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42 想定外の事実
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「だからどうしてお前は勝手に面倒なものを作るんだよ……」
頭を抱えているカイザックに俺は小さく「だって、一番いい材料が揃っちゃったから」と言う。
「で?どうするんだ?これ。ダグラスに飲ませるのか?」
「わ、分からない。でも聞いてはみようと思う」
そう、10歳若返るエリクサー劣化版。これをどうするかは俺だけじゃ決められないよね。
だってさ、いくら鑑定では完璧でも飲むのはダグラスだし、本当に若返るのかなんて誰も分からないし。
「はぁぁ、これが世の中に出回ったら大変だぞ?分かっているのか?」
「分かっていませんでした」
「言い切るな!」
「だって!自分たちの事しか考えなかったんだもん」
今俺は15歳。ダグラスは聞いてはいないけれどそろそろ35歳になると思う多分。
その差は約20歳。
今はまだいいよ。
でもさ、これが25と45になって35と55になって45と65……うん?
まままま待ってくれ!
「カ、カイザック!この世界の男の平均的な寿命っていくつくらいなの?」
俺は半分涙目になりながらそう訊ねた。
「ああ?ああ、そうだな。平均的には120くらいか?ダグラスみたいに魔力が大きくてしっかりした奴だともっと長生きするかもな」
「は? え、ええええええ!!!!」
ま、まさかの寿命が違いすぎか!短いんじゃなくて長いのか!!!
「こ、これを飲まなきゃならないのは俺かもしれない」
「はぁぁ⁉」
神様は俺の事をどう作り直しているんだろう?こっちに合わせてくれているんだろうか。
それとも元は変わらないからあっちと同じか?
いやいやいやいや、俺も一応魔法が使えるようになっているんだからこっち仕様になっているんじゃないかと思いたい。思いたいけど!!
「ダグラスが平均120として35歳だから換算すれば…………24歳くらい?、で俺の平均寿命が80くらいだとして、15歳だから約19歳。ででででも」
この差は大きい。だって例えば10年したらさ、俺は25歳だけど実質は31で、ダグラスはええっと45だけど実質は37!
「俺が35歳で………43に対して、ダグラスは55歳だけど、んっと……38………逆転!逆転だ!!」
「………お前は、何を計算しているんだ」
いきなりガリガリと紙を出して計算を始めた俺に、カイザックは可哀そうな子を見るような顔をした。
「うううう、見かけの年齢に騙されちゃいけなかったんだ。寿命120だなんて聞いてない。俺は、どっち仕様になっているんだか教えろ。神! じゃなくて、俺、俺………あと65年くらいしかグラスと一緒に居られないかもしれない。ダグ、ダグラスはこれから少なくても85年も生きるのに……っ………ぅ……うぅ……」
「おい……何で泣く?意味が分からねぇ。とにかく落ち着け」
「落ち着けない!だって、だって寿命が、寿命が」
「今すぐの話じゃねだろうが。大体異世界の寿命がなんだって?」
「80」
「はぁ?」
俺の心を抉るような大きな「はぁ?」が来た。
「前後差はあるけど男の方が短いからもっと短いかもしれないし、俺、俺、ダグラスをおいて死んじゃうんだ。20歳も離れているのに、俺の方が20年も先に死んじゃうんだ」
「…………………65年も先の事だがな」
頭を抱えたカイザックに、とにかく一度落ち着けと言われた。
丁度鑑定依頼が入ったのか、カイザックの部屋にモニカさんがやってきて、俺が泣いているのを見てモニカさんが切れた。
「てめぇ、ソウタに何しやがった」って何だかすごく怖かった。
間一髪モニカさんの拳をよけたカイザックに、とりあえずダグラスと相談して決めろって言われて、出来上がったエリクサー劣化版はカイザックがギルドで預かるという事になった。
ものすごい古くて、でも頑丈そうな宝箱に入れられて、時間経過のない保管庫に納められた。
