悪役令息にならなかったので、僕は兄様と幸せになりました!

tamura-k

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10 答えが出せない時は

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 王宮で紛糾をしているらしい大きな問題は二つだ。
 一つは後継者争いの問題。
 二つ目は売られたり攫われたりする人がいるらしいという犯罪の問題。

 後継者については、これからの場合は前もってきちんと次期当主についての届け出をして領内で遺恨がないようにしていく事で防げるだろうし、それ以前の事についてはマルリカの実を使う条件として子供が出来ても後継者は変わらない事を決めておく事も出来る。まぁ後はその領で片付けなければいけなくなるけど、それは実があろうとなかろうと、決めるまでは変わらないと思うんだよね。
 でも犯罪に関しては簡単にはいかない。どう言う組織が動いているのか。どんな方法を取っているのか、売られた者達はどんな環境に置かれているのか。それぞれに違うだろうけれど、非合法的に売られたり連れ去られたりしたのであれば、それを防ぐ、或いは罰する法がルフェリットでもシェルバーネでも必要になってくる。

(せっかくこんな実があるっていうのに、どうして子供が欲しいっていう気持ちだけで居られないのかな)
 そう思って溜息が出た。
 欲しい人にだけ届けばいいのにな。実を管理するような事は出来ないのかな。それは命を管理する事になっちゃうのかな。

「何か困った事などがありますか?」

 聞こえてきた言葉に僕はハッと顔を上げた。視界の中には心配そうなブライアン君と訝し気な表情を浮かべたミッチェル君が居た。

「ごめんね。なんでもな」
「何でもなくはないよね。エディは顔に出やすいからすぐに分かっちゃうんだよ。それで何があったの?どうしても言えない事なの?」
「う……うん。ごめんね」
「それなら仕方ないけど、悩んでいても答えが出ない事は、考えすぎても仕方がない事か、誰かと相談をした方がいい事なのかもしれないよ。エディの場合考えすぎちゃうような所があるからさ」

 ミッチェル君の言葉に僕は一瞬ポカンとして、次に思わず笑ってしまった。

「エディ?」
「うん。そうだね、相談をしてほしいってアルからも言われているんだ」
「ああ、なんだ。アルフレッド様も知っているんだね。それなら大丈夫かな。分からない事は迷路の中に入っちゃっている事が多いから共有を出来る頼れる人がいるなら一緒に話して、その時以外は考えないようにした方がいいよ。僕もよくそうやって兄上から言われたよ」
「ありがとう、ミッチェル」
「では私からも一言。今答えが出ない事はもしかしたら時間が解決をしてくれる事かもしれませんよ」
「え……」
「私は祖父から言われた事があります。どうしても答えが出ない事があるならば一度考えるのを止めてみなさいと、そうしているうちにどこからかそれを助けてくれるような事がもたらされる事があると。確かに時間という事に助けられた事がありました。もっともそれがとても急ぐものであれば、ミッチェルが言っていたように、誰かと相談をして導き出すのも有効かと思います」
「……なるほど。ありがとう。ブライアン。今は詳しくは言えないんだけど、言えるようになったら二人にも相談をさせてもらうね」
「うん。その時は一緒に考えるよ」
「はい。私も」

 二人の返事を聞いて、僕は気持ちを切り替えて仕事に戻った。
 そう。そればかりを考えているわけにはいかないんだ。シェルバーネの麦の事も考えなければいけないんだ。温室で育てていた麦を最初にシェルバーネの砂漠に植えたのは僕が兄様と結婚をした一昨年の二の月だった。そして四の月には枯れた。
 品質を改良して二度目の挑戦は翌年の三の月。それも夏前の六の月に枯れて、今は次の挑戦に向けて改良中で、今度は五の月の終わり位に植えてみようと思って調整をしている。まだ一の月だけれど今度こそ成功をさせたいって思っているんだ。

 一年に一度の挑戦で、多分ダリウス叔父様やシャマル様たちにはもっと頻繁に試してほしいって思っているかもしれないけれど、勿論改良している間にも砂漠の砂にも色々と試してもらっているんだよ。
 だからきっとその時間は無駄じゃないんだ。そう考えるとさっきブライアン君が言った事と似ているかもしれないな。

「とりあえずは、今は今度の視察の準備が最重要事項かな」
「まかせて。ばっちり予定を組んでいるから」

 頼もしいミッチェル君の言葉に僕は「さすがだね」って笑った。


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やっぱりミッチェル君好き。

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