」
「はい」
「分かったよ。でも今分かっている情報は父上が話をした事とあまり変わらないんだ。それでも聞きたいかな」
「はい。お願いします」
「うん。分かった。ただし、途中で聞くのが辛くなったり、我慢が出来なくなったら必ず言う事。いいね」
「分かりました」
兄様が話し出したのは事件が明るみに出たきっかけだった。
「はじめはね、メイソン卿がシェルバーネの人との婚姻が急に増えてきているって言い出した事だったんだ。四年前に国交が正常化して商品や人の行き来が始まり、港がある領を中心にそういった縁が結ばれているんだろうっていう増加は見られたんだけど、昨年の三の月以降の増加はちょっと異常だって思って、シェルバーネにルフェリットの者たちとの婚姻の状況を確認した。ところがこちらが思っていた事と違う答えが返ってきたんだ。ルフェリット人と婚姻を結んだと届けられていたのは貴族たちが多く、次いで地位のある役人や大きな店を持つ商人たち。嫁いだルフェリット人の多くが側室や妾として迎えられている事が分かった。国交正常化の時、シェルバーネは他国の者と縁を結ぶ際には届け出が必要になっていたからね」
「あ、あの思っていた事と違うって……」
「ああ、メイソン卿はシェルバーネの貴族がルフェリットの平民や身分がそれほど高くはない貴族と結婚をするという事に違和感を覚えたんだよ。でもその答えはすぐに出た。父上が前回仰っていたようにマルリカの実を使って魔力量の多い者から生まれた子供は魔力持ちの可能性が高い。そしてエディも以前に聞いたと思うけど、シェルバーネ人は魔力がない者が多く、魔力を持つ者は届け出が必要で、届け出ればかなりの補助金が出る。」
うん。そうだった。確かにその話は聞いた。魔法を使えない人にとって魔法を使える人は脅威にもまるからきちんと把握をしておかなければいけないんだって。その為に届け出と保護を行い魔力持ちが使い潰されたり、悪い事に利用させられたり、自由がなく囲われる事がないようにしているんだって。
魔力持ちが一人出るだけでその家族の生活が保障されるだけのお金が出るような事も言っていた気がする。
「では、その補助金をもらう事を狙ってルフェリットの者と結婚を?」
「うん、それだけではないと思うけれど、補助金の事を考えて結婚をした者もいるだろうね。ただ、貴族はその補助からは外れていて魔力持ちが生まれた場合は国に仕える者として届け出の義務があるらしいよ。でも一族の中から魔力持ちが多く出ればそれなりのメリットはあるんだろう」
「…………」
「エディ?」
兄様に名前を呼ばれて僕は思わず兄様にぎゅっとしがみついた。
「ルフェリットでも家同士の結びつきとか、色々とあるのは分かっているけれど、こういう話を聞くと悲しい気持ちになりますね。僕は、好きな人と結婚出来て良かったです」
その途端兄様は僕の事を抱き締めてきた。
「うん。私も好きな人と結婚出来て良かった。さて、続きは部屋で話そうか。いつまでもリビングにいては皆の片づけが終わらないからね」
「はい」
僕たちは遮音の魔法を解いて、自分たちの部屋に移動した。
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