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第9章   幸せになります

379. 忙しない七の月

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 七の月。僕は結構忙しくなっている。

 まずはウィルとハリーのお誕生日。二人にもケーキを作って貰ったよ。今回はチョコレートを入れ込んだパイ生地と合わせたもので、何故か母様が居らして一緒にお祝いをして行った。
 やっぱり二人がいなくなって寂しいのかな。プレゼントは二人から欲しいと言われていたカメラ。もう少し小さくなって、扱いやすい改良型だ。すぐに開けてケーキとか、楽しそうな母様とか、みんなで一緒に撮ったりして楽しかった。

 それから、父様に言われた結婚式に招待をする人たちの名簿作り、そして領都でのお披露目会の準備も進めているよ。一の月の終わり位に領都にある神殿で報告をして、お屋敷の別棟でお披露目会をするんだ。テオは今からどういう手順で、どういう風に行うのか色々と考えている。
 別棟とはいえ屋敷内に人を入れるので、どういった警護をするのかもしっかりと考えなければならない。
 僕の屋敷はフィンレーと同じくらい強い防御の魔法陣が設置されているから、妖精でもこちらに目印になるような物がなければ道を開く事が出来ない位なんだもの。
 でも屋敷の中に何か良くない物を置かれたりするのは困るから、注意する事は大事だと思う。一応ね、本館の方には認識阻害の魔法をかけて、簡単には入れないようにしようって話になっている。
 
 実は招待者の名簿を作る時に、父様にお願いをした事があるんだ。
 マリーとルーカスとジョシュアをメイドや護衛ではなく、招待客として招きたいって。マリーはイースティン子爵家の令嬢だし、ルーカスもジョシュアも同じくヒューイット子爵家とブライトン子爵家の子息だ。それに二人は僕の子供の頃の先生だしね。
 父様はちょっとだけ困ったような顔をしたけど、ではそのようにしようって言ってくれた。本当はテオも同じような感じなんだけど、それは認められないって。だけどこの前みたいに傍に居てもらうよって言ってくれたからほっとした。

 とりあえず前期の試験も終わって、お休みは多かったけど補講もなく僕はサマーバカンスに突入した。ハリー達も無事試験を終えて、何故かフィンレーとグリーンベリーを行ったり来たりしている。
 ウィルはクラウス君たちのミスリル隊にすっかり慣れて、卒業するまでにはミスリルの剣を手に入れられるようになりたいって言っている。それだけの実力を付けられたらってクラウス君にお願いをしたんだって。

 そしてハリーは、フィンレーの温室のお世話も続けながら、ずっとやっているポーションの管理もやっていて、更に砂漠の麦と白いイチゴの状態とかもしっかり記録をしていてくれているんだ。本当に助かっている。
 ただね、あんまり一生懸命にやっているので無理をしないようにしてほしいんだよね。やっぱり自分のお友達との関りも大切だしって言ったら、ミッチェル君が「そういうのって見守ったり、手を貸してくれたり、時に諌めてくれるような人が必要だよね」って。
 確かに僕が無理をしないように言っても「大丈夫です」とか「楽しいです」としか言わないからね。それに結婚式の準備に関する事も色々入って来るから全部を把握するのは難しいし。

「適任者がいるじゃない。細かいところまできちんと目を届かせて、ポーションも一緒に作る事が出来て、更にはきちんと駄目だって話をしてくれる」
「ええ⁉ 誰? テオ? あ、テオはポーションを作れないか。マークも無理だし、ええっと」
「ねぇ、エディってものすごく頭が回ってカッコいいなっていう時と、ほんとに鈍い時の差が激しいよね。まぁそこも可愛らしい所なんだろうけど」
「へ? にぶ? 」
「うん。大丈夫だよ。そう言うのも全部ちゃんとわかってくれるアルフレッド様と結婚するんだからエディは心配しないで」
「あ、うん」
「ええっとさ、ほら居るでしょう? 適任者が」
「適任者……」
「スティーブだよ。スティーブ。機転も利くし、きちんと話も出来るし、何かを取りまとめたりするのも正確だし上手いし、勿論エディたちと勉強会をしていたんだから薬草関係の事もある程度分かっているし、ポーションも作れるし、何かあればちゃんと注意もしてくれるよね」
「た、確かに! でもいいのかな。スティーブも結構色んな仕事があるのに」
「いいんじゃない? 別にずっと付きっきりになってほしいってわけでもないでしょう? 気にかけてあげてほしいっていうのと何かあったら声をかけて注意をしたりしてほしいって。ここの家令を目指す事になったんだから丁度いいじゃない」

 というわけで僕はスティーブ君にお願いをした。スティーブ君はちょっと驚いたような顔をしたけれど「分かりました」って引き受けてくれた。少しほっとした。
 そして僕が居ない時にとか何か困ったような事があったらスティーブ君に話をするようにってハリーに話をしたらものすごく驚いた顔をしてから「分かりました」って答えた。なぜか少し赤い顔をしていた。
 とりあえず、ミッチェル君にお願いをする事にしたと話をしたらミッチェル君は「僕はものすごくいい仕事をした気がする!」って楽しそうだったよ。

 とにかくそんな感じで七の月は大忙しのうちに過ぎて行こうとしていた。

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