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8 魔法を使えない人と使える人
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それは僕にとってはかなり衝撃的な話だった。
国交が正常化して人や物の行き来が始まった後、二国間で結婚をする人たちは勿論出てきた。はじめの年は結構多かったらしい。だけど昨年の三の月からその数が明らかに増えた。今までとは比べ物にならないくらいの多さで、気になって調べたら、単純に好き合っての婚姻とか、家同士の思惑のある婚姻とかではないと思われるケースが出てきていた。
確かルシルも言っていたような気がするけど、マルリカの実は中に魔力を持っているらしい。確かに僕もそれは感じていた。僕のお祈りの力だけではなくて、この実自体が魔力を含んでいるって。だから一体何の実なのかなって思っていたんだよね。まさか子供が出来る実だとは思ってもみなかったけど。
それで、実自体に魔力があるから、それを使う人にも影響があるらしい。
えっと、僕達ルフェリットの人は基本的に魔力を持っている。貴族の方が魔力量が高い人が多いんだけど、平民でも大体生活魔法を使える程度には魔力がある。魔力量が全くないって言う人は多分いないんじゃないかな。だから身分に関わらず神殿では六歳になると魔法鑑定をしてそれを馴染ませるっていうか、魔力を通す? みたいな儀式があるんだ。
儀式を受けると魔力が安定して、魔法が使いやすくなるんだよね。勿論きちんと制御をして大人が教えて行かないと魔力暴走のような事が起きてしまう可能性もある。
でもシェルバーネの人は魔力を持っている人が多くない。だからマルリカの実の魔力が身体の中に入る事で魔力酔いのようなものを起こしたり、ひどい人になると身体が魔力を拒んだり、馴染めずに身体を壊してしまう人もいるんだって。特に子供を身ごもる側の人が。
その為、魔力持ちが子供を授かる率が上がるわけで、基本的に魔力を持っているルフェリットの平民や、平民の中でも魔力の高い人を側室にして迎えようとする動きがシェルバーネで出始めている事が分かったんだ。
「まぁ、それだけならまだお互いに納得をしてという事であればいいんだけどね。どうも、親が子供を売ったり、または攫われて売られたりしているんじゃないかっていう事案が幾つか上がっているんだ」
「え? 売られたり、攫われたりしている人が?」
「ああ。どこまで本当なのかはまだ分からないが、マルリカの実を使って魔力量の多い者から生まれた子供は魔力を持っている可能性が高いらしいんだ」
僕はまたビックリしてしまった。
「二人とも知っている通り、ルフェリットは奴隷を認めていないし、人の売買を禁じている。だが、勿論そうでない国もある。シェルバーネでも奴隷は基本的には認められていないが、奴隷というものが残っている所もあるようだし、貧しい農村のような所では奉公のような形で親が他家へ子供を出す事はあるそうだ。そう言った者達に混じって攫われたり売られた者たちが、使い捨てのような、子供を産む為の道具になっているんじゃないか、そんな話も上がっている」
「そんな……」
「王宮会議の中で、そんな実があるからこんな事が起きるんだって、言い出した者が居てね。まぁ、事案に関わらずフィンレーに対して反対をするような者は居なくなってはいるが、フィンレーやスタンリーなど王家とは関りがないのに公爵家になったというのが面白くない人間はやはりいるらしい。公爵位など返上してもいいのだが、エドワードの隣領に面倒な者が当てられても困るしね。陛下もそれだけの事をしているから公爵となっているって、自分の采配が間違いだったというのかってご立腹されてね。そんなゴタゴタがあって今年の実をどうするのかという事が進まないのだよ」
予想もしていなかった父様の話に僕は呆然として何を、どう言っていいのか分からなくなってしまった。
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国交が正常化して人や物の行き来が始まった後、二国間で結婚をする人たちは勿論出てきた。はじめの年は結構多かったらしい。だけど昨年の三の月からその数が明らかに増えた。今までとは比べ物にならないくらいの多さで、気になって調べたら、単純に好き合っての婚姻とか、家同士の思惑のある婚姻とかではないと思われるケースが出てきていた。
確かルシルも言っていたような気がするけど、マルリカの実は中に魔力を持っているらしい。確かに僕もそれは感じていた。僕のお祈りの力だけではなくて、この実自体が魔力を含んでいるって。だから一体何の実なのかなって思っていたんだよね。まさか子供が出来る実だとは思ってもみなかったけど。
それで、実自体に魔力があるから、それを使う人にも影響があるらしい。
えっと、僕達ルフェリットの人は基本的に魔力を持っている。貴族の方が魔力量が高い人が多いんだけど、平民でも大体生活魔法を使える程度には魔力がある。魔力量が全くないって言う人は多分いないんじゃないかな。だから身分に関わらず神殿では六歳になると魔法鑑定をしてそれを馴染ませるっていうか、魔力を通す? みたいな儀式があるんだ。
儀式を受けると魔力が安定して、魔法が使いやすくなるんだよね。勿論きちんと制御をして大人が教えて行かないと魔力暴走のような事が起きてしまう可能性もある。
でもシェルバーネの人は魔力を持っている人が多くない。だからマルリカの実の魔力が身体の中に入る事で魔力酔いのようなものを起こしたり、ひどい人になると身体が魔力を拒んだり、馴染めずに身体を壊してしまう人もいるんだって。特に子供を身ごもる側の人が。
その為、魔力持ちが子供を授かる率が上がるわけで、基本的に魔力を持っているルフェリットの平民や、平民の中でも魔力の高い人を側室にして迎えようとする動きがシェルバーネで出始めている事が分かったんだ。
「まぁ、それだけならまだお互いに納得をしてという事であればいいんだけどね。どうも、親が子供を売ったり、または攫われて売られたりしているんじゃないかっていう事案が幾つか上がっているんだ」
「え? 売られたり、攫われたりしている人が?」
「ああ。どこまで本当なのかはまだ分からないが、マルリカの実を使って魔力量の多い者から生まれた子供は魔力を持っている可能性が高いらしいんだ」
僕はまたビックリしてしまった。
「二人とも知っている通り、ルフェリットは奴隷を認めていないし、人の売買を禁じている。だが、勿論そうでない国もある。シェルバーネでも奴隷は基本的には認められていないが、奴隷というものが残っている所もあるようだし、貧しい農村のような所では奉公のような形で親が他家へ子供を出す事はあるそうだ。そう言った者達に混じって攫われたり売られた者たちが、使い捨てのような、子供を産む為の道具になっているんじゃないか、そんな話も上がっている」
「そんな……」
「王宮会議の中で、そんな実があるからこんな事が起きるんだって、言い出した者が居てね。まぁ、事案に関わらずフィンレーに対して反対をするような者は居なくなってはいるが、フィンレーやスタンリーなど王家とは関りがないのに公爵家になったというのが面白くない人間はやはりいるらしい。公爵位など返上してもいいのだが、エドワードの隣領に面倒な者が当てられても困るしね。陛下もそれだけの事をしているから公爵となっているって、自分の采配が間違いだったというのかってご立腹されてね。そんなゴタゴタがあって今年の実をどうするのかという事が進まないのだよ」
予想もしていなかった父様の話に僕は呆然として何を、どう言っていいのか分からなくなってしまった。
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