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第9章 幸せになります
415.初めての夜 *
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兄様は真っ直ぐに僕の所にやってきた。
「寒くはない? 遅くなってごめんね」
そう言うと僕が羽織っていたガウンの襟元を合わせてから、隣にそっと腰を下ろす。薄明かりの中で見る兄様の顔はいつもよりも少しだけ硬い表情をしているような気がしたけれど、見つめて来る瞳はいつも通りに優しいままだ。それにホッとして僕はゆっくりと口を開いた。
「大丈夫です。何だかよく分からないけれどマッサージというものをやってもらいました」
「そう。じゃあ少しはゆっくり出来たかな」
兄様はそう言いながらふわりと優しい微笑みを浮かべた。
僕のガウンはグリーン。兄様のガウンはブルー。それぞれの色だけどお揃いの色違いが嬉しいなって思った。
「兄様もマッサージをしてもらったのですか?」
「いや、私は断ってしまった。そうしたら風呂の中に入浴剤という香りの良いものを入れられたよ。疲れが取れると言っていた。自分では分からなかったけれど、やはり色々と緊張はしていたみたいだね」
「あ、はい。僕もそんなに疲れてはいないつもりだったんですけど。マッサージされたら途中でちょっと眠たくなってしまいました。あ、ほんとだ、兄様からいい匂いがする」
少しだけ顔を近づけてそう言うと兄様は小さく笑った。そしてそっと僕の方に顔を寄せた。
「エディもマッサージのオイルなのかな? 少し甘い香りがするね」
「え? そうですか? 拭き取ってもらったから分からなかった」
「うん、自分についている香りって言うのは慣れてしまって案外気が付かなくなっているものだよね。さて、エディ。今日はお疲れ様」
ベッドに座って顔を見合わせたまま、兄様はそう言ってもう一度笑った。
「はい。えっと無事に結婚式が挙げられて、皆にもおめでとうって言ってもらえて良かったです」
「うん。ところでレオラから何か話をされたと聞いたけれど……」
「あ、はい……ええっと……ね、閨の……」
「……閨……?」
ほんの僅かだけれど兄様の表情が曇った気がして、僕は慌てて言葉を続ける。
「あの、あの、母様が自分が話してもらった事を僕が分かるように話してあげてほしいって言って下さって。それでレオラが来てくれたんです。少しだけ難しい事もあったけれど、でも結婚式の日の夜は特別で、大切な儀式の日だと教えてもらいました」
「儀式?」
「はい。ええっと、お互いの事を深く知って、愛する事と、愛される事の始まりの日だと言われました。それがどういう意味なのかは具体的にはあまり良く分からなかったんですけど、でも特別で大事な、愛し合う為の日なんだっていうのは伝わりました」
「…………そう。それなら良かった。じゃあ沢山言おうかな。愛しているよ、エディ」
そう言って兄様は小さく笑いながら、そっと頬っぺたや額、そして唇に触れるだけの口づけをしてきた。
「わわわ! 急に、もう……あぶな……いですよ……」
「うん。でも言わせてほしい。何度でも」
そう言いながら髪にも、首筋にも、鼻にも、兄様は「愛している」の言葉と一緒に口づけの雨を降らせてくる。
「く、くすぐったいです」
「そう? それならどうしようかな」
クスクスと笑いながら兄様はガウンを脱いで脇に置くと、かけていた布団を捲りそのままベッドの中ほどに移動した。
「エディ、こっちにおいで。ほら、そこだと二人してベッドから転がり落ちてしまいそうだ」
そう言われてみれば確かにそうだと思った。僕が座っていたのはベッドの端っこだ。
ベッドの真ん中で手を広げている兄様の所に、にじにじと膝立ちで近づいていくのはちょっと恥ずかしかったけれど、でもベッドから転げ落ちる方が恥ずかしいものね。
側に行くと抱き込まれて、また「愛している」って言われたから、僕もそっと頷きながら口を開いた。
「はい……僕も、あ、愛しています」
うん。だって、特別の、大切な日だってレオラが言っていたからね。だからちゃんと口にしようって思ったんだ。
「うん。ありがとう、エディ」
抱き込まれて、再び始まった口づけの雨は、けれど先ほどまでの触れるだけのそれとは違って、ゆっくりと大人の口づけに変わっていく。大分マシになったけれど、それでもまだうまく息継ぎが出来ず、少し息が上がってしまった僕に兄様はそっとそっと僕の身体を倒した。
