155 / 335
第8章 収束への道のり
267. 緊急の話し合い
しおりを挟む
ティオの話をすると、ハリーはものすごく怖いというか、表情が抜け落ちてしまったような顔をして、契約をしている妖精たちに魔法で手紙を出した。いつの間にそんな事が出来るようになったんだろう。ハリーはすごいな。
そう言うと「エディ兄様はもっとすごいですよ」という。僕のどこが凄いのかはちょっとわからないけど、それでも褒められたのは嬉しい、そう思っているとハリーは小さく笑いながら口を開いた。
「加護の力もとてもすごいです。でもそれをちっとも威張ったりしないで、どうやったら役に立つのかをいつも普通に考えているのがすごいです。僕も一時は少し悩んだんですよ。この力は何の役に立つのか、どうやって使っていったらいいのか。でも使っていくって考えるんじゃなくて、どんな事が出来るのか、それが何の役に立つのかって考えたら少し楽になって妖精たちがとても可愛くなりました。エディ兄様のように色んな事を試してみようって、そう思うと妖精たちとの契約が増えたんです。本当は妖精たちと関わりすぎると妖精になってしまうんじゃないかって心配になったりしたんですけど契約した妖精たちに「愛し子は人の子だよ」って言われたのと、母様が「連れて行かれそうになったら絶対に引き留めてあげる」って」
パティ母様らしいなって僕は思わず笑ってしまった。それにつられるようにハリーも笑った。
ハリーが契約をしている妖精たちは三人きてくれた。やっぱり大きな人から出歩いてはいけないと言われていたみたい。僕はその子たちの声は聞こえないし、ハリーが呼んだ子たちだから僕はその場には居られなかった。
話が終わるとハリーは難しい顔で温室から出てきた。
「よく分からない所があるのですが、やはり何か良くない事が起きているようです。お祖父様か父様にご相談をした方がいいと思います。兄様と契約をしたティオの話と大体同じですが」
「分かった。そうしたら、お祖父様と父様と兄様に魔導書簡を出すよ。妖精たちから今回の事件の手掛かりになるような話を聞いたので至急ご相談をしたいって」
「はい。急いだ方がいいような気がします」
僕はすぐに書簡を出した。
なかなか温室から戻ってこない僕たちを心配してウィルとマリーとジョシュアがやってきた。
勿論僕の護衛の一人ルーカスとハリーの護衛も一人、ちゃんとついていたんだけどね。
お祖父様は先ほど戻られたばかりなのに、すぐに来て下さった。
そして、兄様もやってきた。父様は今お城にいるので、兄様が代わりに聞いてくることになったという。
応接室にお祖父様と兄様とハリーと僕、そして「何が起きているのか話だけでも聞かせてほしい」ってウィルも部屋に入った。
ウィルは本当に大きくなった。体つきも全然違う。ちょっと見ただけだとハリーと双子には見えないほどだ。
「急にお呼びたていたしまして申し訳ございません。書簡でもお知らせ致しました通りに契約している妖精から聞いた話を至急お知らせした方がいいとハロルドと判断いたしました。まずは僕の方から。最近妖精の姿を見る事がなく少し気になっていました。今日もイチゴを用意していたのですが現れず、どうしたのかと思っていると僕が一人になっているのを見て声をかけてきました。彼らが『大きい人』と呼んでいる者が、出歩く事を制限しているようでした。こわいのがくるからあそびにいったらだめ。おおきいひとにいわれたと言っていました。以前もこわいのといわれた事がありその時は黒い何かに飲み込まれるような夢を見た後に魔人の騒ぎがあったので、同じこわいのなのかを確認すると、こわいのはちがうこわいのだと」
「違う怖いの? では魔人や魔素ではないという事なのかな」
兄様の問いに僕は「そんな感じでした」と答えた。
「それで、その後に気になる事を口にしたんです。「つかまるときえちゃう」と」
「捕まると消える? それは妖精が、なのかな」
「そこが少し曖昧だったのですが、その後「こわいのがつかまえるの。つかまったらきえちゃう。ともだちがつかまった。つかまえるのに、つかわれてきえちゃった」と言っていました。僕のお友達もどこかに消えちゃったと、急に影の中に落ちたんだってと話をしたら「かげにおちるのはようせいがつかわれたの」と」
「影に落ちるのは妖精が使われた?」
兄様が難しい顔をして言葉を繰り返した。
