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番外編
番外編7 ビジネスライク
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「わぁ~、ケンタロー何だかどこかの貴族みたいだね~」
「え? そうですか?」
「モニカ、図に乗るから適当な事を言うのはやめろ」
「え~~、面白いからいいじゃないの~」
「ですよね~。あ、カードのチェックの仕事をやる事になりましたのでよろしくお願いします」
どこかのなんちゃってホストみたいな健太郎さんはニコニコ笑いながら受付カウンターの奥に行く。
一緒に組む事になったミーシャさんはすでに顔を引き攣らせていた。うん。気持ちは判るよミーシャさん。
俺も裸でスーツ作り出した姿にはちょっと…………かなり、引いたよ。
「カードチェックします! はい。前科ナシ。大丈夫です」
「……おい、兄ちゃん。前科たぁどういう事だ。俺が何か悪さをしたって言うんか」
「あわわわわわ、すみません。新人なんで勘弁してください~」
「え? だって、ヤバい事していないかっていうのと、おかしなのとつるんでいないかを確認するんですよね?」
「ああ!? ギルドってぇのはいつから役人の施設になったんだぁ?」
「ひぃぃぃぃぃ!」
強面のお兄さんが絡んでいるっていうか、絡ませたのは間違いなく健太郎さんだ。
えええ、あの人って中身35歳でしょ? 何? つっかかって怒らせているようにしか見えないんだけど!
「うふふ、それくらいにしておきな。新人にはよく言っておくよぉ。一応さぁ、やばいのはチェックしておかないとこっちも面倒をかぶるのはごめんなんだよ~。以前にごたついたからさ。判るよねぇ? もう少し言い方は指導するからさ、今日の所はこのくらいにしておいた方が男が上がるよぉ?」
そう言いながらモニカさんは鑑定の受け取りカウンターの低い方にガンって靴のまま足を乗せた。
それを見てデカいC級の冒険者は何かを言いかけ、隣にいたB級の冒険者に何かを言われて「そうですね!」ってそそくさと依頼を受けて外へ出た。
「聞き分けが良くて良かったよ~。ケンタロー、なんでも馬鹿正直に言うんじゃないよ。ミーシャ、ちゃんと教えないとカイザックに言ってまた減俸するからね」
「やややややややめて~~~~~~~」
モニカさんは助けてくれて、にっこり笑っているだけなのに、どうしてミーシャさんはあんなに怯えているのかな。
モニカさんって面倒見が良くて優しいのに。
「モニカさん、なんかありがとうございました。うまく収めてくれて」
「んんん! いいんだよ~。ソウタはほんとにいい子だね。ケンタローは大人の対応をしてねぇ」
「分かりました。すみません。お詫びにさっきソウタが言っていたのを後でやりたいと思います!」
さっきってなんだっけ? あ! ミノタウロス!
よし、モニカさんも食べたいって言っているし、ここはやっぱりやってもらうしかないでしょう!
休憩時間になって俺は錬金術の代わりになる肉を選んだ。本当はオーク辺りがいいかなと思ったんだけど、あいにくオークはカツで使ってしまったので、レッドボアを代替えにすることにした。
「これをミノタウロスの肉にしたらいいんですね?」
「うん。そう。出来そうかな」
「ちょっと確認します」
そう言って健太郎さんはカイザックの部屋でレッドボアを確認し始めた。
「大丈夫です。出来そうです」
「じゃあお願いします」
俺はペコリと頭を下げて、後は出来上がりを待つだ。
カイザックは微妙な顔をしているけど、俺たちに何かを試す時には自分の所でやれと言っていたのはカイザックだしね。ついでに言えば心配をして、今日の依頼を終えたダグラスも来ている。
過保護でも何でも言ってくれ。
「では行きます。錬金術、ミノタウロスの肉になーれー」
………うん。何だろう。何とも言えない言葉だよね。まぁ俺のがいいのかって言えばそれもどうかな~って思うけど、でもさ~こう。そこはかとなく昭和な、魔法使い的な、何かノスタルジーを感じるんだよね。
35? ほんとに元は35?
レッドボアの肉は置いた台の上でキラキラと光った。
そして…………
「マジか!!!」
俺は肉に駆け寄って鑑定をした。
『ミノタウロスの肉』
カイザックは胡散臭そうな顔で、依頼を終えて戻ってきたダグラスは半分諦めたような顔で俺たちを見ていた。
「健太郎さん、ありがとうございます。明日はこれですき焼き弁当を作ってみます」
「お役に立てて良かったです。では小引き出しの方はデザインを考えてまたお知らせします」
「よろしくお願いします」
うん。完璧なビジネスになると健太郎さんは普通というか出来る感じになるんだな。
「カイザックさん、先ほどはありがとうございました。今日のカウンターの仕事が終わったら、今後の事を少し相談させていただいてもいいでしょうか。ギルド以外の、スキルを使った仕事とか、住む所とか、ずっとギルドにいるわけにも宿屋で過ごすわけにも行かないので」
「…………分かった」
カイザックが渋々と頷いた。
「じゃあ、カイザック、俺たちはこれで帰るから」
「え? ソウタさん、これで今日は終わりですか?」
「あ、うん。えっと俺はダグラスの依頼が終わったら終わりだから」
「仕事にならねぇからな」
カイザックが即座に付け加えた。
うるせぇぞ。仕方がないだろう。そういう決まりで務めているんだから。
微妙な顔をする健太郎さんと、ギルド内でいちゃつくなというようなカイザックに見送られて俺はダグラスと一緒に家に帰った。
そして、翌日。俺とダグラスは信じられないような光景を見る事になる。
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「え? そうですか?」
「モニカ、図に乗るから適当な事を言うのはやめろ」
「え~~、面白いからいいじゃないの~」
「ですよね~。あ、カードのチェックの仕事をやる事になりましたのでよろしくお願いします」
どこかのなんちゃってホストみたいな健太郎さんはニコニコ笑いながら受付カウンターの奥に行く。
一緒に組む事になったミーシャさんはすでに顔を引き攣らせていた。うん。気持ちは判るよミーシャさん。
俺も裸でスーツ作り出した姿にはちょっと…………かなり、引いたよ。
「カードチェックします! はい。前科ナシ。大丈夫です」
「……おい、兄ちゃん。前科たぁどういう事だ。俺が何か悪さをしたって言うんか」
「あわわわわわ、すみません。新人なんで勘弁してください~」
「え? だって、ヤバい事していないかっていうのと、おかしなのとつるんでいないかを確認するんですよね?」
「ああ!? ギルドってぇのはいつから役人の施設になったんだぁ?」
「ひぃぃぃぃぃ!」
強面のお兄さんが絡んでいるっていうか、絡ませたのは間違いなく健太郎さんだ。
えええ、あの人って中身35歳でしょ? 何? つっかかって怒らせているようにしか見えないんだけど!