「……後は何か、聞いた?」
「…………え……あ、あの、全て、兄様にお任せして大丈夫だって」
その途端兄様が破顔した。とても綺麗な笑顔だった。
「あと……」
「うん」
「…………だ、男性同士は……お、お、お尻を使うから、驚かれないようにって……いわ、言われました」
兄様は今度こそ笑い出してしまった。それからギュッて抱きしめてきて「じゃあ、全部お任せして?」って、僕の目元に口づけを落とす。
「愛している、エディ。これからもずっとずっとエディの隣に居させてほしい。だからエディの全てが欲しいよ」
不意に先ほどのレオラの言葉が甦った。
『エドワード様の事を大切に、愛おしく思いながら、きっとこの日を待ち望んでいらしたと思いますよ』
なぜだか鼻の奥がツンとして泣きそうになった。
「……はい。僕も、大好き、ずっと、ずっと大好き。一番好き。愛してる。悪役令息にならなくて良かった。兄様が味方になってくれて良かった。これからもよろしくお願いします。だから、お、お、お任せします!」
恥ずかしくて、ドキドキして、どうしていいのか分からないまま僕は兄様にしがみついた。
兄様は笑って「うん」と短く答えて背中をポンポンってしてくれた。
それからあやされるように何度も、何度も口づけられて、よく分からないうちにガウンも、寝衣も無くなって、今までに口付けられた事がないような所に触れられた。
首筋、鎖骨、そして胸……
僅かにチクリとするような痛みはすぐに甘い熱にすり替えられていく。
「……あっ……あ……んん」
漏れ落ちる自分のものではないような声にさえ煽られて、触れられた所が火傷をしそうだと思った。
丹念に肌を辿る指と手と唇、そして舌。そうやって触れているのが兄様なのだと思うだけで全身が熱くなって、僕はクラクラと眩暈がした。
「エディ、噛んじゃ駄目だよ。声も顔も全部、隠さないで」
「あ、ん……ゃ……あぁ! こえ……へ、ん、んん……!」
「変じゃないよ、可愛い。いっぱい教えて?」
「ふぁ……あぁぁ!」
赤くツンとなってしまった胸の突起を口に含まれて大きな声を上げてしまうと、兄様は「そう。それでいいんだよ」ってもう一つの方にも口づけた。
普段は気にする事もなかった胸の飾りが、こんな風に感じるなんて知らなかった。
「あぁぁ! ダメさわ……あ、あん!」
排泄をするだけだと思っていたそこが、こんなにも熱く高ぶるなんて知らなかった。
「あぁん!……ん……ぁ……ゃ……こわぃぃ……」
「大丈夫。怖くないよ。ほら、気持ちいいね……」
「う……ぁ……んん……に……ぃ……あ、あ、あぁぁぁぁ!」
いつのまにか下着も取られていて、露わになっているそこに長い指が触れた途端、僕はまた大きな声を上げてしまった。そうしてポロポロと涙が溢れてしまったんだけれど、その涙にさえ兄様が唇を落としてきた。
「大丈夫だよ。気持ちが良くなると皆そうなるんだ。安心して。ほら」
「ひ……ぁ!……あぁぁん」
クチュクチュという音がして熱くなっているそこに兄様の指が滑る。
息が、うまくつけないと思った。
大人の口づけをしているわけではないのに、うまく息が出来ずに、身体を巡るような熱さにハクハクとなった。
「あ、あ、あ、やぁぁぁぁぁ!」
ビクンと大きく身体が震えて、身体の奥から湧き上がってくるような何か。そして訳が分からない熱に巻き込まれて弾けてしまった感覚に、粗相をしてしまったのかと信じられないような気持ちになると、兄様がすぐにギュッと抱きしめてくれた。
「泣かないで。エディがちゃんと気持ちよくなってくれて嬉しいよ」
「きもち……?」
「うん。高ぶったままだと苦しいからね。ちゃんと達する事が出来て良かったね」
「……っ……は……ぃ……」
返事をすると褒めるように口付けられて、僕はもう何がなんだか分からなくなってきはじめていた。吐き出した筈なのに、身体の熱は治まるどころかそれがまた高ぶり始めていて、きりもなく漏れ落ちる自分の甘い声が少し遠くに感じる。そうしているうちに後ろにトロリとした何かがかけられて身体が跳ねた。
「な……なに……いや……にぃさま……あ……あぁ」
「ごめんね、香油を少し垂らしたんだ。冷たくないようにしたつもりだったんだけど」
「こう……ゆ」
「そう。ほら、こうして……こっちも少しずつね」