「はい。それでハリーが来たのでその話をしたところ、ハリーが自分の契約している妖精に連絡をしてくれました」
そこで僕はハリーを見た。ハリーはコクリと頷いて口を開いた。
「エディ兄様に話を聞いて良くない事が起きていると思って契約している子たちに手紙を出しました。来てくれたのは三人だけでした。やはり『大きい人』に出歩く事を注意されているようです。三人はとても怖がっていました。自分たちの仲間が何人も怖いのに捕まってしまったと。怖いのが何なのかは分かりませんでした。でもそれは妖精を捕まえて、その妖精をおそらくは犠牲にして何か呪術的な事を行っているように感じました。はっきりとは言いませんでしたが、怖いのから逃げようとする力を使われて消されてしまう。影に隠れると言っていました。「かげにかくれようとするとそれをつかわれる」だから友達は消えてしまった。影には人が落ちた。落ちた人がどうなったのか知らない。影に落ちても死なない」
「怖い人は妖精を使って人を集めているのかなって聞いたのですが、わからない、こわい、かえる、しか答えが返ってこなくて、もう無理だと思ってお土産を沢山持たせて、お礼を言って、怖いのをやっつけられるように僕も考えるよと言いました。今、各地で消息不明者が増えている事は耳に入ってきます。今回の話、何か手掛かりになればいいのですが」
「…………ふむ」
ハリーの言葉を聞き終えて、お祖父様は考え込むようにして小さな声を漏らした。
-------------
そう言うと「エディ兄様はもっとすごいですよ」という。僕のどこが凄いのかはちょっとわからないけど、それでも褒められたのは嬉しい、そう思っているとハリーは小さく笑いながら口を開いた。
「加護の力もとてもすごいです。でもそれをちっとも威張ったりしないで、どうやったら役に立つのかをいつも普通に考えているのがすごいです。僕も一時は少し悩んだんですよ。この力は何の役に立つのか、どうやって使っていったらいいのか。でも使っていくって考えるんじゃなくて、どんな事が出来るのか、それが何の役に立つのかって考えたら少し楽になって妖精たちがとても可愛くなりました。エディ兄様のように色んな事を試してみようって、そう思うと妖精たちとの契約が増えたんです。本当は妖精たちと関わりすぎると妖精になってしまうんじゃないかって心配になったりしたんですけど契約した妖精たちに「愛し子は人の子だよ」って言われたのと、母様が「連れて行かれそうになったら絶対に引き留めてあげる」って」
パティ母様らしいなって僕は思わず笑ってしまった。それにつられるようにハリーも笑った。
ハリーが契約をしている妖精たちは三人きてくれた。やっぱり大きな人から出歩いてはいけないと言われていたみたい。僕はその子たちの声は聞こえないし、ハリーが呼んだ子たちだから僕はその場には居られなかった。
話が終わるとハリーは難しい顔で温室から出てきた。
「よく分からない所があるのですが、やはり何か良くない事が起きているようです。お祖父様か父様にご相談をした方がいいと思います。兄様と契約をしたティオの話と大体同じですが」
「分かった。そうしたら、お祖父様と父様と兄様に魔導書簡を出すよ。妖精たちから今回の事件の手掛かりになるような話を聞いたので至急ご相談をしたいって」
「はい。急いだ方がいいような気がします」
僕はすぐに書簡を出した。
なかなか温室から戻ってこない僕たちを心配してウィルとマリーとジョシュアがやってきた。
勿論僕の護衛の一人ルーカスとハリーの護衛も一人、ちゃんとついていたんだけどね。
お祖父様は先ほど戻られたばかりなのに、すぐに来て下さった。
そして、兄様もやってきた。父様は今お城にいるので、兄様が代わりに聞いてくることになったという。
応接室にお祖父様と兄様とハリーと僕、そして「何が起きているのか話だけでも聞かせてほしい」ってウィルも部屋に入った。
ウィルは本当に大きくなった。体つきも全然違う。ちょっと見ただけだとハリーと双子には見えないほどだ。
