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第7章 厄災
244. 作戦開始
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元ハーヴィン領の領主の館跡は緊張に包まれていた。
だが、もう話は尽くした。ここからは考え抜いた通りに、進捗状況の報告はこまめに、そして予想に反した事に関しては必ず連絡をして臨機応変に動く。決められているのはそれだけだ。
まず取り掛かったのはハーヴィン家の別棟にあたる屋敷を取り除く事だった。これはもうあっという間に終わった。カルロスが持ってきたマジックボックスにサクッと入れたからだ。ただ、マジックボックスには生き物は入れる事が出来ないので、そこに残ってしまった生き物を騎士や魔導騎士たちが肩慣らしだと言ってあっという間に消した。もっとも、害のない、そして繁殖をしてもそれほど大きな影響のないものは放す事になった。
そして空いたスペースを土魔法を使えるもの達が、これまたサクッと整地をして、カルロスのマジックボックスから土魔法チームの作品ともいえる様な戦闘屋敷が取り出されて設置をされた。
そこに居た者たちからは歓声があがり、デイヴィットは頭を抱えた。
ここで戦う者たちは中を確認する為にそこに入り、地下通路を突破する者達はハーヴィンの屋敷内に入った。
魔物が居る状況であればすぐに戦う事になる。それは十分説明をされて、全員が転移をしていきなり現れるだろう魔物たちを待つ準備をする。これからどのような戦闘になるかは分からないが、前回いたというガルムは来るだろう。
「腕が鳴るな」
そう言った父にマーティンは「ほどほどに」と言って出来上がった部屋というよりは戦うための箱を眺めた。
この日が良い記念日になってほしい。そう思っていると。「来るぞ!」という声が聞こえた。入口から入った者達が扉の前に行きつくにはまだ早い時間だ。父であるケネスが大きな声をあげた。
「結界は緩んでいたか、『首』の力が増していたか、通路に魔物が出ている。送られてくるものを徹底的に叩け!」
「は!!」
言葉と同時にこの前も来たらしいヘルハウンドが唐突に現れた。
「まずは5匹か……。飛ばし過ぎるなよ!」
そう言いながら走っていく父の背中を見ながらマーティンは「やれやれ」とため息をついて、次に次に送られてくるヘルハウンドに向かって氷の槍を突き刺した。土魔法で出来た部屋の床は傷一つ付く事がなく、その強化の高さに思わず笑みが浮かんだ。
デイヴィット達はハーヴィン家本棟の地下に来た。目の前には先日死に物狂いで閉めた扉がある。あの時は開けた途端ヘルハウンドがけたたましい声を上げてやってきた。今日はどうだろうか。まだ結界は効いているだろうか。それとも『首』と一緒に閉じ込めた筈のガルムが、そこが開くのを今か今かと待ち構えているだろうか。
「これから最初の扉を開く。中は狭い、無理はせず、出来る限り戦闘部屋に転送をさせろ。後方の土魔法を使うものは魔力を温存してほしい。フィンレー隊10名とレイモンド団10名、作戦通りに近衛隊5名は魔導騎士の取りこぼしの処理だ。後ろの土魔法隊に魔力を使わせるな。では、行くぞ」
デイヴィットの言葉と同時に先日かけた結界が解かれ、防御壁を崩して扉が開いた。
途端に聞こえてくる犬の声。どうやら部屋の結界は壊されたか、結界があってもなお、『首』は魔物を喚べるかのどちらかのようだった。
「ハワード、レイモンドとアルフレッドに連絡だ。魔物が居る」
後方から「了解」という声が聞こえた。
狭い通路の中に滑り込むようにして次々と入ると前方からヘルハウンドが襲い掛かってきた。
それを風の剣で切り捨てながら、次の個体は転送をした。
この前は7頭だったが、今回はそれよりは多い。それだけ喚べる力を持っているという事だ。
「全く初っ端からの歓迎に嬉しくて涙が出そうだな。ロイス様、大丈夫ですか?」
「問題ありません。次、私が転送をします」