「ひ……ぅ!……っ……あ、あん! やぁ……あ、あ、あん!」
自分では触れた事のないそこに入ってきた指の感覚に、一度止まっていた涙が再び溢れ出す。ああ、そうだ。お尻を使うって言われたんだ。僕は朦朧としてくるような意識の中でそんな事を思い出していた。
「あ!……ああぁん!……や、いや、きたな……ああぁ、そこだめ……あぁぁ!」
もう自分がどんな格好をしているのか分からなかったけれど、触れられているそこからビリビリと感じる感覚に大きな声が出てしまう。
「汚くなんかないよ。エディのいい所はここだね。気持ちがいいんだよ。声を出して、いっぱい感じてごらん」
そう言っていつの間にか増えているらしい中の指がバラバラと動いて、また香油が足しこまれたのが分かって、僕は本当にどうしていいのか分からなくなってしまっていた。
熱い、苦しい、怖い、でも気持ちいい……。
「にい……兄様、兄様、あ、あ、あ」
身体が震えた。抱きしめてくれる兄様の背中にギュウウウっとしがみついた。
「あぁん! でちゃう、またでちゃう……!」
「うん、いいよ」
「や、い、いや…………ひ、ひとりじゃいや……」
「エディ?」
どうしてそんな言葉が出たのかは僕にもよく分からなかった。でも何故かそう思ったんだ。
だって、気持ちよくなるとそうなるって、さっき兄様が言ったから。
そしてレオラは愛し、愛されるためのものだって、そういう儀式だって言っていた。だから……どうすればいいのかは分からないけれど、そう思ったんだ。そうじゃなきゃ駄目だって思った。
『それぞれ別々の身体で生まれたお二人が愛し合う事で一つになる。そういうものです。ですから気負う事も、恐れる事もありません。ありのままのエドワード様でいらしてくださいませ』
「わか……ないけど……いっしょが……いいです……愛する事と、愛される事の、は、はじまりの日、なのでしょう?」
「……エディ」
「おまかせ……しましたから……」
口から心臓が飛び出してしまいそうなくらいドキドキしたけれど、そう言うと、兄様は「うん。そうだね……」って、なぜか泣き出しそうな笑みを浮かべてから小さな声で「ありがとう」って言ってからゆっくりと指を引き抜いた。
そうして、僕と兄様は一つになった。
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「寒くはない? 遅くなってごめんね」
そう言うと僕が羽織っていたガウンの襟元を合わせてから、隣にそっと腰を下ろす。薄明かりの中で見る兄様の顔はいつもよりも少しだけ硬い表情をしているような気がしたけれど、見つめて来る瞳はいつも通りに優しいままだ。それにホッとして僕はゆっくりと口を開いた。
「大丈夫です。何だかよく分からないけれどマッサージというものをやってもらいました」
「そう。じゃあ少しはゆっくり出来たかな」
兄様はそう言いながらふわりと優しい微笑みを浮かべた。
僕のガウンはグリーン。兄様のガウンはブルー。それぞれの色だけどお揃いの色違いが嬉しいなって思った。
「兄様もマッサージをしてもらったのですか?」
「いや、私は断ってしまった。そうしたら風呂の中に入浴剤という香りの良いものを入れられたよ。疲れが取れると言っていた。自分では分からなかったけれど、やはり色々と緊張はしていたみたいだね」
「あ、はい。僕もそんなに疲れてはいないつもりだったんですけど。マッサージされたら途中でちょっと眠たくなってしまいました。あ、ほんとだ、兄様からいい匂いがする」
少しだけ顔を近づけてそう言うと兄様は小さく笑った。そしてそっと僕の方に顔を寄せた。
「エディもマッサージのオイルなのかな? 少し甘い香りがするね」
「え? そうですか? 拭き取ってもらったから分からなかった」
「うん、自分についている香りって言うのは慣れてしまって案外気が付かなくなっているものだよね。さて、エディ。今日はお疲れ様」
ベッドに座って顔を見合わせたまま、兄様はそう言ってもう一度笑った。
「はい。えっと無事に結婚式が挙げられて、皆にもおめでとうって言ってもらえて良かったです」
「うん。ところでレオラから何か話をされたと聞いたけれど……」
「あ、はい……ええっと……ね、閨の……」
「……閨……?」
ほんの僅かだけれど兄様の表情が曇った気がして、僕は慌てて言葉を続ける。
