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第8章 収束への道のり
303. 妖精たちの知らせ
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その後何度か入った知らせで、南の森に現れた魔人は捕らえられ、聖神殿に送るように手配をしている事。封印は完全に解けたわけではないものの、魔物が湧き出している事。そしてコートニーズ公爵家から援軍が入った事などが判った。
また北の森に関しては、ドラゴンがとても大きな黒竜で、他の町に下りたら大変な被害が出てしまう可能性がある為、封印強化に参加をしていたフィンレー、トールマン、ランドールの騎士や魔導騎士の皆さんとシルヴァン殿下とロイス様とダニエル君、そしてルシルが討伐に参加をする事になったという知らせが入り、僕たちは思わず顔を強張らせてしまった。
ドラゴンの討伐に同じ年の友人が入っている。ルシルは確かに光の愛し子という加護を持っているけれど、それでも僕たちにとっては仲間の参戦というものがとてもショックだったんだ。
王城の裏手に広がる森の横にある王宮神殿と王家の墓廟には魔素だけでなくアンデッドが湧き出したという知らせも来た。南の守塚で捕らえられた魔人がオルドリッジ元公爵だったのかも分からないし、捕らえた時に分裂をしていなかったのかも分からないので、アンデッドの他に魔人も現れるのではないかと心配になった。
こうして次々に届く知らせを聞きながら僕はハリーの事をすっかり忘れていた事にようやく気が付いた。
ルーカスとジョシュアを付けていた事と、その後テオに様子を見てほしいって言伝をした事で頭から抜けていたんだ。あれからどれくらいの時間が経っただろう。ハリーは妖精と話が出来たのかな。妖精が騒いでいた事は何だったんだろう。
「現時点で僕らに出来る事はないね。とにかく予定通りにポーションを作ろうかと思うんだ。ドラゴンやアンデッドなど想定外のものが出て必要数が多くなるかもしれないし、とりあえずは怪我を治すポーションと魔力回復のポーションを増やしておきたい」
僕がそう言うとトーマス君が「そうしよう。何か出来る事をしよう」と立ち上がった。
「俺にも何か手伝えるかな」
クラウス君が神妙な顔をして言うので、僕は「もちろん」と笑って頷いた。
そうだ。とにかく今出来る事を考えよう。入って来る知らせを聞いて、他にも何か出来る事があるならば出来る事を広げていけばいい。
そして祈ろう。そのお祈りがどんな風に届くのかは分からないけれど、誰も大きな怪我をしないように。魔人やアンデッドが無事に浄化できるように。そしてドラゴンが大きな被害をもたらす事なく、討伐する事が出来ます様に。今はそれしか出来ないから。
材料を揃えるべく僕はトーマス君とスティーブ君そしてユージーン君と一緒に応接室を出た。テオがすぐさまやって来る。
「エドワード様、どちらへ」
「ああ、応接室で皆と一緒にポーションを作ろうかと思って。少し足りないものがあるから揃えに一度温室へ。ハリーの方はどうかな?」
「それが……」
「テオ?」
「なりません! お屋敷からお出にならないように旦那様からきつく申しつかっております」
「でも助けてって言っているんだ!」
「ハロルド様、落ち着いてくださいませ! その場に行って何が出来ますか!」
「じゃあ父様の所に行ってお話を」
「なりません!」
「チェスター!」
聞こえてきたその声に僕はビックリして足を止めてしまった。三人も聞いてはいけないものを聞いてしまったというような表情を浮かべて後ろを向く。
「ちょっと話をしてくるね」
「ああ、では私たちは一度応接室へ戻って」
「エディ兄様!!」
その瞬間ものすごい勢いでハリーが2階から駆け下りてきた。どうやら一度部屋に戻されたみたいだった。
「ハロルド様! 申し訳ございませんエドワード様。先ほどから少し興奮をなさっていらして」
「エディ兄様! 助けて、助けて下さい!」
明らかに様子のおかしいハリーに、僕はゆっくりとその身体を抱き締めた。
「大丈夫だよ。ハリー。何があったのか話してごらん?」
そう言うとハリーは泣き出した。そして。
「魔物が溢れ出してしまうというのです!」
「魔物が溢れ出す? スタンピードの事かな? モーリス領のダンジョンなら小規模だけれどもう起きていると知らせが来ているよ?」
「違います! 王様の森です!」
「王様の森? どういう事?」
「妖精たちが大騒ぎをしていました。王様の森に魔物が溢れ出してしまうと」
「ちょ、ちょっと待ってハリー。どういう事なの? 王様の森って……父様達が行っている北の? それとも」
「違います。違うんです!」
まるで駄々っ子のように泣き叫びながら首を横に振るハリーに僕はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。けれどいつの間にかその騒ぎを聞いてトーマス君とスティーブ君が戻って来てくれていた。
