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番外編
番外編15 悪魔が来りて
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家に戻るとダグラスが居て、それだけで泣きたくなった。
結局俺も健太郎さんと一緒だ。好きな人が恐ろしい魔物を討伐する事になるかもしれないって思うだけで泣きたくなってしまう。そんな事じゃ駄目だと思っても駄目なんだ。
どうしよう。どうしたらいいんだろう。本当に何か斜め上を飛び越しちゃうようなものが出来ないんだろうか。
「すぐに行くわけじゃないし、依頼自体が成立をしない場合だってある。さすがに俺だって一人でベヒモスに挑むような馬鹿な真似はしない。でも俺はこの町が好きだ。魔物になんて滅茶苦茶になんてされたくない。それだけは分かってほしい」
「うん……」
「そんな顔をするな」
「そんな顔ってどんな顔だよ」
「う~ん、泣くのを我慢しているような顔。慰めてキスをしたくなるような顔」
言いながらダグラスは俺の顔にキスを落とし始めた。
「おい!」
「ダメだよ。その顔は誘っているのと同じだよ」
「! ば、誰が! ちょ!……やらないんだからな!」
「うんうん」
「ほんとにしないんだからな!」
「うん」
「聞いているのか、ダグラス……っぁ……俺は……やぁ」
ほら、もうこうなったらグズグズだ。くそぅ。
「ベッドにしようか、それとも風呂に行こうか」
「どっちもしな……っあぁ!」
「どっちもなのか? 積極的だな、ソウタ。じゃあ、まずはベッドでしてから風呂場に行こう」
「やぁっ! ちが……んん……ぅ……」
唇を塞がれて、肉厚の舌が入ってきたらもう背中がビリビリってしてくる。こんな体にしたのはダグラスなんだからな! だからちゃんと最後まで責任をとってずっとずっと俺のそばに居なきゃ駄目なんだからな!
「あ、あ、やぁ! 胸、舐めるなぁ!」
「じゃあ、吸うか?」
「! オヤジすぎる! って……あん!」
ベッドに連れて行かれて、服をまるで手品みたいに取り払われて、そのままのしかかられて、肌を辿る手の平の熱さにただただ啼いた。
貫かれて、揺さぶられて、馬鹿みたいに甘い声を上げながら「やっぱり行っちゃやだ!」って子供みたいにしがみついた。
2回戦をして、その後風呂場に移動してほとんど意識のないままにもう一度抱かれた。のぼせる寸前でベッドに戻ってきた時は、口移しで飲ませてもらった果実水で生き返ったような気持ちになった。
それでも……
「眠れないのか?」
頭の上からかけられた声に俺は小さく身じろいだ。身体はこの上なく疲れているんだけど、とにかく頭が休めない感じなんだ。
「……どうしたら戦わないで済むのかなぁ」
ダグラスは何も言わなかった。
「なんかさ、ベヒモスがいきなり消えちゃうような方法ってないのかなぁ……」
「ソウタ…………」
大きな手がギュッと俺の身体を引き寄せる。それでも俺の頭は考える事をやめてくれない。
「……弱点ってないのかなぁ」
「休め。目を瞑ってごらん」
大きな手が目を覆うけどそれでも声は漏れ落ちる。
「何か作れないかなぁ……」
「……」
ダグラスはそれ以上もう何も言わなくなった。それでも俺を抱きしめた腕にもう少しだけ力を込めた。
俺の独り言は夜半まで続いた、らしい。
-*-*-*-*-
「やはり、どうしたらいいのか作戦を練るには敵を知る事です」
目の下どころか目の周りにものすごいクマを作りながらいきなりそう言いだしたのは健太郎さんだった。
「あ、おはようございます。ソウタさんもひどい顔ですね」
言いたい事は分かるけどなんだかものすごくムカッとする言葉だった。でも俺は実年齢はともかく、異世界では先輩なので文句を言うのは我慢をする。視界の端でこちらを見ているらしいカイザックがいたけれど、どうやら放っておく事を決めたらしくこちらには近づいては来なかった。