「うふふ、それくらいにしておきな。新人にはよく言っておくよぉ。一応さぁ、やばいのはチェックしておかないとこっちも面倒をかぶるのはごめんなんだよ~。以前にごたついたからさ。判るよねぇ? もう少し言い方は指導するからさ、今日の所はこのくらいにしておいた方が男が上がるよぉ?」
そう言いながらモニカさんは鑑定の受け取りカウンターの低い方にガンって靴のまま足を乗せた。
それを見てデカいC級の冒険者は何かを言いかけ、隣にいたB級の冒険者に何かを言われて「そうですね!」ってそそくさと依頼を受けて外へ出た。
「聞き分けが良くて良かったよ~。ケンタロー、なんでも馬鹿正直に言うんじゃないよ。ミーシャ、ちゃんと教えないとカイザックに言ってまた減俸するからね」
「やややややややめて~~~~~~~」
モニカさんは助けてくれて、にっこり笑っているだけなのに、どうしてミーシャさんはあんなに怯えているのかな。
モニカさんって面倒見が良くて優しいのに。
「モニカさん、なんかありがとうございました。うまく収めてくれて」
「んんん! いいんだよ~。ソウタはほんとにいい子だね。ケンタローは大人の対応をしてねぇ」
「分かりました。すみません。お詫びにさっきソウタが言っていたのを後でやりたいと思います!」
さっきってなんだっけ? あ! ミノタウロス!
よし、モニカさんも食べたいって言っているし、ここはやっぱりやってもらうしかないでしょう!
休憩時間になって俺は錬金術の代わりになる肉を選んだ。本当はオーク辺りがいいかなと思ったんだけど、あいにくオークはカツで使ってしまったので、レッドボアを代替えにすることにした。
「これをミノタウロスの肉にしたらいいんですね?」
「うん。そう。出来そうかな」
「ちょっと確認します」
そう言って健太郎さんはカイザックの部屋でレッドボアを確認し始めた。
「大丈夫です。出来そうです」
「じゃあお願いします」
俺はペコリと頭を下げて、後は出来上がりを待つだ。
カイザックは微妙な顔をしているけど、俺たちに何かを試す時には自分の所でやれと言っていたのはカイザックだしね。ついでに言えば心配をして、今日の依頼を終えたダグラスも来ている。
過保護でも何でも言ってくれ。
「では行きます。錬金術、ミノタウロスの肉になーれー」
………うん。何だろう。何とも言えない言葉だよね。まぁ俺のがいいのかって言えばそれもどうかな~って思うけど、でもさ~こう。そこはかとなく昭和な、魔法使い的な、何かノスタルジーを感じるんだよね。
35? ほんとに元は35?
レッドボアの肉は置いた台の上でキラキラと光った。
そして…………
「マジか!!!」
俺は肉に駆け寄って鑑定をした。
『ミノタウロスの肉』
カイザックは胡散臭そうな顔で、依頼を終えて戻ってきたダグラスは半分諦めたような顔で俺たちを見ていた。
「健太郎さん、ありがとうございます。明日はこれですき焼き弁当を作ってみます」
「お役に立てて良かったです。では小引き出しの方はデザインを考えてまたお知らせします」
「よろしくお願いします」
うん。完璧なビジネスになると健太郎さんは普通というか出来る感じになるんだな。
「カイザックさん、先ほどはありがとうございました。今日のカウンターの仕事が終わったら、今後の事を少し相談させていただいてもいいでしょうか。ギルド以外の、スキルを使った仕事とか、住む所とか、ずっとギルドにいるわけにも宿屋で過ごすわけにも行かないので」
「…………分かった」
カイザックが渋々と頷いた。
「じゃあ、カイザック、俺たちはこれで帰るから」
「え? ソウタさん、これで今日は終わりですか?」
「あ、うん。えっと俺はダグラスの依頼が終わったら終わりだから」
「仕事にならねぇからな」
カイザックが即座に付け加えた。
うるせぇぞ。仕方がないだろう。そういう決まりで務めているんだから。
微妙な顔をする健太郎さんと、ギルド内でいちゃつくなというようなカイザックに見送られて俺はダグラスと一緒に家に帰った。
そして、翌日。俺とダグラスは信じられないような光景を見る事になる。
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