「こんにちは。ハロルド様」
先に声をかけたのはスティーブ君だった。
「あ……」
「大丈夫だよ。僕たちもエディもちゃんと君の話を聞くよ。僕とスティーブは妖精の声が聞こえないけれど、でも妖精の話を信じる事は出来るよ。パーティーも一緒に開いたしね」
トーマス君の穏やかに話をしてくれる。もう何度も会っている顔馴染みの二人にハリーの顔から少しだけ緊張感が取れた。
「は、はい……はい」
「とりあえず、妖精がどんな話をしたのか聞かせてもらえるかな」
「はい。取り乱してすみませんでした。妖精たちが助けてほしいって泣くので、僕まで焦ってしまいました。色々な子が言っていたのですが、話を要約すると、入ってはいけない所に入ったから、繋がってはいけない所が繋がってしまった。だから王様の森に魔物が溢れ出してしまうと。王様の森には多くの妖精たちが住んでいるから助けてほしいって」
「王様の森って、どちらの事だろう。妖精が言っているならば妖精の王様がいる森なんだろうか」
スティーブ君が眉間に皺を寄せた。
「えっとね、ハロルド君。今、北の森にはフィンレー侯爵様達がドラゴンと対峙をしているんだ。そして南の森ではレイモンド伯爵様達が魔人や魔物と対峙をしている。そのどちらかにこれからスタンピードが起きる様な事があれば大変な事になるんだ。妖精はどちらの森って言っていたか分かるかな」
トーマス君の言葉にハリーは首を横に振った。
「違います。北の森でも南の森でありません。王様の森です」
「王様の森……どこの事だろう」
王都内であれば大きな森は北の森と南の森になる。そして妖精たちがそれほど騒ぐのであれば、それは本当に起こりうる事なのだろう。
入ってはいけない所に入った。繋がってはいけない所に繋がった。まるで謎解きのようだ。
「……もう一度温室に行ってみよう。もしかしたらまた違う情報が出てくるかもしれない。それに僕が声を聞ける子もいるからしれないし」
「! はい! 兄様お願いします! 一緒に聞いて下さい。聞こえた声を口にするのでスティーブさんもトーマスさんも一緒に考えていただけますか?」
「もちろん! 皆で聞けば色々な意見がきっと出てくるよ。モーリス以外の所でスタンピードが起こるのなら一刻も早く場所を特定できた方がいい」
僕たちは応接室に居た友人達みんなで温室へと向かった。
「何の騒ぎだ?」
「!! お祖父様!」
そして、その場に力強い応援が来て下さった。
--------------
お祖父様ぁぁぁ!
( * >艸<)
また北の森に関しては、ドラゴンがとても大きな黒竜で、他の町に下りたら大変な被害が出てしまう可能性がある為、封印強化に参加をしていたフィンレー、トールマン、ランドールの騎士や魔導騎士の皆さんとシルヴァン殿下とロイス様とダニエル君、そしてルシルが討伐に参加をする事になったという知らせが入り、僕たちは思わず顔を強張らせてしまった。
ドラゴンの討伐に同じ年の友人が入っている。ルシルは確かに光の愛し子という加護を持っているけれど、それでも僕たちにとっては仲間の参戦というものがとてもショックだったんだ。
王城の裏手に広がる森の横にある王宮神殿と王家の墓廟には魔素だけでなくアンデッドが湧き出したという知らせも来た。南の守塚で捕らえられた魔人がオルドリッジ元公爵だったのかも分からないし、捕らえた時に分裂をしていなかったのかも分からないので、アンデッドの他に魔人も現れるのではないかと心配になった。
こうして次々に届く知らせを聞きながら僕はハリーの事をすっかり忘れていた事にようやく気が付いた。
ルーカスとジョシュアを付けていた事と、その後テオに様子を見てほしいって言伝をした事で頭から抜けていたんだ。あれからどれくらいの時間が経っただろう。ハリーは妖精と話が出来たのかな。妖精が騒いでいた事は何だったんだろう。
「現時点で僕らに出来る事はないね。とにかく予定通りにポーションを作ろうかと思うんだ。ドラゴンやアンデッドなど想定外のものが出て必要数が多くなるかもしれないし、とりあえずは怪我を治すポーションと魔力回復のポーションを増やしておきたい」
僕がそう言うとトーマス君が「そうしよう。何か出来る事をしよう」と立ち上がった。
「俺にも何か手伝えるかな」
クラウス君が神妙な顔をして言うので、僕は「もちろん」と笑って頷いた。
そうだ。とにかく今出来る事を考えよう。入って来る知らせを聞いて、他にも何か出来る事があるならば出来る事を広げていけばいい。
そして祈ろう。そのお祈りがどんな風に届くのかは分からないけれど、誰も大きな怪我をしないように。魔人やアンデッドが無事に浄化できるように。そしてドラゴンが大きな被害をもたらす事なく、討伐する事が出来ます様に。今はそれしか出来ないから。