狂ったように鳴きながら飛びかかって来るヘルハウンドをもう一度風の刃で切り捨てた途端、横に居た個体が消えた。ロイスが宣言通りに転送したのだろう。実戦の経験はない筈だが、中々の逸材だ。勿論他の騎士たちも負けてはいない。
後ろの神官たちの集団もそろそろ通路の中に入っただろうか、そう思った途端、今度は蟻がきた。勿論普通の蟻ではない。アーミーアントだ。
「アーミーアントだ、蟻酸に注意しろ! ここは狭い。出来る限り送れ! 神官たちの方には決して通すな!」
狭い穴の中で子供ほどもある大きさの蟻との戦いが始まった。
「やはり結界が解かれていたか、『首』の力が強くなっているのか、地下は通路に魔物が現れ、レイモンド伯の方でも戦闘が開始になりました。ヘルハウンドの次はアーミーアントで、その後にオーガが現れたそうです」
「うむ。多種だな。地下の方に数名を回すか。万が一を考えて孤立をしないように神官たちも後方に付けた事が裏目に出たか」
「そうですね。こんなに多くの魔物が出るとは思っていませんでしたから」
「うむ、救援の要請は」
「ありません」
「では、もうしばらく様子見だ。これ以上人が増えても身動きが取れなくなるだろう」
「分かりました」
返事をしてアルフレッドは周囲を見回した。視線の先には大きな戦闘部屋があり、あの中では地下から次々に送られてくる魔物たちと戦っている。そして今自分が立っているこの真下を目指して、父たちがやはり魔物と戦っている。
枯れて水のない噴水、荒れて、草がぼうぼう生えている庭。
もうすぐこの場も静かな戦いの場になる。上から押さえつけて、部屋の中に薬を流し込む。何としても『首』を眠らさなければならないのだ。
その途端『連絡』が入った。
一々書簡を開けているわけにいかないので、今回の連絡はそのまま受取人に向けて声が流れる仕様になっている。
『オークの次はエレキ・スパイダー。感電をした者が出た。治癒魔法を施していただいたが、交代をしてほしい。そちらへ転移させる』
そう言った途端三人の魔導騎士と一人の騎士が転移をしてきた。
「列の後方にハワード様がいらっしゃいます、そちらを目印に転移をお願いいたします」
「分かりました」
同じ数の騎士達を送る際、エディから預かってきた魔力回復ポーションをマジックポーチに入れて大目に持たせた。おそらくは父も同じように持たされているとは思うが、必要な時にどこでも取れるようになっていてほしい。
「「神の間」まではどれくらいだろう」
転移をしてきた魔導騎士の中にフィンレーの者を見つけて、アルフレッドはそう訊ねた。
「おそらくはもうそろそろだと思います。ただ前回に比べてかなり魔物の数が多いです。それだけ『首』の力が増しているのかと思うと恐ろしいです」
「……そうか。とりあえずそちらで魔力回復のポーションを飲んで、次に備えてほしい」
「畏まりました」
『ガルムが三匹出た。部屋の戸は閉まっている。応援を要請する』
「お祖父様、ガルム三匹での応援要請です。魔導騎士二名と一緒に様子を見てきます」
「うむ」
「アルフレッド様、私たちも戻ります」
「いや、広げないうちに人数を増やすと動きが取れなくなる可能性がある。3人で限界だろう。交代でつなぐ。回復をしていてほしい」
「畏まりました」
そしてアルフレッドは二人の魔導騎士達と地下へ飛んだ。
転移は後方の神官たちと一緒にいるハワードに照準を合わせる。
転移をした途端、神官たちがホッとしたような顔をした。
「ガルムだそうですね」
「はい。そのようです。こちらは私と騎士達で守りますので、ダニエルも前方へお連れ下さい。よろしくお願いします」
そう言われて、アルフレッドはそのままダニエルとアイコンタクトを取って前方へ走り出した。体力は使うが、下手なことろに転移をしてしまう方が恐ろしい。
「これがたった一体の『首』が喚んでいるのかと思うだけで恐ろしいよ」
「ああ。とにかく二体は送ろう。ここでは思うように魔法が使えない」
「了解だ」
戦っている場が見えてきた。ガルムはまだ二体いる。
「父上!」
