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第9章 幸せになります
378. 決まった予定
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父様から呼び出しがあったので兄様と一緒にフィンレーに行った。
『首』の封印が解けたような事は聞かないし、エターナルレディのような原因不明の病気が流行っているような事も聞かない。一応気にかけて魔素とか魔物の出現とか情報を集めるようにしているけれど、それも特に変わった様子はないと思う。それなら一体何だろう。
「何のお話でしょうか」
「うん。何だろうね。私にも一緒に来なさいってそれだけだったよ」
もう六の月になっていて、ぼんやりしていたらすぐに七の月になるだろう。双子の誕生日のプレゼントは何にしようかなって考えているくらい僕としては平和と言えば平和に過ごしていたんだけれど……。
書斎に行ってドアをノックすると「入りなさい」っていう父様の声が聞こえてきた。
「失礼いたします」
二人でお辞儀をして部屋に入ると、父様は椅子から立ち上がって応接用のソファに座るように言った。
「急に呼び出して悪かったね。実はようやく聖神殿から返事が来てね、来年一の月の二十四日に聖堂での結婚式を行う事になった。お招きしたい方々の一覧を来月中にまとめておくように。またその他の準備に関してはおいおい相談をしていくが、何か要望があれば早めに声をかけてほしい。二人ともおめでとう。また母様がはりきりそうだね」
父様が笑ってそう言って、僕と兄様は立ち上がって頭を下げた。
「ありがとうございます」
「ああ、これからがまた色々と大変だろうが、主だった準備はこちらに任せてほしい。エドワードはアルフレッドと相談をして、グリーンベリーで式に招待すべき役付きの者達などもまとめておくように。領主の婚姻なのでグリーンベリーでは領都での披露目もある。町の長はそちらでいいだろう。アルフレッド、頼んだよ」
「はい」
「兄様、よろしくお願いします」
「うん。一緒に一覧表を作っていこう」
僕と兄様の様子を見ながら、父様は安心したようにはぁと息を吐いた。
「父様?」
「ああ、ほっとしたというか、やっとここまで来たっていう気持ちだよ。それから、ハロルド達の事もありがとう。礼を言うのが遅くなった」
「いえ、二人が自分たちの中で納得をしただけです。その……後継ぎなどについてはまた改めて」
「ああ、そうだね。まだ結婚もないのに後継ぎというのもね。立場的に考えなければならないが、とりあえずは来年の結婚式だ。公爵家などになってしまったので色々と面倒だが仕方がない。楽しむような気持ちで臨めばいい」
「はい、ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
「ああ、そう言えばあの白っぽいイチゴは美味しかったね。あれは元々メイトスにあるものなのかい? 見た事がなかったけれど」
父様がニコニコしながら尋ねてきたので僕は「元の品種はメイトスや他の領にもあったみたいですが、大元は西の国の方から来たのではないかとユージーン君が言っていました。実が小さく、もう少し酸味が強かったので、ええっと出来損ないのように扱われていたとか。まだ西の国との交易は日持ちのしない果物などは扱っていないとの事で、本当に西から来たものなのかは分からない……父様?」
何だろう。どうして父様は頭を抱えているんだろう。
「エドワード、ではグリーンベリーで出来損ないだったものを品種改良をしたのだね?」
「え? あ、ええ。あの、あの、いけなかったですか?」
「ああ、いや、その……きちんと確認をすればよかったな。珍しいものが手に入ったと、頂いたケーキを母様がお茶会で振舞ってね。少し話題になっているみたいだ」
「え……」
「まぁ、元になるものが旧メイトスにあったのなら、その大元が西の国だったとしても問題はないだろう。うん。グリーンベリーで改良をされた白いイチゴか。いいかもしれないね。式の後の披露目式で出すデザートの一つにしてみようか。沢山採れように出来るかやってみるかい?」
「はい!」
上手くいけばこれもグリーンベリーの特産みたいに出来るかもしれないよね。
思わず隣の兄様を見たら、兄様も笑って頷いてくれた。
「さぁ、いよいよだ。準備も忙しくなりそうだけれど、頑張って良い式にしよう」
「はい」
こうして僕たちはもう一度よろしくお願いしますってお辞儀をしてから書斎を出た。
「いよいよだね」
「はい」
「まずは招待する人達を考える所からかな。エディは七の月になると試験があるからグリーンベリーの仕事と合わせてうまく予定を組んでいかないとね」
「は、そうでした。最後の前期試験」
「うん。高等部最後の前期試験だ。サマーバカンスを最大限に使えるように頑張って」
「はい。頑張ります」
廊下を歩きながらそんな事を話していると……
「アル、エディ! おめでとう。一緒にお茶を飲みましょう」
ニコニコと笑いながら母様が待っていた。
「……母様との衣装の打ち合わせもしっかり予定に入れないといけませんね」
僕がそう言ったら兄様は笑いを堪えたような顔をして「今度は作る時も、仮縫いも、全部一緒に合わせてやろう」と言って、僕は婚約式の事を思い出して「はい」と小さく返事をした。
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さぁ、決まりましたよ!
