悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

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第8章  収束への道のり

301. 王城

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 王城の中は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。次々に入ってくる信じられないような知らせ。
 何を優先して、どこに、どのような援軍を、どこから送ればいいのか。

 届く書簡の情報を最短で共有する為に、グレアムは話し合いの場所を応接の間に移した。集められているのは宰相府の役人たちとニールデンなどの高位の貴族たち、そしてアルフレッドと、珍しく王太子とその側近たちもいた。

「王宮神殿と墓廟に魔素が湧いているという事は、南の森に現れたという魔人が魔素を渡ってやってくる可能性もあるという事になります」
「聖神殿から浄化の聖魔法が使えるものを呼んでおくことも必要かと」
「いえその前に、南の森の魔人に聖神殿の者を送った方が」
「ドラゴンについてはどのように応援を送ればよろしいか! ギルドへの依頼はモーリスの方に出しておりますのでここで北の森というと人員が分かれてしまう恐れがあります」
「スタンピードの現状については何か報告がきていないのか!」
「二十層で湧きだして、十五層まで上がってきているというのが最後です! 今来ました! 十二層まで。大型種が増えているようです! 冒険者たちの集まりは良いようです」

 いつもならばフィンレーなどの重鎮たちが仕切る会議も、全員が最前線に出ているため、今日は宰相府の役人たちの声が飛び交う事となっていた。
 どこをどのように強化をして、何を優先すればいいのか。現場からの知らせを待ちながら出来る事を考え、手配をしておく。無暗に現場へ赴く事は、かえってその場を混乱させてしまう恐れがある為に出来ない。

「北の森は現時点で一番戦力がある状態だ。持ちこたえられるか、それとも支援を送るか確認するようロイスに書簡を」
「畏まりました!」

 ニールデンの言葉に公爵家の側近が即座に答えた。

「南の森の方にはマーティンに連絡を入れています」

 アルフレッドがニールデンに向けて口を開いた。

「レイモンド卿への問い合わせは難しいだろう。それでいい」
「北にはロイス様へご連絡がいったようですので、王宮神殿の方に居るジェイムズに連絡を入れました」
「知らせがあればすぐに共有を」
「はい」

 そんなやりとりをしていると北の森から帰還者があったという報告が来た。

「すぐに現状を伝えるようにここへ」
「は」

 戻ってきたのはアシュトンなど土魔法隊の数名だった。

「御前失礼いたします。北の森より戻りました、アシュトン・ラグラル・レイモンドでございます。状況を説明させていただきます」
「許す」
「北の守塚では第三の『首』<絶望>の封印部屋の封印強化を行い、終了致しました。途中魔物が現れる様子もなく、順調に封印強化が出来ましたが、第二の『首』の時と比べてその手応えのなさから、分裂体ではないかという疑問の声が上がりました。ですが封印強化自体はそのまま続行。終了後、祈りの場とするべく土魔法の長けた者によって神殿のようなものを建てている時にいきなりドラゴンが現れました。黒竜です」

 部屋の中に「黒竜!」という声があがった。

「飛来したのではなく、現れたと。湧いて出たということか?」
「分かりません。ですがあの大きさです。どこからか飛んできたならばもう少し早く分かっていた筈です。しかし気づいた時にはすでにはっきりと姿が判るほどの大きさで空にいたのです。現れたのは封印強化終了後ですので、『首』が喚んだとは考えにくい状況です。ですから、どこからきたのか、どうやって現れたのかは分かりません。森の上を旋回し、威嚇をしている状況が続いております。瘴気を数回吐き出しており、森の一部が穢れましたが、私が来るまでの間にはその場にいた者達への被害はありませんでした。しかし、このままにしておくわけには行かず、フィンレー、トールマン、ランドールからの騎士・魔導騎士合わせて60名とシルヴァン殿下と側近2名、および光の愛し子が討伐に参加をする事になりました。フィンレー侯爵様が指揮官となっております。治癒魔法が出来る神官が居りますので、怪我などはポーションと治癒魔法で行います。なお、元フィンレー当主カルロス様は南の守塚の封印が可能かを聖神殿の神官と、使用する眠りのクスリなどの確認を行うため北の森を離れました。フィンレーは王宮神殿へ自領の魔導騎士を20名派遣しておりますので、これ以上の追加は出来ず、どこからか戦力の支援をお願い致します」

 アシュトンが頭を下げるとすぐにニールデンとトールマンが手をあげた。

「ニールデンからは魔導騎士隊を50名向かわせるように整えます」
「では、トールマンからは追加で30名を」

 当主たちの言葉に側近たちが部屋を出て行く。

「黒竜の他に魔物は出てはいなかったのだな?」
「はい。現時点では」
「分かった。アシュトン、ご苦労だった。北の森は戻るのか?」
「いえ、私は元々アレックス様の護衛ですので、その任に戻るよう指示を受けております」

 アシュトンはそう言って下がった。

「陛下、南の森から知らせが届きました」
「うむ。伝えよ」
「は、魔人は捕縛。ですが、魔物が湧き始めているそうです。こちらにはレイモンドの私団が追加をされているようですが、一領では難しい状況のようです」
「捕縛をした魔人はオルドリッジ元公爵だろうか」
「そこまでは書かれておりません」
「出来れば確認を。魔人は以前分裂が認められている。今回は分裂をせずに捕縛出来たのかもだ。分裂して他に現れる可能性があるならば」
「恐れながら、戦闘中の細かなやり取りは難しいでしょう。南の森でしたらコートニーズから支援を送ります。自領の魔導騎士団50名の手配を致します」

 コートニーズ公爵家の当主の言葉に側近が部屋を飛び出した。

「陛下、墓廟からです。魔素から小物ですが、魔物が湧き始めたそうです。それと、アンデッドも」
「アンデッド!?」
「光魔法の出来るものを向かわせますか? 聖神殿にも連絡を入れて」
「…………聖神殿には現状を伝え、穢れに取り込まれた者の受け入れ準備をせよと。とりあえず、王宮の魔導騎士隊の中で光魔法が使える者を墓廟へ。各領の神殿へ治癒魔法士がすぐに動けるように準備をしておくように、聖属性の魔法が使える者は聖神殿に待機をするようにも伝えよ。聖魔法士が必要な者は聖神殿で受け入れる」
「は!」

 緊迫した空気は続く。けれど以前の会議に比べればどれほどかまともになったとグレアムは思っていた。
 どうかこのまま沈静化の方向へ動いていってほしい。
 誰も傷つかずにと願う事は甘い事なのかもしれないが、それでも願わずにはいられない。どうか。

「陛下! 王宮の南側の森で異変があると。森の動物たちが一斉に逃げ出していると報告が参りました!」
「すぐに詳細を! 逃げる動物たちは出来る限り捕らえて安全な魔所へ移動を。街中に走り出ないように。また無暗に殺してはならん。あの森の動物は精霊の使いや妖精の使いである可能性があると言い伝えられている」
「か、かしこまりました!!」

 顔を引きつらせながら返事をした若い役人をアルフレッドはどこか呆然としたように眺めて、それぞれの地の側近たちとエドワードに新たな書簡を出した。


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以前に比べて少しまともになってきている会議。でもパニック中。。。。

 
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