「アルフレッドか。ああ、ハワードの」
「ダニエルとお呼び下さい」
「ではアルフレッド、ダニエル、あれを縛り上げてあっちに送ってくれ。さすがに狭くて同時進行で少し広げてもらっているんだ。今来た魔導騎士は土魔法を使っている者達にガルムを近寄らせないようにしてほしい」
「は!」
さすがにガルムが二体いると動線が重なって動きが悪くなる。三体の時はさぞかし大変だっただろう。
「水檻で縛り上げるから送れるか?」
「それよりも魔人の時の魔道具を持っているからあれで捕らえたらそのまま送ってくれ」
「分かった」
動きは最小限の方が良い。ダニエルは魔道具を取り出して、魔力を流し、照準を合わせて魔力の鎖のようなものをガルムに向かって投げた。すると鎖はガルムの身体にグルグルと巻き付いていく。そして「ギャン!」という声と共に、ガルムの身体は縛られたままかき消えた。
「お見事」
「そちらも」
「ああ、片付いたね」
ちょうどデイヴィット達も残りの一体に氷の槍を何本も打ち込んで絶命させたところだった。
「狭いし、使える魔法は限られるし、本当に思っていた以上に厳しいね。さて、土魔法チームには今のうちにガンガン広げてもらおう」
「父上、魔力回復のポーションは」
「ああ、エディがポーチに山のように入れて持たせてくれたからね。大丈夫だ。とりあえず、扉は閉まっているのでこのままもう一度結界をかけてしまう。それでも魔物が現れるかもしれないが、その場で対応していくしかないね。。持ち場にもどって父上に始めていただくように伝えてほしい。助かった、ありがとう。こちらに来た魔導騎士についてはこのままで。ここが広がれば人数が多少増えても何とかなるからね。この場を部屋として強化をしてもらえば最悪他が潰れてもここから転送陣で戦い部屋に行かれる。とりあえず、扉の強化と転移陣を設置するよ」
「分かりました。では」
短く返事をしてアルフレッドは噴水へと戻った。そして父からの言葉をカルロスに伝える。
「分かった。では『首』を眠らせる。噴水自体の強化を」
『首』との3か所目の戦いが静かに始まった。
---------------
ふぉぉぉぉ(=_=)
だが、もう話は尽くした。ここからは考え抜いた通りに、進捗状況の報告はこまめに、そして予想に反した事に関しては必ず連絡をして臨機応変に動く。決められているのはそれだけだ。
まず取り掛かったのはハーヴィン家の別棟にあたる屋敷を取り除く事だった。これはもうあっという間に終わった。カルロスが持ってきたマジックボックスにサクッと入れたからだ。ただ、マジックボックスには生き物は入れる事が出来ないので、そこに残ってしまった生き物を騎士や魔導騎士たちが肩慣らしだと言ってあっという間に消した。もっとも、害のない、そして繁殖をしてもそれほど大きな影響のないものは放す事になった。
そして空いたスペースを土魔法を使えるもの達が、これまたサクッと整地をして、カルロスのマジックボックスから土魔法チームの作品ともいえる様な戦闘屋敷が取り出されて設置をされた。
そこに居た者たちからは歓声があがり、デイヴィットは頭を抱えた。
ここで戦う者たちは中を確認する為にそこに入り、地下通路を突破する者達はハーヴィンの屋敷内に入った。
魔物が居る状況であればすぐに戦う事になる。それは十分説明をされて、全員が転移をしていきなり現れるだろう魔物たちを待つ準備をする。これからどのような戦闘になるかは分からないが、前回いたというガルムは来るだろう。
「腕が鳴るな」
そう言った父にマーティンは「ほどほどに」と言って出来上がった部屋というよりは戦うための箱を眺めた。
この日が良い記念日になってほしい。そう思っていると。「来るぞ!」という声が聞こえた。入口から入った者達が扉の前に行きつくにはまだ早い時間だ。父であるケネスが大きな声をあげた。
「結界は緩んでいたか、『首』の力が増していたか、通路に魔物が出ている。送られてくるものを徹底的に叩け!」
「は!!」
言葉と同時にこの前も来たらしいヘルハウンドが唐突に現れた。