材料を揃えるべく僕はトーマス君とスティーブ君そしてユージーン君と一緒に応接室を出た。テオがすぐさまやって来る。
「エドワード様、どちらへ」
「ああ、応接室で皆と一緒にポーションを作ろうかと思って。少し足りないものがあるから揃えに一度温室へ。ハリーの方はどうかな?」
「それが……」
「テオ?」
「なりません! お屋敷からお出にならないように旦那様からきつく申しつかっております」
「でも助けてって言っているんだ!」
「ハロルド様、落ち着いてくださいませ! その場に行って何が出来ますか!」
「じゃあ父様の所に行ってお話を」
「なりません!」
「チェスター!」
聞こえてきたその声に僕はビックリして足を止めてしまった。三人も聞いてはいけないものを聞いてしまったというような表情を浮かべて後ろを向く。
「ちょっと話をしてくるね」
「ああ、では私たちは一度応接室へ戻って」
「エディ兄様!!」
その瞬間ものすごい勢いでハリーが2階から駆け下りてきた。どうやら一度部屋に戻されたみたいだった。
「ハロルド様! 申し訳ございませんエドワード様。先ほどから少し興奮をなさっていらして」
「エディ兄様! 助けて、助けて下さい!」
明らかに様子のおかしいハリーに、僕はゆっくりとその身体を抱き締めた。
「大丈夫だよ。ハリー。何があったのか話してごらん?」
そう言うとハリーは泣き出した。そして。
「魔物が溢れ出してしまうというのです!」
「魔物が溢れ出す? スタンピードの事かな? モーリス領のダンジョンなら小規模だけれどもう起きていると知らせが来ているよ?」
「違います! 王様の森です!」
「王様の森? どういう事?」
「妖精たちが大騒ぎをしていました。王様の森に魔物が溢れ出してしまうと」
「ちょ、ちょっと待ってハリー。どういう事なの? 王様の森って……父様達が行っている北の? それとも」
「違います。違うんです!」
まるで駄々っ子のように泣き叫びながら首を横に振るハリーに僕はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。けれどいつの間にかその騒ぎを聞いてトーマス君とスティーブ君が戻って来てくれていた。
「こんにちは。ハロルド様」
先に声をかけたのはスティーブ君だった。
「あ……」
「大丈夫だよ。僕たちもエディもちゃんと君の話を聞くよ。僕とスティーブは妖精の声が聞こえないけれど、でも妖精の話を信じる事は出来るよ。パーティーも一緒に開いたしね」
トーマス君の穏やかに話をしてくれる。もう何度も会っている顔馴染みの二人にハリーの顔から少しだけ緊張感が取れた。
「は、はい……はい」
「とりあえず、妖精がどんな話をしたのか聞かせてもらえるかな」
「はい。取り乱してすみませんでした。妖精たちが助けてほしいって泣くので、僕まで焦ってしまいました。色々な子が言っていたのですが、話を要約すると、入ってはいけない所に入ったから、繋がってはいけない所が繋がってしまった。だから王様の森に魔物が溢れ出してしまうと。王様の森には多くの妖精たちが住んでいるから助けてほしいって」
「王様の森って、どちらの事だろう。妖精が言っているならば妖精の王様がいる森なんだろうか」
スティーブ君が眉間に皺を寄せた。
「えっとね、ハロルド君。今、北の森にはフィンレー侯爵様達がドラゴンと対峙をしているんだ。そして南の森ではレイモンド伯爵様達が魔人や魔物と対峙をしている。そのどちらかにこれからスタンピードが起きる様な事があれば大変な事になるんだ。妖精はどちらの森って言っていたか分かるかな」
トーマス君の言葉にハリーは首を横に振った。
「違います。北の森でも南の森でありません。王様の森です」
「王様の森……どこの事だろう」
王都内であれば大きな森は北の森と南の森になる。そして妖精たちがそれほど騒ぐのであれば、それは本当に起こりうる事なのだろう。
入ってはいけない所に入った。繋がってはいけない所に繋がった。まるで謎解きのようだ。
「……もう一度温室に行ってみよう。もしかしたらまた違う情報が出てくるかもしれない。それに僕が声を聞ける子もいるからしれないし」
「! はい! 兄様お願いします! 一緒に聞いて下さい。聞こえた声を口にするのでスティーブさんもトーマスさんも一緒に考えていただけますか?」
「もちろん! 皆で聞けば色々な意見がきっと出てくるよ。モーリス以外の所でスタンピードが起こるのなら一刻も早く場所を特定できた方がいい」
僕たちは応接室に居た友人達みんなで温室へと向かった。
「何の騒ぎだ?」
「!! お祖父様!」
そして、その場に力強い応援が来て下さった。
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お祖父様ぁぁぁ!
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