「うちに帰る。もしかしたらダグラスが帰ってくるかもしれないから」
「それならギルドに寄ると思うぞ。完了の手続きをするからな」
「うん。でも帰る。なんか疲れたし、考えたいし」
「今考えても仕方がないぞ。寿命を確かめるような術はないが、運よくその神様とやらにもう一度会えた時に聞いてみればいいさ。さっきの計算では逆転するのは約20年後なんだろう?時間はたっぷりある」
「わかった。ありがとう。モニカさんも騒がせてごめんなさい」
「いいんだよぉ。ソウタ。カイザックを殴って気が晴れるならいくらでも殴ってやるからね」
「は、はははは。あ、ブドウ味は30で、他のは15ずつ作れていますから」
「おう、お疲れ様。大人しく寝ろよ。明日には絶対に戻ってくるからな」
「うん。お疲れさまでした」
俺はそう言ってギルドを出た。
少しだけ歩いて、ズルをして転移で家に帰った。
「あ、ご飯もらってくるの忘れた」
自分では作れないので、いつもエイダの所でテイクアウトしてくるのだ。
「さすがにもう一回行くのはいやだな。いいや。もうお風呂に入って寝ちゃおう」
ここにはスマホも、ゲームも、テレビもない。
娯楽なんて何にもないからやる事がなければ寝てしまうしかない。
「ダグラス、明日は戻ってくるといいな」
遅れているという知らせはないから、きっと予定通りに帰ってくるだろう。
そうしたらエリクサー劣化版の話をしよう。そして寿命の話も。
神に会えるなら会って寿命の確認もしたい。なんなら今すぐでてきてほしい。
どんなものにだってメンテナンス作業というものがあるだろう。
今の所もらったスキルに不満はないが、寿命が、寿命が気になりすぎる!!
「風呂……も面倒になってきた。いいや。クリーンかけてもう寝ちゃおう」
俺は2階に上がって、少しだけ考えて、巨大なベッドにもぐりこんだ。
「ほんとに……でかすぎだって」
一人じゃ淋しくて仕方がない。
「下の部屋にベッド買おう」
ダグラス、嫌がるだろうな。そんな事を思いながら、目を閉じた。
-----------------
自分で書いていて吹き出しました。
馬鹿な子ほどかわいい………
頭を抱えているカイザックに俺は小さく「だって、一番いい材料が揃っちゃったから」と言う。
「で?どうするんだ?これ。ダグラスに飲ませるのか?」
「わ、分からない。でも聞いてはみようと思う」
そう、10歳若返るエリクサー劣化版。これをどうするかは俺だけじゃ決められないよね。
だってさ、いくら鑑定では完璧でも飲むのはダグラスだし、本当に若返るのかなんて誰も分からないし。
「はぁぁ、これが世の中に出回ったら大変だぞ?分かっているのか?」
「分かっていませんでした」
「言い切るな!」
「だって!自分たちの事しか考えなかったんだもん」
今俺は15歳。ダグラスは聞いてはいないけれどそろそろ35歳になると思う多分。
その差は約20歳。
今はまだいいよ。
でもさ、これが25と45になって35と55になって45と65……うん?
まままま待ってくれ!
「カ、カイザック!この世界の男の平均的な寿命っていくつくらいなの?」
俺は半分涙目になりながらそう訊ねた。
「ああ?ああ、そうだな。平均的には120くらいか?ダグラスみたいに魔力が大きくてしっかりした奴だともっと長生きするかもな」
「は? え、ええええええ!!!!」
ま、まさかの寿命が違いすぎか!短いんじゃなくて長いのか!!!
「こ、これを飲まなきゃならないのは俺かもしれない」
「はぁぁ⁉」
神様は俺の事をどう作り直しているんだろう?こっちに合わせてくれているんだろうか。
それとも元は変わらないからあっちと同じか?
いやいやいやいや、俺も一応魔法が使えるようになっているんだからこっち仕様になっているんじゃないかと思いたい。思いたいけど!!
「ダグラスが平均120として35歳だから換算すれば…………24歳くらい?、で俺の平均寿命が80くらいだとして、15歳だから約19歳。ででででも」
この差は大きい。だって例えば10年したらさ、俺は25歳だけど実質は31で、ダグラスはええっと45だけど実質は37!