「まずは5匹か……。飛ばし過ぎるなよ!」
そう言いながら走っていく父の背中を見ながらマーティンは「やれやれ」とため息をついて、次に次に送られてくるヘルハウンドに向かって氷の槍を突き刺した。土魔法で出来た部屋の床は傷一つ付く事がなく、その強化の高さに思わず笑みが浮かんだ。
デイヴィット達はハーヴィン家本棟の地下に来た。目の前には先日死に物狂いで閉めた扉がある。あの時は開けた途端ヘルハウンドがけたたましい声を上げてやってきた。今日はどうだろうか。まだ結界は効いているだろうか。それとも『首』と一緒に閉じ込めた筈のガルムが、そこが開くのを今か今かと待ち構えているだろうか。
「これから最初の扉を開く。中は狭い、無理はせず、出来る限り戦闘部屋に転送をさせろ。後方の土魔法を使うものは魔力を温存してほしい。フィンレー隊10名とレイモンド団10名、作戦通りに近衛隊5名は魔導騎士の取りこぼしの処理だ。後ろの土魔法隊に魔力を使わせるな。では、行くぞ」
デイヴィットの言葉と同時に先日かけた結界が解かれ、防御壁を崩して扉が開いた。
途端に聞こえてくる犬の声。どうやら部屋の結界は壊されたか、結界があってもなお、『首』は魔物を喚べるかのどちらかのようだった。
「ハワード、レイモンドとアルフレッドに連絡だ。魔物が居る」
後方から「了解」という声が聞こえた。
狭い通路の中に滑り込むようにして次々と入ると前方からヘルハウンドが襲い掛かってきた。
それを風の剣で切り捨てながら、次の個体は転送をした。
この前は7頭だったが、今回はそれよりは多い。それだけ喚べる力を持っているという事だ。
「全く初っ端からの歓迎に嬉しくて涙が出そうだな。ロイス様、大丈夫ですか?」
「問題ありません。次、私が転送をします」
狂ったように鳴きながら飛びかかって来るヘルハウンドをもう一度風の刃で切り捨てた途端、横に居た個体が消えた。ロイスが宣言通りに転送したのだろう。実戦の経験はない筈だが、中々の逸材だ。勿論他の騎士たちも負けてはいない。
後ろの神官たちの集団もそろそろ通路の中に入っただろうか、そう思った途端、今度は蟻がきた。勿論普通の蟻ではない。アーミーアントだ。
「アーミーアントだ、蟻酸に注意しろ! ここは狭い。出来る限り送れ! 神官たちの方には決して通すな!」
狭い穴の中で子供ほどもある大きさの蟻との戦いが始まった。
「やはり結界が解かれていたか、『首』の力が強くなっているのか、地下は通路に魔物が現れ、レイモンド伯の方でも戦闘が開始になりました。ヘルハウンドの次はアーミーアントで、その後にオーガが現れたそうです」
「うむ。多種だな。地下の方に数名を回すか。万が一を考えて孤立をしないように神官たちも後方に付けた事が裏目に出たか」
「そうですね。こんなに多くの魔物が出るとは思っていませんでしたから」
「うむ、救援の要請は」
「ありません」
「では、もうしばらく様子見だ。これ以上人が増えても身動きが取れなくなるだろう」
「分かりました」
返事をしてアルフレッドは周囲を見回した。視線の先には大きな戦闘部屋があり、あの中では地下から次々に送られてくる魔物たちと戦っている。そして今自分が立っているこの真下を目指して、父たちがやはり魔物と戦っている。
枯れて水のない噴水、荒れて、草がぼうぼう生えている庭。
もうすぐこの場も静かな戦いの場になる。上から押さえつけて、部屋の中に薬を流し込む。何としても『首』を眠らさなければならないのだ。
その途端『連絡』が入った。
一々書簡を開けているわけにいかないので、今回の連絡はそのまま受取人に向けて声が流れる仕様になっている。
『オークの次はエレキ・スパイダー。感電をした者が出た。治癒魔法を施していただいたが、交代をしてほしい。そちらへ転移させる』
そう言った途端三人の魔導騎士と一人の騎士が転移をしてきた。
「列の後方にハワード様がいらっしゃいます、そちらを目印に転移をお願いいたします」
「分かりました」