「あの、あの、母様が自分が話してもらった事を僕が分かるように話してあげてほしいって言って下さって。それでレオラが来てくれたんです。少しだけ難しい事もあったけれど、でも結婚式の日の夜は特別で、大切な儀式の日だと教えてもらいました」
「儀式?」
「はい。ええっと、お互いの事を深く知って、愛する事と、愛される事の始まりの日だと言われました。それがどういう意味なのかは具体的にはあまり良く分からなかったんですけど、でも特別で大事な、愛し合う為の日なんだっていうのは伝わりました」
「…………そう。それなら良かった。じゃあ沢山言おうかな。愛しているよ、エディ」
そう言って兄様は小さく笑いながら、そっと頬っぺたや額、そして唇に触れるだけの口づけをしてきた。
「わわわ! 急に、もう……あぶな……いですよ……」
「うん。でも言わせてほしい。何度でも」
そう言いながら髪にも、首筋にも、鼻にも、兄様は「愛している」の言葉と一緒に口づけの雨を降らせてくる。
「く、くすぐったいです」
「そう? それならどうしようかな」
クスクスと笑いながら兄様はガウンを脱いで脇に置くと、かけていた布団を捲りそのままベッドの中ほどに移動した。
「エディ、こっちにおいで。ほら、そこだと二人してベッドから転がり落ちてしまいそうだ」
そう言われてみれば確かにそうだと思った。僕が座っていたのはベッドの端っこだ。
ベッドの真ん中で手を広げている兄様の所に、にじにじと膝立ちで近づいていくのはちょっと恥ずかしかったけれど、でもベッドから転げ落ちる方が恥ずかしいものね。
側に行くと抱き込まれて、また「愛している」って言われたから、僕もそっと頷きながら口を開いた。
「はい……僕も、あ、愛しています」
うん。だって、特別の、大切な日だってレオラが言っていたからね。だからちゃんと口にしようって思ったんだ。
「うん。ありがとう、エディ」
抱き込まれて、再び始まった口づけの雨は、けれど先ほどまでの触れるだけのそれとは違って、ゆっくりと大人の口づけに変わっていく。大分マシになったけれど、それでもまだうまく息継ぎが出来ず、少し息が上がってしまった僕に兄様はそっとそっと僕の身体を倒した。
「……後は何か、聞いた?」
「…………え……あ、あの、全て、兄様にお任せして大丈夫だって」
その途端兄様が破顔した。とても綺麗な笑顔だった。
「あと……」
「うん」
「…………だ、男性同士は……お、お、お尻を使うから、驚かれないようにって……いわ、言われました」
兄様は今度こそ笑い出してしまった。それからギュッて抱きしめてきて「じゃあ、全部お任せして?」って、僕の目元に口づけを落とす。
「愛している、エディ。これからもずっとずっとエディの隣に居させてほしい。だからエディの全てが欲しいよ」
不意に先ほどのレオラの言葉が甦った。
『エドワード様の事を大切に、愛おしく思いながら、きっとこの日を待ち望んでいらしたと思いますよ』
なぜだか鼻の奥がツンとして泣きそうになった。
「……はい。僕も、大好き、ずっと、ずっと大好き。一番好き。愛してる。悪役令息にならなくて良かった。兄様が味方になってくれて良かった。これからもよろしくお願いします。だから、お、お、お任せします!」
恥ずかしくて、ドキドキして、どうしていいのか分からないまま僕は兄様にしがみついた。
兄様は笑って「うん」と短く答えて背中をポンポンってしてくれた。
それからあやされるように何度も、何度も口づけられて、よく分からないうちにガウンも、寝衣も無くなって、今までに口付けられた事がないような所に触れられた。
首筋、鎖骨、そして胸……
僅かにチクリとするような痛みはすぐに甘い熱にすり替えられていく。
「……あっ……あ……んん」
漏れ落ちる自分のものではないような声にさえ煽られて、触れられた所が火傷をしそうだと思った。
丹念に肌を辿る指と手と唇、そして舌。そうやって触れているのが兄様なのだと思うだけで全身が熱くなって、僕はクラクラと眩暈がした。
「エディ、噛んじゃ駄目だよ。声も顔も全部、隠さないで」
「あ、ん……ゃ……あぁ! こえ……へ、ん、んん……!」
「変じゃないよ、可愛い。いっぱい教えて?」
「ふぁ……あぁぁ!」
赤くツンとなってしまった胸の突起を口に含まれて大きな声を上げてしまうと、兄様は「そう。それでいいんだよ」ってもう一つの方にも口づけた。
普段は気にする事もなかった胸の飾りが、こんな風に感じるなんて知らなかった。