「ふふふふ、私はですね何も出来ないと言うのは大嫌いなんです。もちろん泣き寝入りとか、諦めると言う言葉も嫌いです。前世ではそう言った事はやむなく行いましたが、現世ではやりたくない事はやらないと決めているんです」
「お、おう」
「ソウタさんもそうですよね」
勝手に決めんな。という言葉を飲み込んで俺は健太郎さんのものすごく人相の悪くなった顔を見つめた。
「なので、手始めは敵を知る事です。これがまとめあげたベヒモスの資料です」
そう言って健太郎さんは仕事そっちのけで俺の前にものすごく綺麗な、なんなら写真付き??? っていう資料を並べた。
「こ、これって」
そこにあったのはカバみたいな、ゾウみたいな、サイみたいななんだか不思議な生き物だった。
「この世界のベヒモスこれだそうです」
「は、え……?」
「我々のいた世界では架空の生き物として旧約聖書の中に登場していた陸の怪物だそうですが、そんな知識は邪魔です。この世界のベヒモスがどんなもので、何が弱点なのか。欲しい情報はそれです。でもそれは私たちには分からないし、冒険者たちに聞いても、そんなに現れる事のない魔物だそうですからきちんとした事を答えられる者がいませんでした。なので、こういう時に使うのはあれです」
「あ、れ?」
「そう。あれです。ふふふふふ返信があるまで緊急用の問い合わせメールを送り付けてやりましたよ。明け方になってやめてほしいって言ってきました。仕方がないですよね。だってダーリンを守る為ですからこっちも必死です」
「ダーリン……」
「そうです。はい、基本情報はこれです。個体差はありますが、全長は約50m。再生能力を持っていると言われていて、傷を受ける度に皮膚が分厚くなります。大食漢で、見定めた対象を殲滅します。雷や竜巻を起こす個体もいると言われています。とにかくデカいので動いただけで被害甚大。剣は全く役に立ちません。でも外は駄目でも内は普通のデカいカバですよ」
健太郎さんはそう言ってニヤリと悪魔のような笑みを浮かべる。
目のクマも相まってものすごく怖い。
「ソウタさん、無いものは作る、私たちの常識ですよね」
その言葉は確かに悪魔の囁きだった。
討伐は三日後に決まった。
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結局俺も健太郎さんと一緒だ。好きな人が恐ろしい魔物を討伐する事になるかもしれないって思うだけで泣きたくなってしまう。そんな事じゃ駄目だと思っても駄目なんだ。
どうしよう。どうしたらいいんだろう。本当に何か斜め上を飛び越しちゃうようなものが出来ないんだろうか。
「すぐに行くわけじゃないし、依頼自体が成立をしない場合だってある。さすがに俺だって一人でベヒモスに挑むような馬鹿な真似はしない。でも俺はこの町が好きだ。魔物になんて滅茶苦茶になんてされたくない。それだけは分かってほしい」
「うん……」
「そんな顔をするな」
「そんな顔ってどんな顔だよ」
「う~ん、泣くのを我慢しているような顔。慰めてキスをしたくなるような顔」
言いながらダグラスは俺の顔にキスを落とし始めた。
「おい!」
「ダメだよ。その顔は誘っているのと同じだよ」
「! ば、誰が! ちょ!……やらないんだからな!」
「うんうん」
「ほんとにしないんだからな!」
「うん」
「聞いているのか、ダグラス……っぁ……俺は……やぁ」
ほら、もうこうなったらグズグズだ。くそぅ。
「ベッドにしようか、それとも風呂に行こうか」
「どっちもしな……っあぁ!」
「どっちもなのか? 積極的だな、ソウタ。じゃあ、まずはベッドでしてから風呂場に行こう」
「やぁっ! ちが……んん……ぅ……」
唇を塞がれて、肉厚の舌が入ってきたらもう背中がビリビリってしてくる。こんな体にしたのはダグラスなんだからな! だからちゃんと最後まで責任をとってずっとずっと俺のそばに居なきゃ駄目なんだからな!