「俺が35歳で………43に対して、ダグラスは55歳だけど、んっと……38………逆転!逆転だ!!」
「………お前は、何を計算しているんだ」
いきなりガリガリと紙を出して計算を始めた俺に、カイザックは可哀そうな子を見るような顔をした。
「うううう、見かけの年齢に騙されちゃいけなかったんだ。寿命120だなんて聞いてない。俺は、どっち仕様になっているんだか教えろ。神! じゃなくて、俺、俺………あと65年くらいしかグラスと一緒に居られないかもしれない。ダグ、ダグラスはこれから少なくても85年も生きるのに……っ………ぅ……うぅ……」
「おい……何で泣く?意味が分からねぇ。とにかく落ち着け」
「落ち着けない!だって、だって寿命が、寿命が」
「今すぐの話じゃねだろうが。大体異世界の寿命がなんだって?」
「80」
「はぁ?」
俺の心を抉るような大きな「はぁ?」が来た。
「前後差はあるけど男の方が短いからもっと短いかもしれないし、俺、俺、ダグラスをおいて死んじゃうんだ。20歳も離れているのに、俺の方が20年も先に死んじゃうんだ」
「…………………65年も先の事だがな」
頭を抱えたカイザックに、とにかく一度落ち着けと言われた。
丁度鑑定依頼が入ったのか、カイザックの部屋にモニカさんがやってきて、俺が泣いているのを見てモニカさんが切れた。
「てめぇ、ソウタに何しやがった」って何だかすごく怖かった。
間一髪モニカさんの拳をよけたカイザックに、とりあえずダグラスと相談して決めろって言われて、出来上がったエリクサー劣化版はカイザックがギルドで預かるという事になった。
ものすごい古くて、でも頑丈そうな宝箱に入れられて、時間経過のない保管庫に納められた。
「うちに帰る。もしかしたらダグラスが帰ってくるかもしれないから」
「それならギルドに寄ると思うぞ。完了の手続きをするからな」
「うん。でも帰る。なんか疲れたし、考えたいし」
「今考えても仕方がないぞ。寿命を確かめるような術はないが、運よくその神様とやらにもう一度会えた時に聞いてみればいいさ。さっきの計算では逆転するのは約20年後なんだろう?時間はたっぷりある」
「わかった。ありがとう。モニカさんも騒がせてごめんなさい」
「いいんだよぉ。ソウタ。カイザックを殴って気が晴れるならいくらでも殴ってやるからね」
「は、はははは。あ、ブドウ味は30で、他のは15ずつ作れていますから」
「おう、お疲れ様。大人しく寝ろよ。明日には絶対に戻ってくるからな」
「うん。お疲れさまでした」
俺はそう言ってギルドを出た。
少しだけ歩いて、ズルをして転移で家に帰った。
「あ、ご飯もらってくるの忘れた」
自分では作れないので、いつもエイダの所でテイクアウトしてくるのだ。
「さすがにもう一回行くのはいやだな。いいや。もうお風呂に入って寝ちゃおう」
ここにはスマホも、ゲームも、テレビもない。
娯楽なんて何にもないからやる事がなければ寝てしまうしかない。
「ダグラス、明日は戻ってくるといいな」
遅れているという知らせはないから、きっと予定通りに帰ってくるだろう。
そうしたらエリクサー劣化版の話をしよう。そして寿命の話も。
神に会えるなら会って寿命の確認もしたい。なんなら今すぐでてきてほしい。
どんなものにだってメンテナンス作業というものがあるだろう。
今の所もらったスキルに不満はないが、寿命が、寿命が気になりすぎる!!
「風呂……も面倒になってきた。いいや。クリーンかけてもう寝ちゃおう」
俺は2階に上がって、少しだけ考えて、巨大なベッドにもぐりこんだ。
「ほんとに……でかすぎだって」
一人じゃ淋しくて仕方がない。
「下の部屋にベッド買おう」
ダグラス、嫌がるだろうな。そんな事を思いながら、目を閉じた。
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自分で書いていて吹き出しました。
馬鹿な子ほどかわいい………
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