「あぁぁ! ダメさわ……あ、あん!」
排泄をするだけだと思っていたそこが、こんなにも熱く高ぶるなんて知らなかった。
「あぁん!……ん……ぁ……ゃ……こわぃぃ……」
「大丈夫。怖くないよ。ほら、気持ちいいね……」
「う……ぁ……んん……に……ぃ……あ、あ、あぁぁぁぁ!」
いつのまにか下着も取られていて、露わになっているそこに長い指が触れた途端、僕はまた大きな声を上げてしまった。そうしてポロポロと涙が溢れてしまったんだけれど、その涙にさえ兄様が唇を落としてきた。
「大丈夫だよ。気持ちが良くなると皆そうなるんだ。安心して。ほら」
「ひ……ぁ!……あぁぁん」
クチュクチュという音がして熱くなっているそこに兄様の指が滑る。
息が、うまくつけないと思った。
大人の口づけをしているわけではないのに、うまく息が出来ずに、身体を巡るような熱さにハクハクとなった。
「あ、あ、あ、やぁぁぁぁぁ!」
ビクンと大きく身体が震えて、身体の奥から湧き上がってくるような何か。そして訳が分からない熱に巻き込まれて弾けてしまった感覚に、粗相をしてしまったのかと信じられないような気持ちになると、兄様がすぐにギュッと抱きしめてくれた。
「泣かないで。エディがちゃんと気持ちよくなってくれて嬉しいよ」
「きもち……?」
「うん。高ぶったままだと苦しいからね。ちゃんと達する事が出来て良かったね」
「……っ……は……ぃ……」
返事をすると褒めるように口付けられて、僕はもう何がなんだか分からなくなってきはじめていた。吐き出した筈なのに、身体の熱は治まるどころかそれがまた高ぶり始めていて、きりもなく漏れ落ちる自分の甘い声が少し遠くに感じる。そうしているうちに後ろにトロリとした何かがかけられて身体が跳ねた。
「な……なに……いや……にぃさま……あ……あぁ」
「ごめんね、香油を少し垂らしたんだ。冷たくないようにしたつもりだったんだけど」
「こう……ゆ」
「そう。ほら、こうして……こっちも少しずつね」
「ひ……ぅ!……っ……あ、あん! やぁ……あ、あ、あん!」
自分では触れた事のないそこに入ってきた指の感覚に、一度止まっていた涙が再び溢れ出す。ああ、そうだ。お尻を使うって言われたんだ。僕は朦朧としてくるような意識の中でそんな事を思い出していた。
「あ!……ああぁん!……や、いや、きたな……ああぁ、そこだめ……あぁぁ!」
もう自分がどんな格好をしているのか分からなかったけれど、触れられているそこからビリビリと感じる感覚に大きな声が出てしまう。
「汚くなんかないよ。エディのいい所はここだね。気持ちがいいんだよ。声を出して、いっぱい感じてごらん」
そう言っていつの間にか増えているらしい中の指がバラバラと動いて、また香油が足しこまれたのが分かって、僕は本当にどうしていいのか分からなくなってしまっていた。
熱い、苦しい、怖い、でも気持ちいい……。
「にい……兄様、兄様、あ、あ、あ」
身体が震えた。抱きしめてくれる兄様の背中にギュウウウっとしがみついた。
「あぁん! でちゃう、またでちゃう……!」
「うん、いいよ」
「や、い、いや…………ひ、ひとりじゃいや……」
「エディ?」
どうしてそんな言葉が出たのかは僕にもよく分からなかった。でも何故かそう思ったんだ。
だって、気持ちよくなるとそうなるって、さっき兄様が言ったから。
そしてレオラは愛し、愛されるためのものだって、そういう儀式だって言っていた。だから……どうすればいいのかは分からないけれど、そう思ったんだ。そうじゃなきゃ駄目だって思った。
『それぞれ別々の身体で生まれたお二人が愛し合う事で一つになる。そういうものです。ですから気負う事も、恐れる事もありません。ありのままのエドワード様でいらしてくださいませ』
「わか……ないけど……いっしょが……いいです……愛する事と、愛される事の、は、はじまりの日、なのでしょう?」
「……エディ」
「おまかせ……しましたから……」
口から心臓が飛び出してしまいそうなくらいドキドキしたけれど、そう言うと、兄様は「うん。そうだね……」って、なぜか泣き出しそうな笑みを浮かべてから小さな声で「ありがとう」って言ってからゆっくりと指を引き抜いた。
そうして、僕と兄様は一つになった。
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