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第9章   幸せになります

364. 七の月の未来

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 伯爵名を決めて、学園にも改名の手続きの書類を出したけれど、学園では試験の名前を間違えないようにするくらいで特に変わった事はなかった。
 ルシルは七の月のテストを特別に王城で受けさせてもらう事になったって聞いたよ。管理領への入領だからひと月で領の中に入って大まかな手続きだけはしないといけないからね。
 書簡を送ったら「凄く大変」っていう返事が返ってきた。うん。そうだよね。でもニールデン家が完全バックアップをしていて、ダニエル君とロイス様がついてあれこれと世話を焼いてくれているみたい。良かった。

 父様も入領でバタバタしている。とりあえず使われていなかった領主の屋敷を整えて、誰をどう連れて行くか、領地の役人関係も今の管理をしている人達がそのまま使えるのかどうなのかっていう選別がねって苦笑いをしていたよ。体裁を整えて領内にお触れを出して、お祖父様を改めて領主代理として任命するんだって。色々難しいね。

 ハワード先生からも連絡が来た。本来なら僕の方からご挨拶をしなければならないんだけど、なるべく早めに受け渡しできるようにしますねっていう書簡だった。すぐによろしくお願いいたしますってお返しをした。

 そんな感じで急ぎ足で六の月が終わって、七の月はウィルとハリーの誕生日。
 プレゼントは何にしようかって思っていたら、父様から二人の誕生日の後に、今後の事について二人と話をするって言われた。僕も一緒にいた方がいいか聞いたら、まずは二人だけって。そしてびっくりする事も教えられた。
 なんと、二人はミッチェル君みたいに一年早く学園に入る試験を受けるって。思わず「それは僕のせいですか?」って聞いてしまったよ。僕が兄様と結婚をする事になったり、爵位を得る事になったから二人が学園に入るのを一年早めるような事になったのだったら申し訳ない。でも父様は「ハリーから言い出した事だ」って言った。それも随分前に一年だけでも僕と一緒に学園に通いたいって言われたんだよって。
 僕も兄様と一年だけ一緒だったからなんとなくその気持ちも分かるような気がした。そしてそんな風に思って貰えて嬉しいなって思った。

 だから二人には空間魔法付のバッグをプレゼントしたんだ。僕と兄様が使っていたようなバッグで、色違いの革のバッグを王都で選んで空間魔法を付与した。
 二人はとても喜んでくれて、来年は一緒に通えるといいなって思ったよ。だけど皆がタウンハウスに来てしまったら母様が淋しくなってしまうかなってちょっと思ったけれど、多分母様はこの前みたいに沢山のお菓子を持って訪ねて来るかもしれないな。そして、それも楽しそうだなって思ったんだ。


-*-*-*-*-


「ウィリアム、ハロルド、まずは十一歳の誕生日、おめでとう」

 誕生日の翌日、二人はデイヴィッドの書斎に呼ばれた。そして開口一番にそう言われて「ありがとうございます」とお辞儀をする。それを見つめながらデイヴィットは書斎の中にあるソファに座るように言った。

「さて、二人を呼んだのはこれからの事を相談する為だ。二人とも知っての通り、エドワードが叙爵され、グリーンベリー伯爵家の当主となった」

 父の言葉に二人は「はい」と頷いた。それを見てデイヴィットは言葉を続ける。

「そして、この年の十の月の十二日にアルフレッドと婚約式を行う事が決まった。アルフレッドが次期フィンレー公爵家の次期当主である事は変わらない。そして、エドワードはグリーンベリー伯爵としてフィンレーに輿入れをする事になる。二人とも知っている通り、ルフェリットでは同性婚が認められている。しかし、嫡男は嫡子を得るために女性と結婚をする事がほとんだ。だが、私は二人の気持ちを大事にしてやりたいと思いこれを認めた」

 ウィリアムとハロルドはもう一度「はい」と頷いた。

「今日二人を呼んだのはこの婚姻による今後の事についてだ。フィンレーは今回陞爵をして公爵家となり、領地はこのままで、更に公爵領を得る事になった。しばらくの間はこの元侯爵領を私が、そして新たに授かった公爵領を私の父カルロス・グランデス・フィンレーに当主代理をお願いする事になった。ゆくゆくは私はアルフレッドに家督を譲り、公爵領の当主代理を私が、そしてこの地はアルフレッドが治める事になる。そこで二人に相談がある。二人のどちらかが、アルフレッドとエドワードの養子となり、その次のフィンレーを治める者になり、もう一人はエドワードの弟のまま、グリーンベリー伯爵家を引き継ぐようにする事を考えている」

 二人は呆然としたようにデイヴィットを見つめていた。

「驚くような事を言ってすまないね。いきなりで戸惑いもあると思う。だが、それぞれに考えておいてほしい」
「エディ兄様は、しばらくの間はグリーンベリー領で暮らす事になるのでしょうか」

 硬い表情のまま口を開いたのはハロルドだった。

「ああ、まだ話をしてはいないが、学園を卒業したらそうなるだろうね。在学中も行き来をするようになるだろうと思うよ。色々と整えていかなければならない事があるからね。しばらくの間はおそらく、アルフレッドもそちらの協力をしながらフィンレーの当主としての引継ぎをしていく事になるだろう。まぁ二人とも転移も出来るし、フィンレーとは魔法陣を設置する予定だから、行き来はあるだろうしね。何より学園を卒業まではエドワードの拠点は王都のフィンレー家のタウンハウスだ。二人の結婚式についてはまだ日取りは決まってはいないが、エドワードの卒業後なるべく早い時期にとは思っているよ。とりあえず、こんな事を考えているという事だけは伝えておきたいと思ってね。何か思う事があれば遠慮なく話をしてほしい。決して一人で悩んだり考えすぎたりしないで、私か母様に話してほしいと思っている。どちらにしても君たちが次期領主として手続きをするのは、君たちの学園卒業後になる。だから考える時間はたっぷりあるんだ。それに……」

 珍しく言い淀んだ父に二人は訝しそうな顔をした。

「ああ、うん。まぁこれはもう少し先になったら話をしよう。とりあえず、そうなるかもしれない心づもりだけはしておいてほしい。その為に、二人には当主としての教育もしていく事になった。勿論そうならなくても、その教育はどこかで必ず役に立つものだと思うよ。まだ十一になったばかりの二人に言うのもどうかとは思ったけれど、教育は始めていかないといけないからね。よろしくね」

 そう言って笑ったデイヴィットにウィリアムは少し硬い顔で「はい」と答えて、ハロルドは緊張した面持ちで口を開いた。

「父上、私はエディ兄様の後を引き継ぎたいと思います」

 書斎に沈黙が流れた。


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(* ̄▽ ̄)フフフッ♪
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