兄様、計画的に詰めて行かないとね(笑)
『首』の封印が解けたような事は聞かないし、エターナルレディのような原因不明の病気が流行っているような事も聞かない。一応気にかけて魔素とか魔物の出現とか情報を集めるようにしているけれど、それも特に変わった様子はないと思う。それなら一体何だろう。
「何のお話でしょうか」
「うん。何だろうね。私にも一緒に来なさいってそれだけだったよ」
もう六の月になっていて、ぼんやりしていたらすぐに七の月になるだろう。双子の誕生日のプレゼントは何にしようかなって考えているくらい僕としては平和と言えば平和に過ごしていたんだけれど……。
書斎に行ってドアをノックすると「入りなさい」っていう父様の声が聞こえてきた。
「失礼いたします」
二人でお辞儀をして部屋に入ると、父様は椅子から立ち上がって応接用のソファに座るように言った。
「急に呼び出して悪かったね。実はようやく聖神殿から返事が来てね、来年一の月の二十四日に聖堂での結婚式を行う事になった。お招きしたい方々の一覧を来月中にまとめておくように。またその他の準備に関してはおいおい相談をしていくが、何か要望があれば早めに声をかけてほしい。二人ともおめでとう。また母様がはりきりそうだね」
父様が笑ってそう言って、僕と兄様は立ち上がって頭を下げた。
「ありがとうございます」
「ああ、これからがまた色々と大変だろうが、主だった準備はこちらに任せてほしい。エドワードはアルフレッドと相談をして、グリーンベリーで式に招待すべき役付きの者達などもまとめておくように。領主の婚姻なのでグリーンベリーでは領都での披露目もある。町の長はそちらでいいだろう。アルフレッド、頼んだよ」
「はい」
「兄様、よろしくお願いします」
「うん。一緒に一覧表を作っていこう」
僕と兄様の様子を見ながら、父様は安心したようにはぁと息を吐いた。
「父様?」
「ああ、ほっとしたというか、やっとここまで来たっていう気持ちだよ。それから、ハロルド達の事もありがとう。礼を言うのが遅くなった」
「いえ、二人が自分たちの中で納得をしただけです。その……後継ぎなどについてはまた改めて」
「ああ、そうだね。まだ結婚もないのに後継ぎというのもね。立場的に考えなければならないが、とりあえずは来年の結婚式だ。公爵家などになってしまったので色々と面倒だが仕方がない。楽しむような気持ちで臨めばいい」
「はい、ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
「ああ、そう言えばあの白っぽいイチゴは美味しかったね。あれは元々メイトスにあるものなのかい? 見た事がなかったけれど」
父様がニコニコしながら尋ねてきたので僕は「元の品種はメイトスや他の領にもあったみたいですが、大元は西の国の方から来たのではないかとユージーン君が言っていました。実が小さく、もう少し酸味が強かったので、ええっと出来損ないのように扱われていたとか。まだ西の国との交易は日持ちのしない果物などは扱っていないとの事で、本当に西から来たものなのかは分からない……父様?」
何だろう。どうして父様は頭を抱えているんだろう。
「エドワード、ではグリーンベリーで出来損ないだったものを品種改良をしたのだね?」
「え? あ、ええ。あの、あの、いけなかったですか?」
「ああ、いや、その……きちんと確認をすればよかったな。珍しいものが手に入ったと、頂いたケーキを母様がお茶会で振舞ってね。少し話題になっているみたいだ」
「え……」
「まぁ、元になるものが旧メイトスにあったのなら、その大元が西の国だったとしても問題はないだろう。うん。グリーンベリーで改良をされた白いイチゴか。いいかもしれないね。式の後の披露目式で出すデザートの一つにしてみようか。沢山採れように出来るかやってみるかい?」
「はい!」
上手くいけばこれもグリーンベリーの特産みたいに出来るかもしれないよね。
思わず隣の兄様を見たら、兄様も笑って頷いてくれた。
「さぁ、いよいよだ。準備も忙しくなりそうだけれど、頑張って良い式にしよう」
「はい」
こうして僕たちはもう一度よろしくお願いしますってお辞儀をしてから書斎を出た。
「いよいよだね」
「はい」
「まずは招待する人達を考える所からかな。エディは七の月になると試験があるからグリーンベリーの仕事と合わせてうまく予定を組んでいかないとね」
「は、そうでした。最後の前期試験」
「うん。高等部最後の前期試験だ。サマーバカンスを最大限に使えるように頑張って」
「はい。頑張ります」
廊下を歩きながらそんな事を話していると……
「アル、エディ! おめでとう。一緒にお茶を飲みましょう」
ニコニコと笑いながら母様が待っていた。
「……母様との衣装の打ち合わせもしっかり予定に入れないといけませんね」
僕がそう言ったら兄様は笑いを堪えたような顔をして「今度は作る時も、仮縫いも、全部一緒に合わせてやろう」と言って、僕は婚約式の事を思い出して「はい」と小さく返事をした。
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さぁ、決まりましたよ!
兄様、計画的に詰めて行かないとね(笑)
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