「急にお呼びたていたしまして申し訳ございません。書簡でもお知らせ致しました通りに契約している妖精から聞いた話を至急お知らせした方がいいとハロルドと判断いたしました。まずは僕の方から。最近妖精の姿を見る事がなく少し気になっていました。今日もイチゴを用意していたのですが現れず、どうしたのかと思っていると僕が一人になっているのを見て声をかけてきました。彼らが『大きい人』と呼んでいる者が、出歩く事を制限しているようでした。こわいのがくるからあそびにいったらだめ。おおきいひとにいわれたと言っていました。以前もこわいのといわれた事がありその時は黒い何かに飲み込まれるような夢を見た後に魔人の騒ぎがあったので、同じこわいのなのかを確認すると、こわいのはちがうこわいのだと」
「違う怖いの? では魔人や魔素ではないという事なのかな」
兄様の問いに僕は「そんな感じでした」と答えた。
「それで、その後に気になる事を口にしたんです。「つかまるときえちゃう」と」
「捕まると消える? それは妖精が、なのかな」
「そこが少し曖昧だったのですが、その後「こわいのがつかまえるの。つかまったらきえちゃう。ともだちがつかまった。つかまえるのに、つかわれてきえちゃった」と言っていました。僕のお友達もどこかに消えちゃったと、急に影の中に落ちたんだってと話をしたら「かげにおちるのはようせいがつかわれたの」と」
「影に落ちるのは妖精が使われた?」
兄様が難しい顔をして言葉を繰り返した。
「はい。それでハリーが来たのでその話をしたところ、ハリーが自分の契約している妖精に連絡をしてくれました」
そこで僕はハリーを見た。ハリーはコクリと頷いて口を開いた。
「エディ兄様に話を聞いて良くない事が起きていると思って契約している子たちに手紙を出しました。来てくれたのは三人だけでした。やはり『大きい人』に出歩く事を注意されているようです。三人はとても怖がっていました。自分たちの仲間が何人も怖いのに捕まってしまったと。怖いのが何なのかは分かりませんでした。でもそれは妖精を捕まえて、その妖精をおそらくは犠牲にして何か呪術的な事を行っているように感じました。はっきりとは言いませんでしたが、怖いのから逃げようとする力を使われて消されてしまう。影に隠れると言っていました。「かげにかくれようとするとそれをつかわれる」だから友達は消えてしまった。影には人が落ちた。落ちた人がどうなったのか知らない。影に落ちても死なない」
「怖い人は妖精を使って人を集めているのかなって聞いたのですが、わからない、こわい、かえる、しか答えが返ってこなくて、もう無理だと思ってお土産を沢山持たせて、お礼を言って、怖いのをやっつけられるように僕も考えるよと言いました。今、各地で消息不明者が増えている事は耳に入ってきます。今回の話、何か手掛かりになればいいのですが」
「…………ふむ」
ハリーの言葉を聞き終えて、お祖父様は考え込むようにして小さな声を漏らした。
-------------
358
お気に入りに追加
10,823
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
悪役令息を引き継いだら、愛が重めの婚約者が付いてきました
ぽんちゃん
BL
双子が忌み嫌われる国で生まれたアデル・グランデは、辺鄙な田舎でひっそりと暮らしていた。
そして、双子の兄――アダムは、格上の公爵子息と婚約中。
この婚約が白紙になれば、公爵家と共同事業を始めたグランデ侯爵家はおしまいである。
だが、アダムは自身のメイドと愛を育んでいた。
そこでアダムから、人生を入れ替えないかと持ちかけられることに。
両親にも会いたいアデルは、アダム・グランデとして生きていくことを決めた。
しかし、約束の日に会ったアダムは、体はバキバキに鍛えており、肌はこんがりと日に焼けていた。
幼少期は瓜二つだったが、ベッドで生活していた色白で病弱なアデルとは、あまり似ていなかったのだ。
そのため、化粧でなんとか誤魔化したアデルは、アダムになりきり、両親のために王都へ向かった。
アダムとして平和に暮らしたいアデルだが、婚約者のヴィンセントは塩対応。
初めてのデート(アデルにとって)では、いきなり店前に置き去りにされてしまい――!?
同性婚が可能な世界です。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
※ 感想欄はネタバレを含みますので、お気をつけください‼︎(><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。