同じ数の騎士達を送る際、エディから預かってきた魔力回復ポーションをマジックポーチに入れて大目に持たせた。おそらくは父も同じように持たされているとは思うが、必要な時にどこでも取れるようになっていてほしい。
「「神の間」まではどれくらいだろう」
転移をしてきた魔導騎士の中にフィンレーの者を見つけて、アルフレッドはそう訊ねた。
「おそらくはもうそろそろだと思います。ただ前回に比べてかなり魔物の数が多いです。それだけ『首』の力が増しているのかと思うと恐ろしいです」
「……そうか。とりあえずそちらで魔力回復のポーションを飲んで、次に備えてほしい」
「畏まりました」
『ガルムが三匹出た。部屋の戸は閉まっている。応援を要請する』
「お祖父様、ガルム三匹での応援要請です。魔導騎士二名と一緒に様子を見てきます」
「うむ」
「アルフレッド様、私たちも戻ります」
「いや、広げないうちに人数を増やすと動きが取れなくなる可能性がある。3人で限界だろう。交代でつなぐ。回復をしていてほしい」
「畏まりました」
そしてアルフレッドは二人の魔導騎士達と地下へ飛んだ。
転移は後方の神官たちと一緒にいるハワードに照準を合わせる。
転移をした途端、神官たちがホッとしたような顔をした。
「ガルムだそうですね」
「はい。そのようです。こちらは私と騎士達で守りますので、ダニエルも前方へお連れ下さい。よろしくお願いします」
そう言われて、アルフレッドはそのままダニエルとアイコンタクトを取って前方へ走り出した。体力は使うが、下手なことろに転移をしてしまう方が恐ろしい。
「これがたった一体の『首』が喚んでいるのかと思うだけで恐ろしいよ」
「ああ。とにかく二体は送ろう。ここでは思うように魔法が使えない」
「了解だ」
戦っている場が見えてきた。ガルムはまだ二体いる。
「父上!」
「アルフレッドか。ああ、ハワードの」
「ダニエルとお呼び下さい」
「ではアルフレッド、ダニエル、あれを縛り上げてあっちに送ってくれ。さすがに狭くて同時進行で少し広げてもらっているんだ。今来た魔導騎士は土魔法を使っている者達にガルムを近寄らせないようにしてほしい」
「は!」
さすがにガルムが二体いると動線が重なって動きが悪くなる。三体の時はさぞかし大変だっただろう。
「水檻で縛り上げるから送れるか?」
「それよりも魔人の時の魔道具を持っているからあれで捕らえたらそのまま送ってくれ」
「分かった」
動きは最小限の方が良い。ダニエルは魔道具を取り出して、魔力を流し、照準を合わせて魔力の鎖のようなものをガルムに向かって投げた。すると鎖はガルムの身体にグルグルと巻き付いていく。そして「ギャン!」という声と共に、ガルムの身体は縛られたままかき消えた。
「お見事」
「そちらも」
「ああ、片付いたね」
ちょうどデイヴィット達も残りの一体に氷の槍を何本も打ち込んで絶命させたところだった。
「狭いし、使える魔法は限られるし、本当に思っていた以上に厳しいね。さて、土魔法チームには今のうちにガンガン広げてもらおう」
「父上、魔力回復のポーションは」
「ああ、エディがポーチに山のように入れて持たせてくれたからね。大丈夫だ。とりあえず、扉は閉まっているのでこのままもう一度結界をかけてしまう。それでも魔物が現れるかもしれないが、その場で対応していくしかないね。。持ち場にもどって父上に始めていただくように伝えてほしい。助かった、ありがとう。こちらに来た魔導騎士についてはこのままで。ここが広がれば人数が多少増えても何とかなるからね。この場を部屋として強化をしてもらえば最悪他が潰れてもここから転送陣で戦い部屋に行かれる。とりあえず、扉の強化と転移陣を設置するよ」
「分かりました。では」
短く返事をしてアルフレッドは噴水へと戻った。そして父からの言葉をカルロスに伝える。
「分かった。では『首』を眠らせる。噴水自体の強化を」
『首』との3か所目の戦いが静かに始まった。
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