「あ、あ、やぁ! 胸、舐めるなぁ!」
「じゃあ、吸うか?」
「! オヤジすぎる! って……あん!」
ベッドに連れて行かれて、服をまるで手品みたいに取り払われて、そのままのしかかられて、肌を辿る手の平の熱さにただただ啼いた。
貫かれて、揺さぶられて、馬鹿みたいに甘い声を上げながら「やっぱり行っちゃやだ!」って子供みたいにしがみついた。
2回戦をして、その後風呂場に移動してほとんど意識のないままにもう一度抱かれた。のぼせる寸前でベッドに戻ってきた時は、口移しで飲ませてもらった果実水で生き返ったような気持ちになった。
それでも……
「眠れないのか?」
頭の上からかけられた声に俺は小さく身じろいだ。身体はこの上なく疲れているんだけど、とにかく頭が休めない感じなんだ。
「……どうしたら戦わないで済むのかなぁ」
ダグラスは何も言わなかった。
「なんかさ、ベヒモスがいきなり消えちゃうような方法ってないのかなぁ……」
「ソウタ…………」
大きな手がギュッと俺の身体を引き寄せる。それでも俺の頭は考える事をやめてくれない。
「……弱点ってないのかなぁ」
「休め。目を瞑ってごらん」
大きな手が目を覆うけどそれでも声は漏れ落ちる。
「何か作れないかなぁ……」
「……」
ダグラスはそれ以上もう何も言わなくなった。それでも俺を抱きしめた腕にもう少しだけ力を込めた。
俺の独り言は夜半まで続いた、らしい。
-*-*-*-*-
「やはり、どうしたらいいのか作戦を練るには敵を知る事です」
目の下どころか目の周りにものすごいクマを作りながらいきなりそう言いだしたのは健太郎さんだった。
「あ、おはようございます。ソウタさんもひどい顔ですね」
言いたい事は分かるけどなんだかものすごくムカッとする言葉だった。でも俺は実年齢はともかく、異世界では先輩なので文句を言うのは我慢をする。視界の端でこちらを見ているらしいカイザックがいたけれど、どうやら放っておく事を決めたらしくこちらには近づいては来なかった。
「ふふふふ、私はですね何も出来ないと言うのは大嫌いなんです。もちろん泣き寝入りとか、諦めると言う言葉も嫌いです。前世ではそう言った事はやむなく行いましたが、現世ではやりたくない事はやらないと決めているんです」
「お、おう」
「ソウタさんもそうですよね」
勝手に決めんな。という言葉を飲み込んで俺は健太郎さんのものすごく人相の悪くなった顔を見つめた。
「なので、手始めは敵を知る事です。これがまとめあげたベヒモスの資料です」
そう言って健太郎さんは仕事そっちのけで俺の前にものすごく綺麗な、なんなら写真付き??? っていう資料を並べた。
「こ、これって」
そこにあったのはカバみたいな、ゾウみたいな、サイみたいななんだか不思議な生き物だった。
「この世界のベヒモスこれだそうです」
「は、え……?」
「我々のいた世界では架空の生き物として旧約聖書の中に登場していた陸の怪物だそうですが、そんな知識は邪魔です。この世界のベヒモスがどんなもので、何が弱点なのか。欲しい情報はそれです。でもそれは私たちには分からないし、冒険者たちに聞いても、そんなに現れる事のない魔物だそうですからきちんとした事を答えられる者がいませんでした。なので、こういう時に使うのはあれです」
「あ、れ?」
「そう。あれです。ふふふふふ返信があるまで緊急用の問い合わせメールを送り付けてやりましたよ。明け方になってやめてほしいって言ってきました。仕方がないですよね。だってダーリンを守る為ですからこっちも必死です」
「ダーリン……」
「そうです。はい、基本情報はこれです。個体差はありますが、全長は約50m。再生能力を持っていると言われていて、傷を受ける度に皮膚が分厚くなります。大食漢で、見定めた対象を殲滅します。雷や竜巻を起こす個体もいると言われています。とにかくデカいので動いただけで被害甚大。剣は全く役に立ちません。でも外は駄目でも内は普通のデカいカバですよ」
健太郎さんはそう言ってニヤリと悪魔のような笑みを浮かべる。
目のクマも相まってものすごく怖い。
「ソウタさん、無いものは作る、私たちの常識ですよね」
その言葉は確かに悪魔の囁きだった。
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